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第2回:中村鮎葉「鉄緑会、スマブラ、東大工学部、Twitch。どこから来てどこへいくのか。」

2019/9/25(水)配信

エンタメ調査室は、毎週水曜日更新のポッドキャスト番組です。ゲーム、音楽、スポーツ、アニメなどエンタメ業界で活躍する方々をゲストにお招きして様々なお話をお伺いします。

パーソナリティ:大木康平(@Unaggy

制作・執筆:藥師神豪祐(@hell_moot

ゲスト:中村鮎葉さん(@ayuha167) / Twitch Japan

中村さんとeスポーツコミュニティー

今回は、eスポーツ業界の主要企業である「Twitch」の日本第一号社員、中村鮎葉さんから貴重なお話をいただきました。

ライブ配信プラットフォームを運営するTwitchは、日本にも2015年から支社を置く、Amazon傘下の企業です。Twitchが日本に与える価値は「eスポーツコミュニティー」にスコープを絞ったとしても多大なものとなっています。

Twitchは、世界的な大会中継プロゲーマー番組などを配信するためのインフラとして欠かせない存在であり、また、小規模なコミュニティや個人のプレイヤーによる日常的な配信も無数に行われ、コミュニティや個々のプレイヤーに光を当てる役割を担っています。

他方で、中村さんはプレイヤーコミュニティーの運営者としての顔も持っています。彼が参加する人気ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのコミュニティ『ウメブラ』は、今年7月に一般社団法人令和トーナメントとして法人化しました。現在中村さんはこの法人の理事を勤めています。法人化に至った興味深い経緯は、ぜひとも配信でお確かめください(公式HPにあるQ&Aにも詳しく掲載されていますので併せてご確認いただければと思います。)。

人材の流動性

中村さんは企業やコミュニティに求められた結果として、複数の顔を持っていますが、「働き方改革」「副業」「ギルド化」など人材の流動性に関わる様々なキーワードが飛び交う現代の日本社会において、彼のように複数の法人やコミュニティで活躍することは珍しいことではなくなってきています。

例えば、近年「副業可」を掲げる企業は増えています(その理由はおそらく、社内の優秀な人材に外部での経験を積む機会を与える必要があり、また、採用の局面においても優秀な人を自社に呼び込むために必要であると判断したと考えられます)。LinkedIn創業者のリード・ホフマンは、「会社と個人の関係は対等な『アライアンス関係』に変化しつつある」とさらに踏み込んだ表現していますが、日本でもこのような流れは進むものと思われます。

AIなどの発展もあり、社会は業務の効率化や生産性を高める方向性に少なからず動いています。そうなると、解雇規制の厳しい労働法制度下では、企業は余剰人員を抱えることが多くなり、(転籍や出向などの配置転換の工夫にも注目は集まっていますが、それでもやはり)適材適所を実現できずバランスを失う企業が増えることが予測されています。これを解消するためには、人材の流動性を高めるしかありません。

海外に目を向けると、欧州の中でも厳しい労働法制度であったイタリアでは、2016年より解雇規制が大幅に緩和された結果、人を雇うコストの予測可能性が確保され、流動性が高まり(次の働く場所が見つけやすくなり)、若者の極めて高かった失業率が改善されようとしている例もあります。

日本でも同様に、現状のような一つの企業が各労働者を終身雇用で雇用維持する世界観は破綻し、より雇用の流動性を高め、労働市場全体で労働者の雇用維持を考える方向性に進んでいくかもしれません。

テクノロジーと外注

このような人材の流動性の高まりに対応するために、企業としては、まず、業務をできるだけ属人化させないようにすることが求められるでしょう。そのためのキーワードがテクノロジーと外注です。

定型的な業務を引き受けるSaaSなどのテクノロジーの利用や、属人化せざるを得ない専門的な業務を引き受けるプロフェッショナルな受託組織への外注は増加傾向にあります。そしてTwitchはまさに、ライブ配信のテクノロジーであり、中村さんが行っている各配信者へのパートナーシップスのお仕事(配信クオリティを高めるコンサルティング等)はプロフェッショナルな業務受託と言えます。

Twitchという企業や中村さん個人の働き方は、まさに時代の要請にマッチしたものと位置づけられるのではないでしょうか。中村さんのように企業やコミュニティから求められ、複数の顔を持つことがこれからのスタンダードになるかもしれません。Twitchという業界の最先端企業に飛び込んだ中村さんの生き方は今回の番組でユーモアを交えて詳しく語られています。ぜひお楽しみください。

仕組みで解決する

中村さんは、自分の手を動かして課題解決をするだけにとどまらず、ご自身の手を離れても仕組みで課題解決ができるようにすることを意識されていると語ります。

流動性が高まる社会では、いつ重要なポストにいるメンバーが会社を離れるかわかりません。そのような状況下では、組織の外をみれば、テック外注の活用が求められます。他方で、正社員雇用を行いインハウスで行う業務領域については、業務をどれだけ属人化させないかが問われます。マニュアル作成や制度構築などを行い、できる限り仕組み化して、仕組みで課題解決できるような組織が理想とされるでしょう。

仕組みで解決し、手離れさせる。番組内で中村さんが告げる「竹林の七賢人になりたい」という展望はまさに、令和の時代の新しいスタンダードを示すものなのかもしれません。

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