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No.1212 お嬢は、今?

卒業試験を終え、追試もクリアーして、ほぼ全員が自宅待機をしているというのに登校していた高校3年生のお話です。
 
その登校の理由は、
1、追試したにもかかわらず、まだ合格できない人。
2、補講がなかなか終わらない人。
3、学校が好きな人。
だからです。
 
ある年、残るたった一人となり、ようやく補講を終えた某女生徒が、教員室でのクラス担任の取り扱いを終えて出ていく時に、
「あーあー、この学校とも、お別れかー!」
と漏らしました。嬉しさと名残惜しさの入り混じったような感懐が、その言葉に表れていたので、あまりのタイミングの良さもあって、教員たちがどっと笑いました。
 
「よーやく終わったー。あー、せいせいした!」
と捨て台詞を吐いて教員室から飛び出して行きそうなお嬢だったので、意外な前述の言葉に、こちらの方が驚かされました。人の心は、わからないものですね。叱られても、残されても、長かったようで短かった高校3年間を名残惜しく思ってくれた、彼女の感じる心の健やかさに、こちらの方が打たれました。
 
そんな彼女は、今や肝っ玉母さんとして家庭で君臨していることでしょう。きっと。

「あんこうも 母も大きい 肝っ玉」
 海老原順子
 第10回お国自慢ふるさとコンクール「俳句部門」(平成28年)


※画像は、クリエイター・Harry-sanさんの、「集中できないで勉強している女子高生」の1葉をかたじけなくしました。教え子の彼女も、こんな時間をすごしたのかも?お礼を申し上げます。