見出し画像

No.1043 光と影

アメリカの歌手アンディー・ウイリアムズ(1927年~2012年)は、フランス出身の歌手クロディーヌ・ロンジェ(1942年~)と1961年に結婚しました。確か、アンディー・ウィリアムズ・ショー(1962年~1967年、1969年~1971年)に登場して歌ったのが「青春の光と影」です。
 
この曲は、アメリカのシンガソングライター、ジュディ・コリンズ(1939年~)のカバーによって一躍有名になったのですが、ド田舎の中学生の私は、そんなことは全く知りませんでした。ただ、華奢な体つきのクロディーヌの都会的で儚げで悩まし気な歌いぶりは可憐で、まさに「青春の光と影」を思わせました。それは、多情多感な時代の私の心に強い刻印を残しました。
 
もっとも、作曲者はジョニ・ミッチェル(1943年~)というカナダの女性歌手でした。その元祖「青春の光と影」を初めて聴いた時には、本当に心打たれました。
 
1970年(ミッチェル27歳)の歌声は、高音も良く出る、フォーク調の歌いぶりです。ギター片手に、色気も化粧っ気もない長い髪の女性が、豊かでいて繊細な歌唱力ある声を響かせるのです。澄んだ歌声は、天から選ばれ、授けられたもののように思いました。
 
ところが、2000年(ミッチェル57歳)の歌声は、時に男性かと聞きまがうほどの低音となり、歌うよりも語りかけるような「青春の光と影」に変わっていました。それは、リズムを超えて味わい深く心に染み入るような歌でした。
 
30年という時を経て、同じ歌手による歌の表情がこんなにも変わるものかと驚きました。「人生を乗り越えて来た」歌声・表現力だと感じ入りました。

若い頃の声を次第に失っていったことが、彼女に歌い方の変化をもたらしたのかもしれませんし、人生を経た今、自己表現力の在り方が練り直され凝縮されたのかもしれません。

私は、私に歌いかけられるようにその古い画像を見、聴きました。彼女の歌声そのものに「光と影」を感じながら…。そして、失うことは得ることでもあることを知りました。


※画像は、クリエイター・D Tsujimotoさんの、タイトル「サハラ砂漠の夕陽 ラクダと歩く」の1葉をかたじけなくしました。ここにも、見事に光と影が写し出されています。