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No.890 翼に賭けた兄弟の光と影

日本テレビの人物ドキュメンタリー『知ってるつもり?!』は、1989年10月~2003年3月まで続いた、とても興味深い教養番組でした。毎週日曜日の午後9時台に放映されました。
 
1991年(平成3年)12月15日に「ライト兄弟」が放送されました。
ライト兄弟とは、三男のウィルバー・ライト(1867年4月~1912年5月)と四男のオーヴィル・ライト(1871年8月~1948年1月)というアメリカ人兄弟のことです。1903年(明治36年)に世界初の有人動力飛行に成功した偉人達です。
 
兄弟は生涯の大部分をオハイオ州西部の都市デイトンで過ごしました。1903年12月17日、弟のオービルが動力機によって12秒間(約37m)を飛行し、砂地に突っ込んだそうです。しかし、4回目には59秒(約259.6m)を記録しました。そして2年後、兄弟は世界初の操縦可能な飛行に成功したのです。
 
しかし、彼らは注目を集めるはずの飛行機の改良を秘密裏に進めたので、専門家や一般大衆から疑いや批判を受けることになったと言います。その後、兄弟は機が熟すのを待って、1908年8月8日、フランスの競馬場で公開飛行に踏み切ります。更に、1909年にはニューヨークで公開飛行をし、群衆を仰天させ、人気を博しました。
 
やがて、航空産業の時代を迎え、潤沢な資金と有能な人材がそちらに流れ、ライト兄弟はライバルたちに圧倒されてしまいます。しかも、兄のウィルバーは、1912年(明治45年)腸チフスのために45歳で病没しました。また、弟のオーヴィルは、飛行機が戦争の武器として使用され、特許申請のいざこざで、身も心も疲弊し、兄没後36年の1948年(昭和23年)、心臓発作のために76歳で孤独な生涯を閉じたということです。
 
2人はデイトンの墓地に家族と共に埋葬されているそうですが、2人とも女性に関心を示さず、生涯独身だったと言われています。「Weblio英和和英辞典」に、その理由を示した例文が載せられていました。ヘーボタンでした。
「兄弟とも『妻と飛行機の両方は養えない』との理由で、生涯独身を通した。」
Saying they could not support both a wife and an airplane, the two brothers therefore spent their lives as bachelors.
 
二人が結婚していたら、愛の力で乗り越えられた事があったかもしれません。言っても詮ないことでしょうが、その生涯を大空を自由に飛ぶことに没頭し、捧げ、尽くした兄弟の光と影。人間の幸福とは、何でしょうか?


※画像は、クリエイター・hibino yuukiさんの、タイトル「illustration『世界を変えた発明家』」をかたじけなくしました。兄弟の矜持が、背中に溢れています。お礼申し上げます。