見出し画像

No.1219 春山そ 我は!

「金蘭・銀蘭をご存知ですか?今は、絶滅危惧種に指定されている花だそうです。T子さん家の近くにあるので見に行きませんか?」
 
親切さんから電話をいただいて、昨日「ひきつりひっぱり5人衆」(90代1人、70代2人、60代2人)が再会しました。「ひきつりひっぱり」とは「縁による繋がり」をいう宇和島方言だそうです。私たちメンバーの呼称として有り難く戴いています。
 
メンバーの1人のお宅は「樹間の楽園」とでも呼びたくなるような山の中の開けたところにあります。近くの雑木林には、クヌギやコナラ、スギやヒノキ他がまばらに生えています。豊かな自然の中にあり、目も覚めるような濃き薄き緑一色に包まれています。空気の澄んだ、長生きできそうな気持ちの良い場所です。
 
近くの雑木林の中で、「らんまん」の主人公・槙野万太郎気分で目を皿のようにして金蘭・銀蘭を探しました。林床に咲く黄色い花が金蘭、小さくて可憐な白い花が銀蘭だそうです。私にとっては「おまみえ」的存在で、なかなか見つけられませんでしたが、お仲間のY子さんは、「あ、あった!」「ほら、そこにも!」「あっちにもあるよ!」「まあ、こんなに!」と次々見つけては、指さして教えてくれます。私の目にも、ようやく見え始めました。

この金蘭・銀蘭は、クヌギやコナラの根に付く菌と共生して育つのだそうです。人工栽培がとても難しい花なので、自宅では育てられないのだとか。しかも、キンラン・ギンランが育つ環境が減り始めていると言います。現に、大分県のレッドデータブックで、キンランは絶滅危惧Ⅱ類に、そして、 ギンランは準絶滅危惧種に指定されています。
 
確かに、50本近く金蘭が見られたのに対し、銀蘭は1本を数えるのみでした。しかも、銀蘭は茎も細く、何か力弱くはかなげに見えました。大事に育ってほしいと願いました。
 
今日の画像は、私の撮った数葉です。金蘭はたくましいお姉さん、銀蘭は内気でおとなしい妹さんという印象を持ちました。それらは、人に見られない知られない場所に生息して自分の季節を精一杯に生きるのでしょうが、何とも健気です。
 
『万葉集』巻一の16番は、天智天皇が内大臣・藤原鎌足に「春山万花」と「秋山千葉」のどちらが趣深いかを問うた時、額田王が歌で判定した長歌です。額田王は、
「秋山そ 我は」
(何といっても 秋山が良いと思います!)と結んでいます。
 
私は金蘭・銀蘭のその姿を目に焼き付け、引きつり引っ張りの仲間たちと笑いジワを分け合って帰りました。春山そ、我は!お仲間、サイコー!