毎年恒例の鼻の戦い

今年もとうとうあいつがやってきた。

副鼻腔炎。

こいつがやってくると鼻水の色が黄色に変わる。そして鼻水が素直じゃなくなる。「絶対出てきてやらないからな」そんなことを言わんばかりに、鼻の奥に居座っている。前々から鼻風邪はひいたり、ひかなかったりはしていたが、それでも副鼻腔炎までは行かない程度の鼻風邪だった。そういう時の鼻水はもっと素直だったし、色もついていない。秋だからといって鼻水まで黄色になる必要はないのだが、僕の鼻はそうはいかない

昔はじめて副鼻腔炎になった頃は、そいつがとても嫌いだった。兎にも角にも、鼻が詰まっているのに鼻水が出てこない。鼻を思いっきりかんだとしても、雀の涙ほどの鼻水しか出てこないのだ(むしろ涙の方が多い)。それでもスッキリしたい僕は鼻をかむ。何度も思いっきりかむもんだから、だんだん鼻が赤く、そして痛くなってくる。そんな時ほど鼻セレブを欲することはない。

僕が副鼻腔炎になったのは、(勝手ながら)鼻骨骨折がきっかけだと思っている。中学2年の頃、空手の練習中に蹴りを食らって鼻の根元を骨折した。とても一瞬にして起こったこと。組手の練習中に足元のバランスを崩した僕は、両膝を地面についてしまった。その体勢がゆえに、僕の下半身の動きは固定されてしまい、上半身も素早い反応ができなくなってしまっていた。そしたら気がついた頃、僕は天井を見上げていて、蹴られたことはなんとなくわかっていた。痛っ、と思いながらむくっと起き上がろうとすると、鼻の奥からどろっとするものが伝ってきたのがわかった。それが鼻血であるとすぐにわかった僕は真っ白な道着にそれをつけまいと思い、真っ先に顔を下に向けた。スムージーを作ってコップに注ぐみたいに、鼻からドッと血が流れてくる。

それから5分くらい経った頃だろうか、ようやく血が止まった。当時は折れていることなどもわからず、何事もなかったかのように家に帰った。母にその鼻血が止まらなかったことを言ったら、骨折を疑われた。さすが医療従事者である。ピンポーン、大正解。鏡でよくみてみると、僕の鼻は若干が腫れて、屈折していた。

まあその後はなんとか鼻の骨折は完治したのだが、それからと言うものの、鼻の風邪をよく引くようになってしまった。それこそ、副鼻腔炎はその骨折が完治した年から毎年のようにかかるようになってしまい、もう顔を見せることはないと思っていた耳鼻科の先生には毎年定期的に会っていた。医療のセオリー的にこの骨折が僕の副鼻腔炎となんらかの関係が本当にあるのかはわからない。だが、僕は勝手にそのタイミング的に、骨折が原因で鼻の粘膜が弱ったか何かしたかで、副鼻腔炎が引き起こされているのだと、そう思っている。

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医者にかかると大量の薬を処方されるわけだが、僕はそれらを飲みきった覚えがない。絶対に飲み忘れてしまう。それに一度飲み忘れてしまうとめんどくさくなってしまう。しかも副鼻腔炎に関していえば、僕はオリジナルの完治方法を編み出してしまったもんだから、最近は耳鼻科にお世話になることもなくなった。

副鼻腔炎には、いわゆる「ヌシ」がいる。鼻の奥底で頑なに外の世界に出ようとしない、あの黄色い鼻水の塊だ。普段は妥協して少しずつ鼻水を出しているのだが、主は絶対に出てこない。そう言うわけでひどい鼻づまりに僕が苦しむわけだが、でもそれはつまり、その「ヌシ」を外に出してしまえばこっちのものなのだ。そいつを外の世界に引きずり出した瞬間、幸せと達成感が訪れる。

ヌシに勝つ方法はいたってシンプルだ。まずはお風呂に入る、少し熱めのお風呂にいつもより長く入る。そうするとヌシがいよいよ動き始めるのだ。血流のおかげかわからないが、鼻の奥がぐずぐずしてきて、一気に出やすくなる。だから風呂に入りながら鼻を少しでもかもうとすると、鼻水の塊が出てきそうな感覚がするのだ。手応えありとみたら、シャワーを浴びながら思いっきり鼻をかむ。あとそこから先は根気との勝負なわけで、完全にヌシが姿を表すまでに鼻をかみつづける。

ヌシとは毎年3、4回ほど戦っているだろうか。でも最近はその戦いが板についてきたので、楽しめるようになってきた。鼻が詰まって黄色い鼻水に色が変わり始めたら、戦いの季節を感じる。いつ出してやろうか、強気な気持ちになる。その日のコンディションにもよるので戦いはすぐに始まるわけではないのだが、今年もいよいよ決着の日が近いようだ。

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副鼻腔炎とのその戦い方が医療的に合っているのかはわからないが、少なくとも薬がなくとも風邪とは十分にやっていける。そう、薬もお医者もなくても大丈夫なのだ。

副鼻腔炎に自力で何度も勝っているせいか、現在では医者に行かなくなってしまった。なんでも自力で治るでしょうと、なめてかかっている。だからとりあえず喉の風邪でも熱を上げる風邪でも、とりあえず色々と出しておけばなんとかなると思っている。汗でも、尿でも、痰でも、外に敵を追い出してやれば、こっちのものだという発想だ。若いからできることなのかもしれないが、果たしてこの戦い方がいつまでできることやら。


自力で風邪を治す者から皆さんへアドバイス。体温は戦いにおいて非常に大きな役割を果たします。だから体を外部から温めて、自己免疫を助けてあげることは、風邪と戦う上でとても有効的かと。(あくまでも参考までに。)

食べて、寝て、温める。こん三本の矢があれば風邪と十分やっていけるのです。


まあ、風邪をひかないことが一番いいのだけどね。

油断大敵。


とりあえず、今夜の副鼻腔炎との決戦に備えるべし。

2019.11.1
おけいこさん

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