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No.1093 ♪きーんらんどーんすのおーびしめなーがらー

午前10時に大分市のトキハデパートの屋上から「ミュージックサイレン」が流れて来ます。パイプオルガンのように豊かでゆったりとした快く癒される音色です。私は、古典講座が行われる第1・第3水曜日に大分合同新聞社の文化教室の部屋でその曲を聴きます。
 
1936年(昭和11年)に大分市の中心街にオープンしたトキハデパートは、太平洋戦争で戦火を免れ、戦後復興の象徴となったそうです。
「百貨店なら、商品だけでなく文化も発信しよう。」
という高い志を持って始められ、1954年(昭和29年)にトキハ屋上にヤマハ・ミュージックサイレン第1世代機が設置されました。以来、69年間に亘り毎日欠かさず流れています。
 
ちょっと調べてみたら、
10時(開店時) 小田進吾作曲・島崎藤村作詞「朝」
12時(昼休み) 杉山長谷夫作曲・蕗谷虹児「花嫁人形」
19時(閉店時) フォスター作曲・スコットランド民謡「アニーローリー」
の調べが町中に響きます。半径5kmまで届くといいますから、大分市中心地はほぼカバーしていることでしょう。
 
「ヤマハのミュージックサイレン」は、1950年(昭和25年)に静岡県浜松市の日本楽器製造(現 ヤマハ株式会社)が開発したものです。
「戦時中の空襲警報のような単調なサイレンをもっと音楽的なものにして、人の心を和らげたい。」
という目的で作られたそうです。警報音の記憶から解放され、人々は新たな時代の平和を音に聴き、心癒されたのではないでしょうか。
 
現在も「ミュージックサイレン」が稼働しているのは、
第1世代機 三重県伊勢市産業会館
第2世代機 愛媛県八幡市愛宕山公園  大分県大分市のトキハデパート
のみとなり、全国的に希少な存在になっているそうです。
 
戦後復興の一角を担い、平和なリズムで朝昼晩と人々に寄り添って来たミュージックサイレンですが、老朽化によりその稼働は困難になりつつあるといいます。
 
一足お先に70歳を迎えてしまった私ですが、「老朽化」は避けられません。魂のこもった音色のミュージックサイレンは、ヤマハの努力の結晶です。そのホッとする響きが、一日も長く続くことを祈っています。

古典講座は、正午の「花嫁人形」の曲を合図のように終わります。次回の予定は、12月20日(水曜日)です。
 
皆さんの音(ミュージック)の記憶は何ですか?


※画像は、クリエイター・kaworukumadaさんの、タイトル「狐の嫁入り、あるいは天泣(てんきゅう)」の1葉をかたじけなくしました。心が歩きます。お礼申し上げます。