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No.1141 後世へのプレゼント

ドラマ人間模様「國語元年」というテレビ番組を覚えていますか?舞台にもなった、井上ひさしの作品です。

1874年(明治7年)、それまで全国にバラバラだった日本の話し言葉を「全国統一話し言葉」(共通語)として制定するようにとの命を受けたのが文部省官吏の南郷清之輔でした。

さあ、困った。お国訛りの豊かな地方出身者たちの集う南郷家では、主人に協力したり、時には自分の国の名前を売り込んだりして、様々な騒動を巻き起こします。悲しい結末が清之輔を待っていますが、共通の話し言葉づくりがいかに難しく、それゆえ、どのように作られていたか、その過程にいろんな角度からスポットを当て、ユーモラスに、そしてシリアスに描いた人間ドラマです。全5回でしたが、密度の濃い内容でした。

初回の放送は、1985年(昭和60年)6月8日~7月6日までの毎週土曜日です。 総合テレビ「ドラマ人間模様 國語元年」として放送されました。私は32歳でした。
 
その約20年後の2004年(平成16年)4月、今度はアーカイブスによる再放送がありました。そのことを、私は学級通信に書いていました。
 
「今から20年前の昭和60年に、NHKのドラマ『國語元年』(井上ひさし作)というのがありました。
 明治7年、文部官僚・南郷清之輔は、全国統一話し言葉の制定を命じられ、まず家の中から口語の統一を試みます。しかし、南郷家は、清之輔が長州出身、妻は薩摩出身、書生は尾張、奉公人は江戸あり、米沢あり、遠野あり、津軽あり。更に公家出身の国語指南役は京都の出身、更に押し込み強盗をして居ついた浪人は会津出身。方言が入り乱れ、果てには喧嘩となり、統一どころか血の雨が降りそうな雲行きです。どうする、清之輔?
 現在は、東京山の手言葉を標準語としているといわれますが、その決定が下るよりも前に精神を病んでしまった清之輔がいたましくもあり、哀れでもありました。」
 
その時から更に20年が経った今年、BSプレミアム4K で「國語元年」(2024年1月29日~2月2日 午後1時から午後1時45分 45分×全5回)が再放送されたことを新聞のテレビ欄で知りました。我が家のテレビは4Kに対応していないので、見ることは叶いませんでした。


今日、
「共通語」とは、「異なる言語を話す人同士が、方言の違いをこえて互いに通じ合うことば」
「標準語」とは、「ある言語の中で、規範的な正式の言い方と見なされて、公的な場や改まった場で話したり書いたりする時に使われることば」(アナウンサー言葉・東京言葉)
と言われているようです。

清之輔たちのように文部官僚の威信をかけて「共通語」の作成に腐心し、数多くの艱難辛苦を乗り越え、まとめてくれたおかげで、全国の人々と容易に話も交流もできる今があるのでしょう。
 
ある意味、名もなき人々の遺した日本の後世への大きなプレゼント、それが共通語だと言えるのではないかと思います。いい仕事、しています。


※画像は、クリエイター・いろろさんの、タイトル「【心文字】ちむどんどん・ちむぐくる・ちむい」の1葉をかたじけなくしました。心と言葉が合体したようなユニークな作品に「ほ」です!お礼を申し上げます。