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悪魔なんかじゃない。

10月末。バイト先でハロウィンイベントがあった。     
毎年ハロウィンは地味にかぼちゃを取り入れたり取り入れなかったり。お菓子を買ってみたりみなかったりな程度。

随分前mememe°ライブでハロウィンの時期と重なった時に、光る赤い角をつけて黒のマントをして出たことがある。
あれは悪魔の仮装ではなく個人的には「69⚡️96」ツアー時のCornelius小山田氏がしていた仮装の仮装のつもりだった。古の話、誰も気づくまいとひとりほくそ笑みながらささやかにやった程度。
中学生の時に生まれて初めて行ったコンサートがCorneliusの「69⚡️96」ツアーだった。
たしか福岡サンパレスだったか。
親友のHちゃんと学校を(親公認で)ズル休みして、大田舎から1時間以上かけて自分達なりに大オシャレして行った。海外旅行かディズニーランド行ったんかくらいお土産(物販)を買いまくった。ふたりだけの博多は大都会すぎて震えた。

あの日ステージ脇から骸骨たちが運んできた棺桶から登場した小山田圭吾氏はフライングVに悪魔コスチューム姿。
大興奮で、めっちゃかっけー!!と叫んだ。
仮装といえばあの感動しか記憶になく、おかげで仮装やるならこれだと、あの日の小山田圭吾の悪魔の仮装の仮装が私のハロウィンデビューとなった。

2023年、42歳の仮装。何が正しいのかさっぱりわからない。可愛さエロさは期待できない需要がないと自覚して、ガチガチでキョンシーしようとネットで探してみたが、ミニスカートのエロかわいキョンシー♡ばかり。
ちょっとちょっと、キョンシー舐めたらあかんぜよ、ガチで怖いのよキョンシーは。と、幼児時代の兄とのキョンシーごっこが怖すぎておしっこチビった身としては、本気のキョンシーを探した。
あった、やった!とみればサイズがない。
LLとキッズだけ。
がっぶがぶのズルズルキョンシーorぱっちんぱっつんのギチギチキョンシーの二択を迫られ、結局理想のキョンシーになれないと諦めたとたん、もはやタイムアウトで「もう何でもえーわー!」となり、可も不可もないようなメンソレータムのキャラクターのような、昔の西洋のナース。みたいな、一番避けたかった面白みも派手さも何もない、中途半端なナースの仮装一式をネットで購入。パーティの直前に何とか届いたのだった。鏡でみたらいつもの普段着より地味なナース姿。なんか、ふーん。だった。感想としては、テンションいまいち上がらないものだな。

スケバン刑事の仮装をしたスタッフなっちゃんが(チョイス大成功)血糊を買ってきてくれたので、せめてこの半端な仮装と気分にパンチがほしくて、スタッフから「やめとけ」と止められる中、鼻血メイクをすることにした。

鏡の前に立ち、生まれてこの方流したこのない鼻血を小指で右の鼻の穴下に垂らしてみる。
おお、なかなかちゃと鼻血だ。あはは鼻血。
と鼻血顔の自分をみていると、ふいに毎日のようにネットやニュースでみる戦場の傷ついた子供達の泣き顔や、血まみれで泣いている人たちの姿が頭をよぎった。
この嘘の血のなんとマヌケで無意味で愚かなこと。一瞬しらけて虚無に覆われた。

おっと、今夜はパーティ。気を取り直してハロウィンやっていこ!と鼻血のナースお酌をしたりお菓子を運んだり大忙しだった。

ハロウィンを口実に少しでも気持ちはずむ集まりができれば吉。子供も大人も一緒にそれを理由に遊べるならば何でもよいのだ。

このハロウィン企画をするにあたり、SNSで告知宣伝をしたら、知らないフォロワーの方から「迷惑で禁止されたイベント。仏教徒の日本人なのに」的なお叱り?なのかこの企画にあてたメッセージか、はたまたハロウィンをしたがる日本国民全員に対する嘆きなのかがわからないリプライをいただいた。けれど何も返信出来なかった。
我がバンドのフォロワーには熱心な仏教徒の方もいらっしゃる。ただの告知でも不快な気持ちにさせる。そんな事もあるのだと事実をしっかり受け止めた。
しかし我々のこのイベント誰に迷惑をかけるわけでもない、練り歩きすらしないささやかなハロウィンパーティ「絶対に成功させようね。」と、私の中のヨネダ2000とかたく肩を組んだ。
当日はスタッフみんなで飾りをつけたり、それぞれ仮装を準備したのだった。

まさか己の血糊面に心くじかれるとは予想できていなかったけれど。

イベントは小さなお子さまから、大きな人たち皆で大変楽しく過ごせた。
ご来店いただき誠にありがとうございました。

これからも季節行事は果敢に取り入れていこうと思う。全て飲酒の口実だ。
正月、節分、ひな祭り、七夕、お盆、ハロウィン、クリスマス。なんだっていんだ。
企業に踊らされていると笑われても構わない。誰の為でもない自分が楽しく暮らす為の全て口実。
いつ死ぬかもわからない毎日を今日も生きた。
明日も生きる予定。
スタンプラリーのように、季節の行事で集まった人たちでお互いを労い、いたわり、笑って過ごせたらそれだけでラッキー。それで充分だと思う。
いつか本当の棺桶で皆の前に登場する日がくるのだ。それまで肉体がある者どうし。何だって仲良く楽しんでやればいい。と思う。

今、自分にある平和な日々も、今ある暮らしが当たり前じゃないことも、周囲の助けや理解があって成り立っていることも、ついつい目の前の事やひと時の感情で時々それを忘れてしまうから。

一日も早く戦争をおこす全ての要因が直ちに、永遠に消えさることを祈る。
宗教も国境も生き物全ての線もこえて、祈る。
諦めずに、腐らずに。私にやれることは何だろうか。


この日はハロウィンのBGMをSpotifyがまとめた適当なものを流していたら、最初はディズニーのハロウィンソングなどで最適だったのに、どさくさにまぎれていつの間にかユーロビート系のダンスミュージックに変わっており、仮装した妙齢スタッフがうろうろする中、イカついユーロビートが流れる店内。うっかり謎の店の雰囲気になってしまっていた。

いつも優しくて穏やかなスタッフなっちゃんとルイちゃんが度々厳しい表情で「トモちゃん、なんか、音楽がちょっと。変よ。」と苦情がきてハッと気づき、慌てて曲を変えるを繰り返してしまった。あれは申し訳なかった。
パーティの肝心なBGMを度々失敗。この一点のみ反省した。
優しい二人の厳しいその指摘ポイントと、あの表情を思い出しては「いい仲間だなあ」とさらにこの店、ここの人たちを好きになった。

しかし、これは果たしてハロウィンパーティなのか。初のハロウィン企画で正解が全くわからないまま手探りで開催したので、大丈夫か不安もあったけれど、お客さんもスタッフも皆にこにこと楽しそうでかわいくて、酔いどれ天使たちを眺めながら、中途半端な鼻血ナースはとりあえずひと安心した。

パンプキン悪魔オバケ黒猫
ハロウィンモチーフは大好き!

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