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2024.1.4 タバコ臭さとショートケーキ

 会社訪問をしに、都内に行った。採用担当の方と、1時間弱お話をした。

 訪問が終わって、最寄り駅まで歩いた。駅の近くに、前に友達と行った美味しいショートケーキのある喫茶店があったかと思い出して、かすかな記憶をたよりに道を歩いた。

 ケーキセット950円。看板に大きく書かれていた。

 ドアを開けてカランカラン、という音と同時に、タバコの臭いが一気に鼻にまとわりつく。カウンターに座っていたアルバイトの女の子が、何か作業していた手を止めて振り返った。back numberのミュージックビデオに出てきそうな、モデルのような、女優の卵みたいな女の子だった。

 奥にいた店主らしき人が、「空いてる席にどうぞ」と言ってくれる。


 たばこ臭い店内を進み、2人がけの席に座る。右隣は2人がけの席で、タバコを吸いながらパソコンを挟み何か相談事をしている大学生くらいの男2人。左隣は4人掛けの席で荷物を各席に座らせながらタバコを吸っているお姉さんが1人。私は吸わない。


 席に着くと、モデルみたいなアルバイトの女の子に、ショートケーキのセットで、飲み物は温かい紅茶を頼んだ。ショートケーキは、ナイフとフォークと共に大きなお皿に乗ってすぐに出てきた。


 会社を訪問する前に買った文庫本をパラパラめくったり、気になる会社について調べたりしているうちに、熱い紅茶が出てきた。ミルクを注いでも、熱い。


 文庫本を開いてぼんやりしていると、隣でタバコを吸っていたお姉さんが帰った。4人掛けの席が空いた。モデルみたいな店員さんが机の上を片付けて、「広い方のお席にどうぞ」と言って案内してくれた。お言葉に甘えて移動する。


 タバコの臭いが、だんだんと鼻を刺すように私の周りに充満し始めた。ショートケーキは甘さ控えめでクリーミーだけど、臭いはタバコだった。でも美味しい。


 前に来た時よりもタバコ臭さが今日はやけに鼻に刺さって、ケーキセットを平らげて席を立った。レジで、モデルみたいなアルバイトの女の子に1000円渡し、50円おつりを貰う。透き通るような笑顔が、赤い柄の入ったメイドの制服に似合っていた。やっぱりback numberのミュージックビデオに出てきそうだと思った。


 帰りの電車のなか、自分のコートがタバコ臭いなと思いつつ、隣の人に「こいつタバコ臭いなと思われてそうだけど、私は喫煙者ではなくタバコOKな喫茶店にいただけ」と弁解したくなった。

 自分の駅の最寄りに着くと、ブックオフに向かった。冷たい風がビュウビュウ吹く中、去年レコ大をとったMrs.GREEN APPLEを聴きながら歩いた。

 店に入り、前から狙っていたマンガを求めてワイドコミックコーナーに向かう。無かった。もしかしてと思い、本棚の下にある引き出しを覗く(覗いてOK)と、あった。

 社会学コーナーで、あったら欲しいなと思って本棚を眺めたら本当にあった本を手に取り、文庫本コーナーで図書館だとしばらく回ってこないだろう新しめの本を手に取り、レジに向かった。2000円近くになった。

 暗くなった外に出る。風が冷たい。会社訪問用のシャツにジャケット、薄手のコートでは、1月の夜には刃が立たない。

 「生まれ変わるならまた私だね」と耳元で大森元貴が言う。帰路に着く。

⭐︎

今日訪問した会社のこと。

 駅から続く坂道を上ると、その会社はあった。
 エレベーターのボタンを押してオフィスに入っている階に着くと、お洒落なコンクリート壁が目に入った。採用担当の人に案内されて部屋に通される。上に備え付けられたスピーカーからわずかに、最近若者に人気のアーティストの音楽が流れていた。若者に人気と言ったが、母も好きだった。

 採用担当の方は、私と同じくらいか、少し年上か。メモを取り出すタイミングを逃し、ディスプレイに映し出された会社の説明を聞く。説明が終わった後、事前に用意していた質問をたどたどしく聞いた。

 自分が現在勤めている会社と、おそらく180度違う会社。リモートワークができる。フリーアドレス。面談の時に出して下さったのは、ペットボトルのお水。小さくて、お洒落なラベルのやつ。

 今の自分の会社だったら…と想像する。たぶん、湯飲みに入った、温かい緑茶が出てくる。総務の人が、「今日は寒いですね」と良いながら、出してくれると思う。

 今の会社の体質は古いところもあるけれど、寒い日には温かいお茶、私が新卒の頃、夏の暑い日に面接を受けに来た日には冷たい麦茶を出してくれたところとか、私は好きだなと思った。

 ブックオフで買った本は、岸政彦『断片的なものの社会学』、かわかみじゅんこ『パリパリ伝説』、伊坂幸太郎『シーソーモンスター』。

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