見出し画像

VALUの終わりに


本日、VALUのサービス、及びVALU社についての発表させていただきました。

VALUが目指した世界の、その扉を僕たちは開けることができませんでした。VALUのユーザーの皆さまや、多くのご支援いただいてきた皆さまには申し訳ない気持ちでいっぱいです。力及ばず、このような結果となりました。

このnoteに、今回の発表について、これまでの経緯や、考えていたことをまとめています。すこし長い文章になりますが、お付き合いいただけると幸いです。


VALUは、「評価の基準を変え、お金の流れを変える」ことを目指していました。これまでお話してきたことと重複するのですが、この想いに至った背景に、ぼく自身が経験した2つの個人的な出来事をきっかけにしています。

それは、現在社会の「信用」のあり方に端を発しています。


新卒1年目の与信が150万円。社会人4年目フリーランスの与信は、その5分の1。


僕はグリーに新卒で入社しました。社会人になり、クレジットカードを作成した際、その限度額は150万円でした。その後、3年間東京・アメリカなどで多くの経験をさせていただき、社会人としてもエンジニアとしても自分を成長させることができました。自信もつき、将来の起業に向けて、時間を作るためにフリーランスに転身しました。

フリーランスの初年度は苦労しましたが、徐々に仕事も増え始め、会社員時代と同等以上の収入を得ることができるようになってきました。また、仕事上、サーバー費用の立替等も多くなってきたので、それ専用のクレジットカードを新しく作りました。が、そのときの与信額が30万円だったのです。

新卒で経験の少なかった僕と、3年の経験を経て独立した僕を比較した時に、個人的には比べるまでもなく、後者の方が「使える」人間なのですが、社会的には、「上場企業の新卒一年目」の方が、「フリーランス」よりも信用が高いということを実感しました。


賃貸契約が結べない

また、フリーランスになった当初は、節約のために実家に戻っていたのですが、ある程度、収入も安定して起業準備に向けて、時間の効率化のために東京都内への引越しを検討しました。(それまでは都内まで片道1.5時間という暮らしでした)いくつか物件を見て、申し込みをするも、入居したい物件が「フリーランスだから」という理由で、ことごとく審査落ちしてしまいました。個人的には、「稼ぐ力」は身についてきていると感じていたのですが、やはりショックでした。(その後、なんとか家は見つかりました。)

現在の「信用」 = 大企業に勤めている or 資産をたくさん持っている

これらの経験を通じて、現在の「信用」は、大企業に勤めていることや資産をたくさん持っていることでしか証明できない、認めてもらえないものであることに気がつきました。

フリーランス 、様々なインフルエンサーなど個人が活躍する時代になってきているのにも関わらず、世の中の仕組みはそれに全く追いついていない。この実態と制度のギャップを是正していきたいと考えるようになりました。


これがVALUが叶えたかった想いの発端です。VALUというサービスで「信用」をアップデートしようと考えたのです。この想いは、VALU社のミッション「評価の基準を変え、お金の流れを変え、フェアな社会を作る」ということに反映されています。


VALUのローンチと、想定以上のロケットスタート

そして、2017年5月に、半年間程度の開発期間を得て「VALU」がローンチしました。

正直なところ、ローンチ前は、個人のトークンを購入してくれる人が現れるのだろうか?と不安の方が大きかったです。

VALUは、仮想通貨バブルの盛り上がりと時期が重なったことで、サービスへの注目度が一気に高まり、多くのユーザーに利用いただくサービスになりました。当時は「β」をつけていたように、テストの要素が強く、体制が最低限だったこともあり、ローンチ後の3ヶ月は、ほとんど寝れない期間が続きました。また、VALUチームの未熟さで、ユーザーの皆様には何度もご迷惑をおかけしてしまいました。ローンチ当初からご利用いただいてきたユーザーの皆様には、本当に感謝しております。皆様からいただいた叱咤激励がなければ、こんなにも続けてこれなかったかも知れません。

特にローンチ直後は、代表という立場と同時に、フルタイムのバックエンドエンジニアは自分一人という状況だったので、精神的にもプレッシャーがきつい状況でした。CTOの左近が入社してくれた時に、安心したのか高熱が出て1週間寝込んだ記憶があります。

ローンチ後は、体制強化と、監督省庁との意見交換、サービス改善を行いながら、すこしづつサービスとしても会社としても強化を進めていました。仮想通貨交換業のライセンス取得を行い、サービスとしてできることを増やすことが、近々の目標でした。

中長期のサービス改善や、それに伴う採用計画、そしてVALU社としての展開などにやっと目を向けることができるようになったのが2017年の秋頃です。荒波には変わりなかったのですが、なんとかその乗りこなし方が身についてきたという実感を持ち始めていました。


仮想通貨の流れを変えたハッキング

そんな中、年があけた1月。仮想通貨の潮目を変える事件が起こりました。仮想通貨取引所へのハッキング事件です。仮想通貨全体が上昇基調だったことと、被害額がとてつもなく大きかったこともあり、仮想通貨に対するムードが一気に変わってしまいました。

それ以前は、仮想通貨交換業のライセンス取得に必要なコストは、約1億円と言われていました。会社としての体制強化や、セキュリティに必要な投資額がおおよそこのぐらいの金額だという目安です。ですので、VALUのようなスタートアップや規模の小さな会社でも、仮想通貨交換のライセンスを取得できるように設計されていました。

しかし、このハッキング以降は、この基準が一気に厳しくなり、求められるハードルが、銀行や証券会社に準ずるような高い基準を求められるようになりました。結果として、会社の体制も大きく厚くする必要があり、その準備に必要な費用は、ビジネスを成長・継続させる費用も含めると20億円程度と試算されるような状況となりました。(既に数十億以上をコンプライアンス構築のみに費やした取引所があるという噂もあります。)

これは、ローンチ1年未満の新興スタートアップにとって、かなり高いハードルとなりました。(また、昨年の4月に制定された資金決済法の中の仮想通貨のカストディ業務に関しては、10億円程度と噂されています。)


規制と資金のことを考え続けた約2年間

仮想通貨交換業のライセンスを取得するための体制構築をどうすれば実現できるのか?
そのための資金をどう用意すればいいのか?
調達するにして、どの程度の会社の価値が必要になってくるのか?
サービスを継続させるためにどんな選択肢があるのか?
他社との提携や傘下入りするとしたら、どんなことが起こるのか?

2018年と2019年は、そんなことをずーっと考え、行動してきました。

自力での仮想通貨交換業ライセンス取得を諦めてから、特に直近の半年は、多くの投資家や買収先候補にお話しにいき、VALUというサービスをなんとか存続できる道を探してきました。しかしながら、仮想通貨マーケットの現状、規制の厳しさに加え、VALUというビジネスモデルの難しさから、賛同いただける方を見つけることができませんでした。僕自身の力不足を感じています。


同時に収納代行スキームへの転換や完全分散プラットフォームの構築の道も模索してきました。しかし収納代行スキームについては、ビジネスモデルの抜本的な改変が必要だったこと、また完全分散プラットフォームについては、VALU社が主体で作った場合、結果的に仮想通貨交換業の対応がいずれ必要になる可能性が高いことが分かり、断念することになりました。


VALUの振り返り

あの時、あーしておけばよかったなとか、もっと早く決断することで資金を温存できたなとか、振り返ると改善できたことは多くあります。VALUというサービスは閉じても、VALU社として新規のサービス展開にピボットすることも模索していましたが、昨今のコロナウイルスの関係や残資金を考慮すると、直ぐに売上につながる受託ビジネスなどを開始する方が良いと判断し、新規投資のお金を全て止める決断をしました。

振り返ると、なかなかできない経験をさせていただき、自分自身を省みることの多い3年間でした。当初から、多くのユーザーの方にVALUをご利用いただいたこと、本当に感謝しています。VALUが描いた世界は、志し半ば、という結果になってしまいましたが、僕個人としては諦めることなく、追いかけ続けていきたいと考えています。

最後に。

今後は、このnoteで、代表としてぼくが経験させてもらった事を、問題のない範囲で共有させていただければと考えています。VALU社のその時その時の決断や、その背景、本音をほそぼそと書かせていただきます。

そして、お願いです。このままいくと、僕個人に数千万の負債が発生することになりそうです。皆様に甘えさせていただく形となり恐縮なのですが、今後のnoteを一部、非公開の課金部分を設定させていただき、その返済・会社の運営費用に当てさせていただければと考えています。

ご支援いただけると嬉しいです。

VALUをご利用いただいたユーザーの皆様、
VALUをご支援いただいた皆様、
VALUを一緒に作ってきたチームの皆様、
本当にありがとうございました。そして、申し訳ありませんでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?