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No.975 「シルバー川柳に『ほ』②」(2006年~2010年編)

昨日の、野地ちえみさんのnoteの記事「人生100年時代、70代はまだ『未熟高齢者』『70代は老いの働き盛り』」に刺激を受け、「婦人公論.jp」(2023年8月14日)の作家・黒井千次氏と評論家・樋口恵子さんの対談記事を読みました。二人は91歳になる同じ小学校の同窓生だそうです。古希になり、自信を無くしていた私は、思いっきり背中を叩かれました。

黒井 いま考えれば、70代は「老いの青春時代」だと思います。やろうと思ったことはできるし、昔は言えなかったことも今なら平気で言えるぞ、と。70代と聞くと、「まだまだ若いんだから頑張れよ」と激励したくなる。
樋口 まさに同感。私は常々、「70代は老いの働き盛り」と申しております。仕事もまだできるし、なんでしたら恋愛もよろしゅうございますし(笑)。70代でショボンとしている人を見ると、「しっかりせぇ」と活を入れたくなりますね。

「婦人公論.jp」(2023年8月14日)

さて、本日は、シルバー川柳の第6回(2006年)から第10回(2010年)までの入賞作のうち、「無理が通れば道理引っ込む」世界を白日のもとにした、私撰の秀作をご紹介します。
 
第6回(2006年)秀作5句
「カードナシ。ケイタイもナシ。被害ナシ。」
(愛知県 75歳 女性)
「八十路越え大器晩成まだ成らず」
(愛知県 81歳 男性)
「腹立ちを仏に聞かすひとり言」
(茨城県 84歳 女性)
「まっすぐに生きてきたのに腰まがる」
(愛知県 72歳 女性)
「退職後犬の散歩で知る近所」
(埼玉県 51歳 女性)
 
第7回(2007年)秀作5句
「秋茄子のきらいな嫁で拍子ぬけ」
(埼玉県 80歳 女性)
「無病では話題に困る老人会」
(千葉県 74歳 男性)
「古希になお叱ってくれる母が居る」
(奈良県 73歳 男性)
「定年後引き算ばかり上手くなり」
(埼玉県 77歳 男性)
「世辞言わぬデジタルカメラの解像度」
(東京都 61歳 女性)
 
 
第8回(2008年)秀作5句
「居れば邪魔出かけりゃ事故かと気をもませ」
(北海道 77歳 女性)
「足腰を鍛えりゃ徘徊おそれられ」
(東京都 68歳 男性)
「七夕や夫の願ひをそっと見る」
(京都府 84歳 女性)
「補聴器をそっと外して聞く小言」
(兵庫県 59歳 男性)
「食事会薬でしめておひらきに」
(京都府 79歳 男性)
 
第9回(2009年)秀作5句
「我が家にも政権交代夢にみる」
(千葉県 76歳 男性)
「美しく老いよと無理なことをいう」
(大分県 81歳 男性)
「その昔恐竜見たかと問う曽孫」
(千葉県 55歳 女性)
「古希過ぎりゃ嫉妬もされぬ朝帰り」
(東京都 69歳 男性)
「定年にエプロン貰い嫌な予感」
(東京都 64歳 男性)
 
第10回(2010年)秀作5句
「持病には医師顔負けの知識あり」
(香川県 77歳 男性)
「オーイお茶ハーイと缶が転がされ」
(茨城県 71歳 男性)
「日本語に通訳の要る三世代」
(福岡県 78歳 女性)
「長生きをするなと政府に仕分けされ」
(島根県 68歳 男性)
「不満なら犬に言うなよオレに言え」
(東京都 71歳 男性)
 
「シルバー川柳」には、動物が登場します。特に犬や猫は、人とのかかわりが強く大きいだけに17音の中でも「いい仕事」をしています。哀れに切ない場面での出演の多いのに、ちと同情したくなりますが…。
 
明日は、シルバー川柳の第11回(2011年)から第16回(2016年)までの秀作を5句ずつご紹介する予定です。またご訪問いただけたら幸甚です。


※画像は、クリエイター・うみさんの、「秋茄子が美味しい季節ですね。」をかたじけなくしました。「秋茄子」の句が見られたのでお借りしました。お礼申し上げます。