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やんばる産スパイスの栽培と活用の可能性について

2023年11月19日、沖縄県名護市にある「なごアグリパーク」にて,
SPICE CIRCUSというやんばる産スパイスをふんだんに使用したフードフェス
を開催しました。美味しいスパイス料理を味わうというフードフェスの主目的と、来場者に「もっとスパイスを身近に感じてもらう」という裏テーマを
掲げ、フードブースの他に、金川製茶さんの茶畑と果樹園を歩き香りの食材を摘んでからのオリジナルチャイ作り、エスビー食品さんのスパイスを使って適塩での美味しい料理作り、そして私のスパイス畑を巡るオープンファームも同時開催。総勢70名様に楽しんで頂きました。

金川製茶4代目茶師、比嘉竜一さんによる茶作り体験の風景

そしてイベントの中盤では、
スパイス農家 芳野×エスビー食品(食文化未来研究所)南野様×名護市長によるトークセッションも開催しました。
テーマは、「やんばる産スパイスの栽培と活用の可能性について」。
ここからは、私の話したとことを公開したいと思います。

スパイスの栽培のきっかけ

ある料理人さんからの一言がきっかけでした。
「やんばる(沖縄県本島北部)では塩、砂糖もあり、畜産も盛んだ。海に囲まれていて水産物も豊富。農産物は芳野さん達から手に入る。ここにスパイスまでもやんばる産で使えたら、全ての食材をやんばる産にしてお客様をおもてなしできる!」と熱く語られたのがきっかけのひとつです。
そんな時に、仲間の農家の1人がウコンを栽培していたんですが、急な買取価格の変更や取引業者の倒産などで、行き所を無くしたウコンに困っていました。2つの事象が重なり、どうにか解決、そして実現できないかと知合いのスパイス専門化にやんばるのウコンを送ってみたところ、インドのターメリックとは、香りも異なるが、これはこれで個性があり、面白い食材になると言われ、それならばと仲間とプロジェクトを立ち上げ、他のスパイスとなり得る食材を集め商品化したのが、「やんばるスパイス」です。そしてこのやんばるスパイスを活用して、食で地域を元気にするプロジェクト、「やんばる畑人プロジェクト」が2011年4月に発足しました。
そしてここ数年では、よくはない現象ではありますが、温暖化による栽培地域の移動が世界的にも起こっていて、やんばるももちろんその影響を受けています。環境への配慮をみんなで取り組むことはもちろんなのですが、現状を受け止めて私たち畑人も対応していかなければなりません。栽培が難しくなるものも出てくる反面、栽培の可能性がでてくるものもあります。そのひとつがスパイスだと思っています。

栽培における課題

まず、やんばるでのスパイス栽培について私の中では、2つのカテゴリーに分けて栽培・活用の可能性を探っています。
ひとつめは、もともとやんばるにあるスパイスになりうる植物の活用です。月桃、カラキ、ウコン、島唐辛子、ショウガ、島ニンニクなど、乾燥してスパイスとしての活用が可能です。
そしてふたつめが、世界でも類を見ない「亜熱帯海洋性気候」という奇跡のエリアにおける新しいスパイスの栽培です。いろいろな植物が栽培可能だということはわかってきました。
ひとつめについては、栽培については問題はないのですが、ふたつめの新しいスパイスについては、栽培ができそうだということはわかってきたのですが、(現在は15種類ほど)栽培指針がないので、安定した収量を目指す栽培方法が課題ですね。そして何よりも品質についての課題です。例えば、コリアンダーシード、フェンネルシードなど、せり科のスパイスが多く、やんばるでは5月ぐらいが収穫の時期にあたります。そうすると収穫の時期と梅雨入りの時期が重なり、湿気によるカビなどの影響も課題のひとつです。とくに栽培後の乾燥、脱穀、保管などの後工程が前例もなく、だいぶ前に沖縄工業技術センターさんに問い合わせたんですが、得られた方法は古典的な方法だけでした。(笑)

名護産スパイスの可能性・未来について

今日来ていただいてるスパイスに興味のある皆さんが、さらに興味をもっていただき、料理に使う、そして栽培までも挑戦してみることで、さらにこの輪は広がります。
今までは、スパイスに興味のある農家数名での試験栽培の繰り返しだけでしたが、いろいろな課題に向けた取り組みもエスビー食品さん、そして名護市が応援、支援していただけることで解決策が見えてくると思います。なので、来年度は多くの方がスパイス栽培を実践できるようなワークショップ、情報公開を積極的に行っていこうと思います。
将来的には、名護市全体でスパイスが身近に感じられ、普段の食生活に当たり前のように使われて、香り豊かな食卓がいずれ新しい食文化となり、市長がみんなの要望に背中をおされるように「名護市スパイスのまち宣言」にまで広がったら嬉しいですね。
さらに地域に根付くことによって、スパイスは素晴らしい観光資源になると思っています。スマホによって目も耳も奪われてしまったので、残るは嗅覚かなーと(笑)
残る最後の嗅覚ですが、実は人の5感の中でいちばん記憶と感動とを強く結びつけるそうです。
亜熱帯海洋性気候のエリアは、香りを放つ植物が多く存在します。ここに新しいスパイスも加わる、地域にちゃんと根付いている、そんな香り豊かなまち「名護市」を「香りを旅するやんばる」の中心にできたら最高ですね。






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