*試し読み:誘惑★オフィスLOVER2―プロローグ09―

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約束の時間より少し前に到着した私を、頼れる助っ人は、既に待ち構えていてくれて、駅の改札を抜けて元気な声に駆け寄って行く。

佐伯和佳子「美月~、こっちこっち!」

相沢美月「和佳ちゃん! 突然無理なお願いしちゃって、ごめんね」

佐伯和佳子「なーに言ってんの! ひなちゃんから電話もらった時、本当に嬉しかったんだから、美月は顔だってスタイルだって元々いいんだから。もうずっと、うずうずしてたの!」

3日前、陽向がSOSを求めたのはレクラ・デュ・ソレイでデザイナーとして活躍している従妹の佐伯和佳子。

――美月は自分に手をかけなさ過ぎる、もったいない!

昔からそう言ってくれていた和佳ちゃんになら、安心して任せられるという私の心理を、妹は見透かしていた。

相沢美月「何をどうしていいか・・・なので、和佳子先生にすべてお任せします」

佐伯和佳子「よろしい、そうこなくっちゃ! こっちの準備は出来てるから、早速行こう」

相沢美月「え、準備・・・?」

どこかのお店で、ドレス選びをする。そんな私の予想を大きく裏切り、和佳ちゃんが連れて来てくれたのは、レクラ・デュ・ソレイの本社ビルの中にある、プレスルームだった。

鏡で仕切られた通路には、センス溢れる洋服たちと色と眩さで、輝きを増している小物たちが並んでいた。

その奥で待っていたのは、予想外の助っ人・・・と言うにはもったいない、カリスマデザイナー北澤臣。

佐伯和佳子「北澤さん、お待たせしました」

北澤臣「来たか」

相沢美月「え、和佳ちゃん・・・!?」

佐伯和佳子「北澤さんに話したら、協力してくれるって! 私と北澤さんの手にかかれば、怖いものなしよ? 性悪社長を見返すことが、いちばんの目的だけど。どうせなら周りの男性の目、釘付けにしちゃお」

相沢美月「しちゃおって・・・」

北澤臣「初めまして、デザイナーの北澤です」

相沢美月「相沢、美月と申します。お忙しい中、わざわざお時間を・・・」

北澤臣「そういうあいさつは後でいい。彼女から話は聞いてたが、確かに磨きがいがあるな。まずは君本来のキレイを引き出すのが、先だ。魔法にかかる準備はいいか? シンデレラ」