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WE ARE LITTLE ZOMBIES、映画の音質や電気の話

先日のnoteで映画館音量の話をさせて頂きました。
今回は音質のお話です。

自分がサウンドデザインとミキシングを担当させて頂いた映画
『ウィーアーリトルゾンビーズ 』

ここまで2館で見させて頂きましたが、
日活スタジオで作った時、イマジカで最終試写をした時とは違った形で
再生されていたので、記事を書かせて頂きます。

まずこの映画は、音量で恐怖を煽って居る所や、地鳴りのような低域、
サラウンドスピーカーでの主音、無音での演出など
再生側の劇場にとっては大変な作りになっております。

これを作ったスタジオ状況と全く同じに視聴環境にするのは、
無理があるのですが
以下の事に気をつけると、似たような状況で聞けるはずです。


新しい映画館で見てください
これは色々な意味合いがあるのですが、まず注目は電源です。
電線から入った電気は、大きく揺らぎがあるのでAVR(安定機)に入り、各部屋に分岐されます。
このAVRの新旧で音質が物凄く変わるのです。

スタジオ会社員時代に、このAVRが故障して取り替えた事があったのですが
凄い変化を体感できました。

このAVRは、施設を作るときに最初に納入されるので、
機械室の一番奥にあったり、設置してからドアを取り付けたりと
取り変える事を考えてないのが一般的です
さらに、電気が綺麗になって喜ぶ人なんて、少数なので
設備側は取り替えたくないのですね。
しかも大きなものは、億単位だったりします。

なので、リニューアルでなく新しく建てられた映画館は、
このAVRが新しい為、電気が新鮮なのです。

それと、新しい映画館は機材が新しい筈です。
アンプは5年も使うと、音が鈍くなりますので新しい方が良い訳です。
主にアンプの良さ悪さは、小さな音と大きな音の差(ダイナミックレンジ)に変化が出ます。

アンプが古かったり、電力が足りなかったりすると
「あれ、ここもっと大きかった筈なんけど」という事が起こってしまうのですね。


朝イチの上映に行く
朝は近隣の電気利用や、施設の電気利用が夜に比べて少ないです。
同じく、アンプ駆動に余裕が出来ます。

以前勤めていた会社員時代のスタジオは、マンション塔とアースが繋がってました。
これにより、朝食の時間、夕食の時間はアースにノイズが混ざり込み
かなり音質を悪くしました。

これは海外製の機材を使っていると、特に顕著に現れます。
海外製品はコンセントの端子が、日本より1本多く3本で構成されていて、アースに落とす事で、バランスをとってます。

そこに、マンションでは、電子レンジと洗濯機のアースが落ちてくるので
よく電気を使う時間になるとアースが濁る訳です。

そしてアースは銅の棒を地面に埋め込むのですが、20年くらいで溶けてなくなります。
当時勤めて居たスタジオは老朽化が激しかったので
アースが途中でなくなり、アースにノイズが乗ってしまい
機材が爆発して火柱がたった事もあります。
なので、マンションの中にあるスタジオは、あまり信じてはいけません。

話しが逸れましたが、電気利用の少ない、朝上映が音が良い訳です。


晴れて涼しい日に見てください
エアコンがあまり動いてない温度湿度だと建物全体の電気に余裕が出来ます。
それだけアンプを駆動する力が残るという訳です。

雨の日は、湿度コントロールと、劇場内に持ち込む傘からの湿気で
音が鈍くなります。
映画館スピーカーの音が出る部分のコーン紙は、紙で出来てます。
湿気が多いと、湿気を吸って音が鈍くなるのですね。
新し目のスピーカーはケブラーやナイロンで出来ているので
あまり関係がなくなりますが、一般的には紙なのです。


人が多い時に見る
映画館も人が多い時と少ない時では、部屋の響が変わります。
多い時を想定して作られているので、そんな時に見るのが良いです。
自分は逆に、部屋の響も聞きたいので
誰も居ない時間を狙って行きます。


これらの事を意識すると、製作者の意図を汲み取れると思います。
と言っても、残念ながらこれを満たすのは大変で
ジョージルーカスも自分の意図が、適正に再生されずに困ったあげく、
映画館再生用の企画を作ったのが「THX」です。
このTHXがどこまで本気なのかは、ウィキペディアを見てください。

皆さまも同じ映画を、いろんな映画館で見てください
音の違いに驚かれると思います。
そして、良い音の映画館がありましたら、情報お待ちしております。

サポート頂けますと、書くスピードが上がります、 皆様是非よろしくお願いいたします。 これからも、より為になる記事を書かせて頂きます。