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No.1059 堪えられない悲しみのために?

他人のせいにして憚らない人は、いつのどの時代にも、どんな仕事場にもいるようです。度し難い人間のサガなのでしょうか?
 
2002年(平成14年)6月下旬のこと、W杯日韓大会の決勝リーグ1回戦で、イタリアは韓国と対戦し、延長戦の末、FW安貞桓(アン・ジョンファン)選手のゴールデンゴールによって2-1でイタリアを破る金星を上げました。

当時、安選手の所属チームだったイタリア・ペルージャのルチアーノ・ガウッチ会長(当時)は、
「育てた恩を忘れるとは、イタリア国家への反逆にも等しい」
と、このゴールに激怒し、安選手との契約を解除しようとしているという報道がかけめぐりました。
 
ペルージャ側は、
「安はイタリアの地に二度と足を踏み入れる事はない」
とのガウッチ会長の発言は、安選手に対し、韓国やイタリアのメディアが、
「今日我々はイタリアサッカーを上回った」
という発言が引き金となっているだけだと言っていました。
 
もし、これが日本人なら、「言語道断!」ではなく、
「イタリアチームに恩返しができたね。」
という発想を抱いて称える人が多いのではないかと思いました。しかし、ガウッチ会長は、
「イタリア代表戦でたとえ10ゴールを決められようともそれはかまわない。契約解除は彼の発したコメントのためだ」
と安選手のコメントを引き合いに出して自分の怒りの矛先にしたのです。感情の抑制のききにくい会長のように思えます。自分の意のままにしないと気の済まない輩です。
 
木を見て森を見ないようなトップの言葉ですが、海外のチームで活躍すればするほど、他国選手は、妬みや嫉みのために風当たりやバッシングを強め、チーム内では差別的な扱いが一層顕著になるものなのでしょうか。どうなのですか?三苫選手!
 
「誰かのせいにしなければ堪えられない悲しみって、あるのよ。」
さだまさしの小説が映画化された「風に立つライオン」(2015年、東宝)の中で、ナースの和歌子(石原ひとみ)が医師の島田航一郎(大沢たかお、実在の医師は柴田紘一郎氏)に語る場面があったことを思い出しました。
 
その物議をかもしたルチアーノ・ガウッチ会長は、その3年後の2005年にペルージャを偽装倒産させ(現在のペルージャはその後継として新たに設立された別クラブだそうです)、その罪を問われた彼はドミニカ共和国に逃亡し、サッカー界から姿を消したそうです。
 
中田英寿も在籍したことのあるペルージャで「王様」の異名を持ち、13年間オーナーの職に就いていたルチアーノ・ガウッチ氏でしたが、2020年2月に逃亡先のドミニカ共和国で亡くなったそうです。享年83歳でした。
 
あれから3年が経ちました。
先日、BSTV「世界の貨物列車 ヨーロッパ縦断列車」(再放送)の中で、お婆ちゃんと7歳前後の孫が貨物列車を見送っていました。取材班からの質問に男の子が答えました。
「あの貨物には、何が入っていると思う?」
「きっとみんなを幸せにするものが詰まってるんだよ!」
 
サッカーボールにもそんな幸せが詰まっているのではないかな?
その言葉を、ガウッチ氏への哀悼の言葉にしたいと思いました。


※画像は、「そそる筋肉」を描くことを至上命題とするというクリエイター・クリスTさんの1葉「We're MAGIC!」をかたじけなくしました。お礼申し上げます。