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JR四国の四半期報告書(22q2)と営業係数(21年度)を読んで感じたこと

【社長会見】JR四国グループ中期経営計画2025の達成に向けた取組み 2022年度第2四半期 報告書の開示について
2021年度線区別収支及び営業係数の公表について

コロナ禍で遂に全路線で営業赤字となってしまった中で奮闘しているJR四国。いくつか考察を述べてみました~

当然と言えばそうかもしれないが、「駅を中心」にすることに拘りすぎ

今更ながら(全額負担ではないとしても)駅舎の改築が必要だろうか?キレイで設備が整っている方が良いに越したことはないが、この点が旅客増大に繋がるのかどうかは疑問である。そもそも四国の主要駅のほとんどは中心市街地と離れていて、駅は鉄道乗車の入り口に過ぎない(お土産物を販売している県都の駅は除く)。要するに、駅で時間を過ごすことはないのだ。JR四国が考えている「駅を中心」は、着いた列車の二次交通、三次交通のアクセスポイント化して利便性向上、ひいては乗客数の増加を期待していると読めるのであるが、事実上、既にJR北海道同様に特急列車の運行がメインなので特急列車に乗車する乗客が到着後にバスに乗ることは考えにくい(タクシーか主要駅からのレンタカーではないだろうか)。一方、普通列車しか停車しない駅では列車の運行本数が少なく、加えて地元の乗客が多いためにやはりバスを利用することはほとんど考えにくいのではないだろうか。
むしろ、駅を開放して高速バスの停留所にしたり、鉄道利用しない方向けの駐車場にしたりと「自動車社会への転換」を積極的に受け入れていくべきではないだろうか。
あとは余談ではあるが、最寄りの高校生しか使わない駅の待合いスペースの利便性向上をしたらどうだろうか。伊予桜井駅で、コンビニも券売機もない駅で突っ立ってお喋りか携帯電話を見つめるかしかない電車待ち高校生達の姿を見て少し思うところがありました。

イベントとイベント列車に拘りすぎ

今年はコロナ禍であまり盛り上がらなかったがせとうち芸術祭が3シーズンに渡って開催されたし、豪雨災害復興イベントのえひめ南予きずな博も開催されている。しかし、これらのイベントに鉄道を使う観光客は多いだろうか?今年はJRグループを挙げて鉄道150年の各種イベントを開催したが、多くの人にとって鉄道は最早、単なる移動手段に過ぎなくなったのである。特に四国は元々、主要駅が中心市街地と離れていることが多く、高速道路網や高速バス網が整備されつつある中、今鉄道に求められている役割を再考するタイミングではないだろうか。
伊予灘ものがたりやアンパンマン列車については、走行しているのをたまたま目にすると「おーっ!(得した気分)」と思うが、、、それ以上でもそれ以下でもないのが正直なところである。JR各社がイベント列車を運行しているが、収益的には寧ろマイナスであるし、イレギュラーな運行はコスト削減の阻害要因となる。

ニュースの継続的な発信は重要であるが、KPIで唯一達成できなかった本項についてはアイデア申し上げたい。琴電や伊予鉄では「地味ながら」確実な収益源として『お遍路さん』向けにツアーや企画を通年で行っている。一方、JR四国は4県全てカバーしているにもかかわらず(私の知る限り)目にしたことがない。下記リリースも周年イベントに関するものである。ここをもう少し深掘りして手当することで大口営業の一つになるのではないだろうか。今は兎に角、親和性が薄いというか全くない状況であり、自動車を使わざるを得ない状況となっている。
「弘法大師空海御誕生1250年祭」における「善通寺市・総本山善通寺・四国旅客鉄道株式会社の観光振興に関する連携協定」締結式の実施について
その他にも、石鎚山や剣山などの山岳利用等、四国の良いところをアピールする絶好のチャンスをみすみす逃すのは勿体ない。で、各自治体がそれぞれ小粒に実施してPR不足で利用率低迷していたりと。。。身近だからこそなのだろうが、「四国の良さ・素晴らしさ」についてもっと理解を深めた方が良いと思う。自信を持ってよい商材が沢山ありますよ!

不動産・建設事業の推進はよいと思う

都市私鉄とは色んな面で背景が異なるため一概には言えないが、これらの事業を子会社で経営することは自社の経費削減と共に収益機会の増大、ひいては雇用の拡大等に貢献して良いと思う。
不動産事業については、主要駅でのホテル運営、賃貸住宅開発が主であるが、本業(旅客運送)とのシナジーはあまり感じない。

貨客混載について

特急列車を活用した相互輸送(貨客混載)・販売の実証実験の実施について
別ニュースでJR貨物の四国内での運行について見たが、ここはもっと進めるべきではなかろうか。特産品の都市への輸送実験は既に多くなされているが商業ベースで実用化されたものは(私の知る限り)ない。郵便・宅配・BtoB・国際等の貨物を多頻度小ロットで輸送することはとても有望だと思っている。
ちょっとズレるが、伊予西条~松山間のサイクルトレインも大賛成だ。検札をどうするかは置いておいて、自転車持ち込み料を徴収すればよいと思う。

営業係数が高い路線はコロナ禍でも乗客数の減少が少ない(→通学利用が多い)

これは逆も然りで、営業係数の低い路線はコロナ禍で乗客数が大きく減少した(→出張客や観光客が多い)。当然、喫緊の課題としてJR四国も認識しているはずであるが、基本的には本州からの旅客に大きく依存している構図である。三セク化した鉄道と繋がっている路線は簡単にはいかないが、私はバス転換を推奨する。バス転換による柔軟なダイヤ編成で利便性を向上させながら、特急が停車しない無人駅を廃していくことが第一段階ではなかろうか。上下分離で運行に特化することができればそれは賛成であるが、少子化・人口減少下でサステイナブルな交通サービス提供、特に大口顧客である地元高校生の利便性向上に注力してもらいたい。実際、アフターコロナの旅客数は回復傾向にあるが、通学定期については人数こそ横ばいながら運賃収入は減少している。これは、より近い学校を指向して進学したい学校を諦めているのではないだろうか。

兎に角、コロナ禍で地方交通の維持が困難な状況に陥ってしまったことは多くの人が知ることとなった。本州3社と異なり、黒字路線で赤字路線を補填することが難しいJR四国を引き続き応援したい!頑張って下さい!

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