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女子高生なのにゴキブリの掃き掃除をした話

※かなり人を選ぶ内容ですので大丈夫そうな方のみお読みください。また、見ての通り画像は本文と一切関係のないものです。

十数年前。田舎の女子高生だった私は
「五億円欲しいな~降ってこないかな~」
と言っては空を見つめる生活をしていました。お金があればまあ大抵どうにかなるものです。あとシンプルにライブとか行きたい。

不思議なことに我が家ではお小遣い制が無く、お金が欲しければバイトするっきゃない。幸いなことに通っていた学校は申請すればバイトも可。進学と同時にバイトを始めました。

が、如何せん田舎。それも土日の昼しか働けないとなるとまあ稼げない。半日働いてやっと初回限定版のアルバムを買える程度にしかならない。

これでは困ると夕方~のバイトの掛け持ちを決意するのは自然の流れと言えましょう。

まあそのバイト先がブラックな上、色々問題だったんですけど。

家から五分の個人経営の焼肉屋。夜遅くなっても近いから良し、と親の知り合いから紹介されたこちらは元々の店舗から移転してのリニューアルオープンで、オープニングスタッフとしてのスタート。

初日から鬼のように混む。

バイトは殆ど新人。待ち客が席が空くのをカウンターで待ってるプレッシャー。厨房もフロアもてんやわんや。
そんな状況でですね。出たんですよ。あれが。

小さいゴキブリが。

食器の入った引き出しを開ける度、物を動かす度にちょこまかと。

最初は「はは~ん幻覚かな?今テンパってるな……」と思ったけどどうも幻覚じゃない。だって皆の目があきらかに泳いでいる。でも今騒ぐわけにはいかないと気がつかない振りをしている。

ここからが本当の地獄だ。

幸いにもフロアに奴らは出没せず、絶対にリアクションしてはいけない厨房状態で働く我々バイト。

あまりの出現率にゲームだったらバグだぞと白目を剥きつつも働き続けたオープンイベントの日々。

告知していた一週間のオープンイベントが終わり流石にこれはまずい。
臨時休業すると言い出した店長(痛風)。

どうも水回りから侵入してるらしいから駆除を行うと宣言し胸を撫で下ろすバイト達。

痛風「金曜一日店閉めて駆除するから。よしきちはパートさんと一緒に土曜の昼、二時間早く出て」

私「まあお金好きだからいいですけど」

その土曜日、9時。店の中は地獄絵図でした。

扉を開けた瞬間。見渡す限りの、大小さまざまな黒と茶色。
こんなにどこに居たのかというレベルでびっしり。人生でもう見ることが無い、いやもう見たくなど無い一面のゴキブリの死体。
叩き潰すタイプの駆除が出来る私ですら両足を地面に踏みしめなんとか立っているのが精いっぱいのこの光景。バイト仲間の女子なら口からバブルスライムを吐いて倒れていたことでしょう。

私「これ……なんすか」

痛風「駆除したから、片付けて」

私「は?」

手渡されたのは箒とちりとり。
これで、あれを、掃けと。お前は何を言ってるんだ?と思ったものの、今日は十一時から営業予定。この中にお客さんを入れるわけにはいかないのは解る。理論は解る。でも解らない。解ってたまるか。

でもこの海を掃き掃除しろと。この惨状を。まあ、仕事だからしますけど。心に石仮面を被せ、パートの奥様方たちと無の心で掃除をすること一時間。聞いたことの無い独特の音。目のピントを合わせない努力。

何をしているんだろうという気持ち。時給は620円。繰り返す。620円。

この作業は業者さんにお金払って頼むやつだろ。
仕事中にずーっと焼酎飲んでるんじゃないよ。「痛風だからビールはダメなの★」違う、そうじゃない。

なんとか掃除をし終わり、昼からは普通に営業したという。きっとお客さんたちは知らないし知ってたら来ないだろう。むしろなんでそこで辞めなかった。辞めとけ辞めとけ!

他にも夏は営業前に蠅をひたすら叩き殺す素手で豚骨を片付けるモツをひたすら洗う山のようなニンニクを擦り下ろすなど「女子高生バイトがすることじゃないよなこれ……」的な仕事に満ち溢れていました。

当時の自分に言いたい。今は自転車感覚で新幹線に乗れるような大人になったよ、良かったね!と。

思い付きで新幹線乗って追っかけしたりイベント行けるようになるから。「洗っても洗っても手からニンニクの臭いが取れないの……!」と人を殺めたあと幻覚を見てる人みたいになってるけどなんとかなるよと。

でも「うちの学校のテストは欠点60で落とすと本当にマズいんです」と訴えても「人が居ないから」と休ませてくれず、なんども死兆星が見えたのであのバイト先は地盤沈下とかして潰れたらいいな~と今でも思ってます。

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