嘘のような本当の話

「嘘のような本当の話」
どこかで聞いたセリフですが、そう、大阪府知事のイソジン騒動です。

それと似たようなびっくりするようなニュースがありました。

エタノール吸入で呼吸器感染への効果を確認 臨床で人体への効果や安全性検証へ 沖縄・OIST研究チーム

エタノール蒸気でインフルエンザ治療

エタノール蒸気吸入で感染抑制 インフルエンザ、マウスで実験 新型コロナにも期待・沖縄科技大

なぜこんな研究が注目されるのか理解に苦しみます。

インフルエンザウイルスやコロナウイルスはエンベロープという脂質の膜で覆われているので、アルコールや石鹸でエンベロープが破壊されるのは当然のことです。
当たり前のことですし、それを吸入すれば気管支にいるウイルスが破壊されるのは当然のことです。

でもこれってトランプが消毒薬を注射すればいいと発言したのと同じくらい雑な考え方ではないでしょうか。

この研究の一番罪なところは、常在細菌や常在ウイルスのことをまったく考えていないことです。

このブログを読んでいただいている方は自分で調べたり考えたりしている方たちですからすでにご存じの方も多いかと思いますが、常在微生物が人間の体を守ってくれているのです。
ウイルスや細菌は敵になることもあるけれど味方も多いのです。
常在微生物が、人間様に悪影響を与える悪玉微生物から守ってくれているのです。

むやみやたらにエタノールを吸入したら、これら味方の常在微生物もやられてしまいますから、その後どのような影響が出るのかわかりません。
喘息が増えたりアレルギーが増えたりするかもしれません。
あるいは他の妙な感染症にかかりやすくなる可能性だってあります。
真菌感染症とかコワいですね~。

インフルエンザやコロナウイルスしか考えていないからこのような研究の発想になってしまうのですね。
ハッキリ言って「浅はか」です。

それに吸入すれば、食道など消化管粘膜にだって多少なりとも影響を与えかねません

エンベロープタイプのウイルスを一網打尽にしてしまったら、ノンエンベロープウイルスのノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルスが幅をきかせやすくなります。

そして一番怖いのがアルコールに耐性を示すウイルス・細菌に進化してしまうのではないかということです。
微生物学が専門ではないですからそのような可能性がどのくらいあるのかわかりませんが、ウイルスは人間より賢いのは紛れもない事実です。
自分が生き延びるために、人間が思いもつかない方法で進化します。

ちなみにうがい薬を販売している健栄製薬のHPにはこんなことが書いてありました。
https://www.kenei-pharm.com/general/column/vol65/

『万が一、耐性化したとしても問題は容易に解決できます。「抗菌薬」は体内に投入されることによって効果を発揮するので、耐性化したときに抗菌薬の投与量を増加すると、副作用が問題となってきます。しかし、「消毒薬」は皮膚の表面や器材に用いられ、体内に投入されることはありません。そのため、耐性菌が発生したとしても、耐性度を上回る濃度で消毒すればよいのです。』

まず第一に
・「消毒薬」は皮膚の表面や器材に用いられ、体内に投入されることはありません。
だって。

今回の沖縄科学技術大学院大学が発明した治療法?が実用化されたら、この部分は削除しなければならなくなりますね。

そして、
・耐性菌が発生したとしても、耐性度を上回る濃度で消毒すればよいのです。
だって。

効かなくなってきたらどんどんエタノールの吸入濃度をあげなきゃいけなくなりますね。

当然体はボロボロになります。

教授様ともあろうお方が本気でこの方法が良いと思って研究していることが信じられません。
もっと人の体のことを深く勉強して欲しいですね。

こんな浅はかな治療法が実用化され、それで他のやっかいな病気が蔓延した暁には大変なことになりますよ。

一応ニュースでは
「エタノールの濃度が重要なため、個人の判断によるエタノール吸入療法は副作用や安全性の問題があり、決して行わないよう注意喚起している。」
って書いてありますけど、絶対突っ走ってやる人出てきますよ。
まぁ自己責任ですけどね。
でもこんなくだらない危険な研究を大々的に報道したメディアの責任でもあります。

それに濃度が重要だといったって、蒸気で吸えばいいって話でもありません。
例え1回の濃度が薄くても、慢性的に気管支粘膜や食道粘膜が刺激を受けたらどうなるかわかっているのでしょうか

しかしこんなのが米感染症学会誌に掲載されるんですね。
これも驚きですけど。

病気製造・人間破壊に貢献する論文は掲載されやすいのですかね。

抗生剤投与もそうですけど、常在細菌・常在ウイルスに大きく影響を与えるような治療法に安易に飛びついてはいけません。
(もちろん抗生剤の利点が上回るような病態では積極的に使用するべきです)
今回の新型コロナ騒動では次亜塩素酸の内服をされている方もいたようですが、同じように自分はあまりお勧めはできないと思っています。

単純に「常在微生物を守る」ことを考えることが、健康維持のポイントの一つかもしれません。
微生物は感染症という問題だけでなく免疫に関係してきますから、アレルギーや自己免疫疾患など幅広い疾患と関わりがあります。

ちなみに幼少期に抗生剤内服を繰り返していると腸内細菌叢が乱れ、その後のアレルギーや喘息の発症と関係があると言われています。
あるいは幼少期の抗生物質の多用が1型糖尿病発症とも関わっているともいわれています。

目の前のことだけ考えればいいということではありません。
もっと幅広く深く考えないといけません。

大阪府知事のイソジン事件と同じ程度の話にしか思えない、嘘のような本当の話でした。

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