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No.1156 Giveちゃん

愛称「ギバちゃん」と言えば、1961年(昭和36年)生まれの柳葉敏郎さんです。20代の頃の1980年代に路上パフォーマンス「一世風靡セピア」で、文字通り一世を風靡したことが、懐かしく思い出されます。
 
シャイな面を持ち、一方で、明るく、屈託のない子供じみたはしゃぎぶりを発揮する人物のようです。自分で言ったギャグに自分で受けるという実に奇特な御仁でもあるそうです。
 
その後、テレビや映画に出演し、当たり役となったのが1997年~1998年にかけての『踊る大捜査線』(シリーズ)です。

警察庁キャリアで警視監の室井慎次役を好演した頃は、30代の後半でした。「所轄の刑事が活動しやすい組織作り」と「警察の改革」を推し進めようと孤軍奮闘しますが、上層部からの締め付けと青島刑事との約束のはざまで葛藤する姿が印象的です。青年将校の悩める姿は、会社組織の誠実な中堅幹部のそれともダブりました。
 
その彼が、1997年に結婚し、2000年に長女が誕生した季節は、桜前線が活動を始めようとしていた頃だったそうです。この時、ギバちゃんは、芸能レポーターや報道陣を前に、
「いやー、世界一とは、この子のためにある言葉じゃないかと…」
と、娘にデレデレです。

彼よりも8つ年上の私は、そんな言葉はとても恥ずかしくて「よー言わんわ!」ですが、素直な男親の心をあっけらかんと言い放った彼の愛情の深さと親ばかを超えた馬鹿親ぶりに、心からの敬意を送りたくなりました。

特に酒癖が悪いことで有名な彼だそうですが、第19週「東京ブギウギ」89話(2024年2月7日放送)で、スズ子の父を演じた花田梅吉は、みごとでした。
 
梅吉が香川からスズ子と孫の愛子を訪ねて来たのは、スズ子の代わりに愛子の面倒を見てやろうと思ってのことです。久々に再会した梅吉とスズ子は、それぞれに「今」を語り合います。酒が入った梅吉は、上機嫌です。

 梅吉) ああ~。こうやってお前と飲むんも、香川に帰る前以来やなあ。
スズ子) ふん。一人だけおいしそうに飲んで。ワテ水や。
    (略)
 梅吉) うん、そうか。まあな、みんな大変やったけなあ。こうやって、  
    孫と娘の顔見て酒飲んでるワシは、それだけで幸せ者やな。
スズ子) そやで。こんなかわいい孫見せて、ワテ、日本一の孝行娘やろ。
 梅吉) そやな。けど、孫より我が子の方が、どんだけかわいいか。親い 
    うんはそういうもんやけ。大丈夫なんか?
スズ子) 何が?
 梅吉) つらかったやろ。ワシもな、ごっついつらかったわあ。もう何年 
    や、ツヤちゃん死んで。今でもたまにな、あっ、ツヤちゃんおらん 
    のか、思う時があんねん。立ち直れんで・・・。愛する者に、はよ
    う逝かれるいうんは。ホンマに・・・ホンマに・・・かわいそうや
    な、ワシ。
スズ子) 自分かいな。
 梅吉) ちゃうちゃうちゃう。ちゃうわ。なあ。あんな、互いにや。な
    あ?はように女房を亡くした者同士、支え合おうっちゅうことやが
    な。
スズ子) はいはい。ワテは旦那はんやけどな。
 梅吉) あ・・・。
    (略)
スズ子) ホンマに要らんわ、こんなに。
 梅吉) アホ! 祝儀や。商売繁盛しとる言うたやろが。ちっとは、父親ら
    しいことさせえな。
スズ子) ほな、ありがたく。
 梅吉) もらうんかい。ははははっ!ほな、愛子ちゃん、香川にも遊びに
    おいで。へへへっ。
   (※紙吹雪をまきちらす)
 梅吉) 達者でのう!
スズ子) はははは、はははっ!

父親梅吉のトリッキーで力の抜けた話術に、親子漫才のスズ子は固くなっていた心を丸く柔らかくさせられるのです。酒を深く愛するギバちゃんの面目躍如たるシーンに、くぎ付けになりました。いい役者さんですね。今年、彼は、63歳を迎えました。

「ギバちゃん」は、本名「柳葉」由来でしょうが、私には年代に応じて様々な感動を人々に与え続けてきた「Giveちゃん」ではないかと思われます。


※画像は、クリエイター・ヨンハチさんの、タイトル「ジャングル・ブギー!スキーッ!」の1葉をかたじけなくしました。朝から背中を押してもらえる迫力満点の歌でしたね。画像は、その姿を可愛らしく切り取っています。お礼を申し上げます。