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No.758 ♪ 歩こう、歩こう、私は、元気~

私より5歳ほど年上でしたから、今年75歳になるはずです。その彼は、東京の一角に30歳で寿司屋の店を構えましたから、今年は45周年に当たります。
 
明るく、気さくで、気風が良くて、口も動くが手もよく動く主人は、思いっきり敷居を低くして学生の私でも迎え入れてくれ、慈愛深い奥さんと夫婦2人だけで商っていました。当時、懇意にしてくださった心に甘えて、カミさんとの結納はその店の2階(生活の間)で交わさせていただいたほどです。ご主人は「うちには、大きな台がないから」、とお客さんからわざわざ借りてくれました。そんな人でした。
 
その彼が、昨年12月、寿司を握っている最中に急に倒れ、死線をさまよい、70時間の後に何とか戻ってきてくれました。72時間経っていたら危なかったといいます。
「白い杖を突いて、白い着物を着た老人から、戻れと言われました。夢だったのでしょうが、彼岸に行きかけていたのかもしれません。」
そんなメールがありましたから、九死に一生の儲けた命でした。
 
顧客の「うまい!」のひと言のために、美味しい笑顔が見たいために、いつの間にか積み重なった無理が昂じたのかもしれません。こうにでもならなければ、休まない職人気質です。「休む」ことは「続ける」ことに繋がります。それが、長く愛される法則でもあるように教えられた気がします。
 
また、今年の年賀状には、小学校中学校を共にした親友が、肺がんの手術をしたことが書かれてありました。幸いにも「早期発見だったので助かった」とのことでした。「しっかりと健診を受けることは非常に大事ですよ」と釘を刺されました。
 
私の全く知らない金属加工の世界で、長きにわたってトップに立ち続ける彼の重圧は、私などの想像の及ぶところではないと思います。定期健診で「無理は禁物」と教えられたことは、彼にとっても会社にとっても救いだったことでしょう。
 
私の知友の女性は、旦那さんのことを「六病息災」と呼ぶ豪傑です。
「年を取ったら『無病息災』の人なんていません。だれも『二・三病息災』ですよ。」
と教えてくれた人です。私も、長く朝と夜に薬が離せない「二病息災」の続く身の上です。他人事ではない年齢であることの実感を強く抱いています。同時に、薬のお陰で生きられていることに感謝もしています。
 
1回きりの人生。不安よりも期待の大きい70歳への道は、始まったばかりです。


※画像は、クリエイター・歓怒(かんど)さんの、タイトル「仙人草、センニンソウの白い花と白いヒゲ」をかたじけなくしました。お礼申します。