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No.1174 玄人はだしの花火師

「玄人(黒人)」とは、「素人(白人)」の対義語として生まれた言葉だそうです。白人の読みは時代を経るにつれ、「しらひと」「しらうと」「しろうと」と変化し、表記も「素人」と変わっていったといいます。「白人」が「素人」になったのは「素」の字に「ありのまま」以外に「平凡さ」や「軽蔑する」意味も含まれているからではないかといいます。
 
「くろうと」は江戸時代からの言葉だそうで、由来は諸説あります。
①囲碁では上位の者が黒石を持つので、長じ通じた者を「黒人」と呼んだ。
②江戸期に上手な歌舞伎役者に「吉」を付け、白抜き文字の「白吉」と黒文字の「黒吉」があった。「黒吉」が上位で、より巧みな者を「くろひと」と言ったから。
③遊女なりたての人を「しろひと」、年期を経た遊女を「くろひと」と言ったから。
④中国のお坊さんは基本黒い衣を着ていたので「玄人(黒い人)」といい、お坊さんではない人を「素人(白い人)」と呼んだから。
⑤平安時代に白塗りで芸のない遊芸人を「白人(しろひと)」呼んだ言葉が、室町時代に「しらうと」、江戸時代に「しろうと」と音韻変化したから。
 
さて、私は、昔の学級通信「花自ら紅」(2000年6月28日発行)の中に、こんなコラムを書いていました。
「その人の事を聞いて驚いた。
 東京佼成ウインドオーケストラ・主席ホルン奏者の上原宏さんは、大変優れた音楽家だ。この上原氏が、いつの頃からか花火の魅力に取りつかれ、花火師としてオリジナル作品を発表されているのだという。
 個人レベルの花火師と侮るなかれ、県内各地で催される花火大会に遜色なき、ものすごい作品を去年も学校のグラウンドで披露してくださり、約2,000人のギャラリーの歓声が夜空にこだました。
 その上原先生が、今年も来校し、新作を披露してくださるという。天が与えた異色の才能で、熱い真夏の一夜を涼みにいらっしゃいませんか?」

 「第5回 音楽と花火の競演~公認花火師・上原宏氏による~」は7月19日に行われました。学校には音楽コースがあり、そのご縁をいただいてのことのようです。素人レベルをはるかに上回る「玄人はだし」のその花火は、上原さんの心意気と夢が籠められているようです。観客の幸せそうな笑顔と感動や興奮を独り占めにできる御仁でした。
 
えっ?では、「玄人はだし」の語源は何かですってぇ?
それは、素人さんなのにも関わらず、専門的な玄人さんでさえもその技芸の高さに驚き、慌てて履き物もはかずに「はだし(裸足)」で逃げ出すほどの凄さであるという意味の誉め言葉だそうです。
 
私は、素人さんでさえも呆れて裸足で逃げ出す、ド素人にも程がある「素人はだし」です。


※画像は、クリエイター・erinkさんの「楽器の譜面台隠し」のホルンの1葉をかたじけなくしました。お礼を申し上げます。