一人暮らしをしていたアパートの隣りの空き地に2軒住宅が立ちました。
そのうちの1軒が今のお店【なかなか】でした。

2001年の事でした。
隣に住んでる事もあり、オーナーのおばちゃんとはすぐに仲良くなり近所づきあいも良好だった時に、1Kの狭いアパートで家内と同棲し始めました。

二人でお店に行くようになり、結婚をし、いつの間にか家内が店の二代目のバイトになり…
と、急激に近しい存在になった【なかなか】
オーナーのおばちゃんとその弟さんと二人で営むお店は私達夫婦にとって【第二の両親】の様な存在でした。

長男誕生の時も、家でもなくお互いの実家でもなく退院して直ぐに行ったのは【なかなか】。
初めて三輪車に乗れて、公道に出た時もなかなか。
自転車に乗れた。
補助輪取れた。
初めてのおつかい。

これは長男も次男も。
とにかく、【なかなか】は我々家族にとって紛れもない【家族】
そんな仲でした。

長男は幼少期から吃音障害（どもり）があり通院しながら学校にも通ってましたが、それが原因で激しいイジメの対象となってしまいます。

そんな状況を知っていた【なかなか】のオーナー弟さん（以下Hさん）は、長男に
「学童に行くのが辛かったら月曜日だけ学童行かないで、お店のお手伝いに来てくれないか？」と言ってくれ、箸袋に割り箸を入れたり座布団並べたりをやらせてくれてたみたいですが、要は遊んでくれてました。

長男は兎に角月曜日が大好きで、迎えに行くまでイキイキとしていました。

長男の小学校はいわゆる【学年崩壊】
6年間で担任が11人。
学校公開も校長先生の授業だったり、酷い時は用務員のオジサン二人が授業したり…

そんな中なので学校は長男に構う人も時間もない状態。
 そこも色々ありましたが…

…

それでも何とか普通の生活を過ごしていた時に悲劇が起きます。

長男が小学一年生の年末。
Hさんがお店で倒れたのです。
心筋梗塞でした。

懸命の治療も虚しく三日後に…。

それを聞いた我々家族のショックと言ったらありませんでした。
長男に伝えると、分かってるのどうなのか
「ふぅん」って具合。

でも、その晩長男はコタツに頭から潜ったまま出てきませんでした。
我々夫婦はそんな姿を見て、気の済むまで泣かせてあげようとそっとしていました。

三ヶ月ほど店を閉めていたオーナーのおばちゃん。
更に下の弟さん（以下Kさん）が手伝ってくれることになり【なかなか】は再開したのです!!

我々も嬉しくて直ぐに行き、元々面識のあったKさんも子供達の事を可愛がってくれいつもの【なかなか】に戻って行くのでした。

………

2017年一月
おばちゃんから
「今年の5月に店閉める事にしたよ」
おばあちゃん（96）の介護もあるしとの事。
とてもショックでしたが、仕方ない…
せめてもと、今までの感謝の意も込めてお店に通う事にしました。

3月末。

おばちゃんから
「やっぱりアンタ達お店やってくれないかな」
衝撃の一言。

それまで居抜きで貸す事にしたと言ってて数件が内見まで済ましたと言うのに。

私は思わず
「はぁ?!」
「何バカな事を」と言って一蹴したのですが…

その時の長男の顔が、目をキラキラさせて
「やってよ！」

その時思いました。
「やっぱり【なかなか】は無くしちゃいけない」

サラリーマンだった私は一念発起で脱サラ。
しかし、家内は4月から近所のパートから電車で30分の場所に正社員として働く事が決まってて。
少し離れていた所に住んでいた為引越しもしなければいけない。
次男に至っては転校もさせる事になりました。

それでも「オレも家の事手伝うから、次男の面倒も見るから」と言う長男の言葉が心強く決心が着きました。

当時長男中3、次男小3。

やっと見つけた近くの狭いアパートに家族四人がすし詰めの生活が始まります。
次男は両親がいつもおらず（と言ってもすぐ近くにいるのですが）、荒れまくった生活。
それを長男が諌めながら始まった新生活。

これは上手く行くのか…
不安だらけの新生活スタート。

ご来店されたお客様が
「あれ？ママは？」

「すみません、先月いっぱいで引退して今月からオーナーチェンジしました。」

「あっそう。じゃあいいわ」って言ってお帰りになられる。

こんな事が何回もありました。

失敗も何回もありました。

そして、追い討ちをかけるようにコロナ禍の世の中に…
飲食店には本当に辛かった時間を過ごしました。
周りでは店を閉める所も多数。
我々個人店に対しての補助は少なく、踏ん張って生きた期間でした。
しかし、その分次男と過ごす時間か増え徐々に落ち着いたのも事実で、前向きに捉えようと思っていました。

結局そのアパートには三年半済み、今は少し広めのマンションに移り次男も中学生となり大分落ち着き今の所平和な生活を送っています。

長男には本当に苦労かけましたね。
そんな長男は来年就職。
次男は高校生。

ガラリと生活が変わっていくと思われます。  

つづく