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『Karate』と『Karate-do』

そろそろ空手のことについて書きたくなった。
でも空手は日本の武道でありながら、そこまで日本の中でも人々に詳しく知られているわけではないと思う。「空手」という存在はきっとみんな知っているだろうけれども。だから空手について色々と書きたいことはあるけれど、まずは空手の基本に立ち返ろう。今日紹介するのは2つのカラテ。

ちなみにですが、おけいこさんがやっている空手は伝統派空手、要は寸止めをする空手の種類をやっています。四大流派がありますがそのなかでも”剛柔流”と呼ばれる流派の出身です。「フルコンタクト」と呼ばれる空手もありますが、そちらの方は詳しくないので書けません。なので今回は伝統派空手の中の剛柔流という流派の中でのお話。そして21歳のおけいこさんの数少ない知識と経験から語られますので、一般化できないことや僕がまだ見ぬ世界の話もあると思います、ですがそこはご了承ください。ただ、こういう世界もあるのだなーと、そんな気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。

海外に来て感じた『Karate』と『Karate-do』

あらためて前置きですが、これは伝統派空手の中でも”剛柔流”という流派の中でのお話です。

「空手」には二つあります。
KarateKarate-do
何が違うのか。簡単な方から説明しましょう。

Karateは、シンプルに言えばスポーツ空手のことを指します。
オリンピックの正式種目として選ばれたのはこのKarateのこと。あくまでもスポーツというところがポイントです。
Karateには基本的に二種目あります。一つは「形」といって、決められた動きをいかに正確に、かつ美しく演舞するかを競います。団体形という特殊なパターンもありますが、基本的にコートでは一人で演舞します。技の一つ一つのスピードやキレ、そして力強さも勝つための重要な要素です。
そしてもう一つが「組手」といって、これは形と違って実際に1対1で相手と対戦します。一定のポイント差をつけるか、もしくは時間終了時により多くポイントを持っていた方が勝ちとなります。まあ言葉でいちいち説明するよりも、形も組手も実際に見た方がわかりやすいと思うので、YouTubeのリンクを貼っておきます。なので気になった方は是非見てみてください。(形競技/組手競技

ご覧になるとわかりますが、形と組手、どちらの競技も赤と青に分かれて、(組手は防具もつけて)実際に勝敗をつけます。どっちがうまかったか、どっちが強かったか。Karateというのはそういう世界です。

ではKarate-doは何か。それはそのまま漢字に直せばわかりやすいと思いますが、
空手道のことを指します。こちらは他人との戦い、というよりは己との戦いです。「道」という漢字がつくように、これは空手の道であります。つまりは長い時間をかけてその流派の形を通じて空手を研究して、一つ一つの技を磨く、そしてそれと同時に自分という人間も空手道を通じて成長させていく。だからそこに勝ち負けというものがなく、終わりがありません。(終わるとすれば、自分の成長に満足した時です。)
空手が誕生した当初はこちらの方が主流でした。ただ、Karate-doが人々に知れ渡っていくにつれ次第にスポーツ性を帯び始め、Karateが誕生し、現在に至るということです。

おけいこさんは、子供の頃は基本的にKarateを習い、中学・高校と大人になるにつれて次第に先生からKarate-doも学び始めました。学び始めたというか、先生が教え始めたというか。なのでどちらのカラテの面白さを知っていますし、難しさも知っています。そしてはっきりとKarateと Karate-doが僕の中で分かれているわけではなくて、全く異なるカラテだとしてもどかで繋がっている、そんなイメージを持っています。

ところが、海外に来るとこのKarateとKarate-doというのはなかなか仲良くいかないことがあります。例えば、僕が月曜日と金曜日に毎週通っているポルトガルの道場。その道場ではKarateではなくてKarate-doの方を教えています。だから道場の練習は主に基本と形、たまに形の意味の解説と実践に基づく練習をしています。これははっきりその道場の先生からも「うちの道場ではKarate-doを教える指導方針だ」ということを直接聞いていて、僕は正直KarateでもKarate-doでもどちらでもできるので問題なく練習させてもらっています。

違う例を出してみましょう。
例えば、僕が水曜日に毎週通っているポルトガルの道場。こちらの道場ではKarate寄りのKarate-doを教えています。なので僕がもともと学んでいた感じのカラテを教える道場ということですね。KarateとKarate-doが混じっていますから、練習は基本と形、そして防具をつけて組手までやります。

基本的に後者の道場が多数派だと思いますが、前者のような道場はあまり日本では見かけません。南アフリカに昨年お邪魔した際も、前者の道場の考え方をされる先生がいました。個人的には、空手にそのように区別をつけるということがとても新しい考え方だったので印象的です。区別というよりは、多くの状況的に前者の考え方を持つ指導者がKarateの方をあまり好ましく思っていない、という現実があります。

まあ、前者の道場の指導者の気持ちがわからないわけではないのです。
元々はKarate-doだったわけです。それが時代の流れに沿ってスポーツ性を帯びたKarateに変化して今に至るわけですが、Karateに変化していく過程でKarate-doのそれぞれの『流派の個性』が失われつつあるのが現実です。例えば、WKF(World Karate Federation)という組織が存在しますが、まあ世界空手連盟というKarateの大元で、つい最近になって形競技のルール改正を行いました。

これまで(改正前)は
1.一致性(本来の形及びその流派の基準に従っているかどうか)
2.技術面(立ち方・技・動き・呼吸など)
3.競技面(力強さ・バランス・スピードなど)
という三つの評価基準がありました。

しかし今回の東京オリンピックを目指したルール改正では以下の評価基準になりました。(改正後)
1.技術面(立ち方・技・動き・呼吸など)
2.競技面(力強さ・バランス・スピードなど)

まあ要するに、WKFは形の審査基準として流派の個性は無視するという判断です。個性をつぶされたのではKarate-doを重視する道場の指導者からしてみれば、たまったものではありません。なぜなら自分たちがいくらその流派の形を生徒に教えたとしても、大会では全く評価されずに技の動きやスピード・キレなどで上手い下手が判断されてしまうからです。いくらその流派独特の良さを上手に表現したとしても、勝負には関係ありません。

このように、組手はともかく、形をめぐってそのような議論があり、が故にKarateを好ましく思わない人がいる、というわけです。まあ他にもKarateを好まない人たちの理由はいろいろあるのですが、大きい理由の一つは説明した通りです。おけいこさんはどちらも学んでいたのでそこまで意識したことはありませんでしたが、世界に来るとそんなこともあります。このことに関していろいろ考えたり感じたこともあるけれども、それは次回別の機会にまたあらてめて書かせてもらいます。とりあえずは空手といっても違う世界があるんだよ、ということです。


ね、もっと仲良くなればいいのにね。
でも実際どちらの世界も深くて面白いのですよ。


これからどちらの魅力も知って、伝えられるといいな。


2019.3.19
おけいこさん

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