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No.855 視界良好ですか?

在職中に某専門学校の説明会で、興味深い話を聞いたことがあります。
人間の五覚のうち、情報を受ける貢献度はどの順になるかという研究結果がそれです。みなさん、どのように予想されますか?
 
説明によれば、人間の五感による知覚の割合は、視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚は1%というデータが出ているそうです。人間が受け取る情報のうち、8割もの情報が視覚から得られるというのです。
 
「視覚83%、聴覚11%」という結果を知らされた時に、
「ふーん、『百聞は一見に如かず』ということわざは本当なんだな。」
としみじみ思ったことを思い出します。このことわざは、「漢書」の趙充国伝が出典です。
紀元前61年、中国は漢の宣帝(B.C.74年~B.C.49年)の時、羌(キョウ)という遊牧民族が反乱をおこし、国内が騒然としました。宣帝は、趙充国(B.C.137年~B.C.52年)を呼んで鎮圧の方策をたずねました。しかし、羌民族はチベットの山地に住み、広く分布しているため、耳で聞いた情報はさまざまで、効果的な作戦が立てられません。

その時、すでに70歳を超えていた趙充国でしたが、
「百聞は一見に如(し)かず。兵は踰(はるか)に度(はか)り難(がた)し。臣(しん)願わくば、馳(は)せて金城に至り、図(えが)きて方略を上(たてまつ)らん。」
(「百聞は一見に如かず。軍事は現地を遠く離れては、はかりがたいものです。できますなら、私が自ら金城にかけつけ、現地の地形を図に描き、それから方策をたてまつりたく存じます」)
と進言したのでした。

「人の話を何回も聞くよりも、実際に自分の目で確かめることの方が大事だ」
と述べた彼は、自ら将軍となって現地に赴き、策を立て、羌民族を鎮圧したそうです。「百聞は一見に如かず」は、こんな背景を持つ諺です。その歴史が事実なら、今から2084年も前に誕生したことになります。
 
視覚から得られる情報がいかに説得力があり、また大事な感覚であるかがよくわかります。私は、裸眼視力が0,1以下なので、眼鏡は体の一部と化しています。しかし、目は見えても本質を見逃すことがあります。人の心のひだを読み損ねて思わぬ失敗をしたことも一再ならずあります。心の目も大事に育てながら生きていきたいと改めて思った次第です。


※画像は、クリエイター・Yasu Komaさんの、タイトル「誰が買うんだこんなネクタイ_05」をかたじけなくしました。思わず、視力検査に挑戦したくなります。お礼申し上げます。