見出し画像

支援事例「取引先との価格交渉 留意点は」

法令把握し交渉に臨む

◆ 企業名 A社
◆ 業 種 測量業
◆ 所在地 本島南部
◆ 資本金 100万円
◆ 創 業 2013年
◆ 従業員 4人


【相談】
 昨今の人件費や諸経費価格の高騰にともない、取引条件の改善を求めるために
取引先との価格交渉をしたいと考えている。交渉に当たって留意すべきことを
教えてほしい。


【回答】
 価格交渉に入る前に、発注者と受注者との取引において「どのような取引が
法令違反なのか」を事前に把握する必要がある。
 発注者の受注者に対する優越的地位の乱用を取り締まる下請法は、
次の4つの義務と11項目の禁止事項を課している。

義務は
(1)書面の交付義務、(2)書類の作成、保存義務(3)下請代金支払期日を定める義務(4)延滞利息の支払い義務。

禁止事項は
(1)受領拒否の禁止(2)下請代金の支払い遅延の禁止(3)下請代金の減額の禁止(4)返品の禁止(5)買いたたきの禁止(6)購入・利用強制の禁止(7)報復措置の禁止(8)有償支給原材料等、早期決済の禁止(9)割引困難な手形の交付の禁止(10)不当な経済上の利益の提供要請の禁止(11)不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
-である。

これを踏まえ、価格交渉の際の留意事項について中小企業庁が発行っする「価格交渉ノウハウ・ハンドブック」を活用して次のアドバイスをした。

(1)価格根拠を上手に伝える。原材料コスト上昇の価格推移表を作成するとともに人件費高騰に伴う生産性への影響を説明し、価格見直しを要請する。
(2)取引条件に関するルールづくり。外的環境の変化に伴って価格を再設定したい場合、値上がり経費の「スライド制」などの導入は効果的。
(3)交渉経緯を書面に記録する。取り決め後のトラブル防止のため、交渉経緯や取り決め事項は、議事録等を活用し必ず書面に記録しておくこと。

アドバイスを受けて交渉した結果、比較的スムーズに取引条件の見直しが実現し、1現場あたりの利益率が改善できた。これまでの取引における業務の質の高さなどから、社長への信頼が厚かったことも大きい。
発注者と受注者が対峙するのではなく、適正価格の取引を実現させるために信頼関係を高め、「お互いでコストを適正に負担しあう」という取引慣行の定着こそが質の高いサービスを維持でき、共存共栄が成り立つ。今回、取引条件の改善が実現できたが、引き続き業務の生産性向上を目指す社長の新たな取り組みが始まっている。
(県よろず支援拠点コーディネーター、税理士・平良豊)

※掲載内容は相談者の承諾を得て紹介しています。経営者のあらゆる相談を無料で受け付けます。問い合わせや相談は同支援拠点、電話098(851)8460。または地元の商工会にお問い合わせください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?