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No.236 ♪わらべは見~た~り、あおいろば~な!

 「十年一昔」というなら、もう三昔以上前になる話かもしれません。
県内の某短期大学のA先生は、子どもの「青洟」(あおばな)が、いつ頃から消えたのかを真面目に研究された方です。青洟とは、薄い青みや濃い青みを帯びた鼻汁のことですが、分かっていただけるでしょうか?

 A先生の講演会でお聞きした話では、いくつもの保育園や幼稚園の卒業アルバムを見せてもらい、「青洟」を垂らした子を探していったのだそうです。虫眼鏡を使って丹念にアルバムを覗き込んでいる先生の姿が思い浮かんで、お話を聴きながら腹をかかえてしまいました。その結果、現代っ子は、「青洟」から「水洟」に取って代わったらしく、どうも、高度成長と食生活が欧米化されたこと等がその理由では無かろうかとお考えのようでした。

 戦後、8年目に生まれた私が子どもの頃は、青洟小僧ばかりでした。水洟よりも粘着性があって、色も見た目は黄緑色をしています。こいつが鼻から垂れ下がるのをズリズリとすすり上げながら青春していました。冬などは、学生服の袖口は青洟を何度も拭うので、テカテカ光っていたのを思い出します。ナポレオンが、軍服の袖口に金ボタンを付けたのは、兵士が鼻水を拭かないためだったとか言うのを聞いたことがありますが、私は納得します。

 さて、人類の有史以来、子どもたちの勲章とも言えるその見事な青洟が、歴史のスパンからすれば、一夜にして姿を消したことになります。そして、現代病と言われる幾つもの病が蔓延り始めるのと時代が重なるのだとすれば、第1回東京オリンピックの前後の頃が、まさに日本の大きな転換期だったのに他なりません。高度成長の裏に青洟の悲劇が?

 私は、不惑を過ぎた頃から急に気管支喘息が出始めました。体力・免疫力が衰えたことの証でしょうか?我が青洟力も三十代で尽きた感じです。授業中に「ゲホゲホ」咳が出ると、
 「風邪じゃないので、心配しないで!」
と安心させるつもりで言ったのですが、すかさずR君が、
 「心配してませーん!」
と…。ちょっとおー、ちょっとちょっと!!