論点整理 女性専用サービスの根拠と問題点について

 男性差別論を話していると、必ずと言っていいほど出てくるというものの代表例として挙げられるのが、女性専用サービスと女性専用車両あたりであろう。 男性差別は他にもいろいろな例が挙げられるが、この二つはもはや外せない定番的なものである。 

 今回は、女性専用サービスの件について取り上げていきたいわけであるが、この件について肯定をしようとする側は理由として ①女性が不平等な立場にあるからこそ必要なものであるという点、②営業の事由により許されるべきであるという点 という二つの主流な論点を挙げることができる。

 この2点を中心に話を展開する予定であるが、筆者としては、先にこの問題について結論を述べておくと「あり方によっては肯定できるかもしれない。だが、これからも平等を進めていくとなれば、このサービスはほぼ必ず障害になる。」という風に結論づけることができる。
 
 なぜ、こう考えなくてはならないのか? そして、肯定する意見はどんなふうに考えられているのか?なぜその考えが批判されることがあるのか? 想像してみながら読んで見てほしい。 

1 平等的な観点からについて


 はっきり言ってこちらの論点は企業側の視点から見れば、あまり考えてはいないだろうと思われ、いきなりこの視点で判断すると筋がずいぶん悪いように見える。
 男女の格差があるから、こういったサービスを展開しました! と企業から言うことを想像してみればわかるが、そんなことを言う企業なんてまず聞いたことがない。フェミニズムから何か要請でも来ているわけでもないだろうし、そんなガチガチのイデオロギーをもってくるわけでもない。もしあったとしてもかなり少数でしょう。 

 更に、もう一つ大きな矛盾があるわけですが、これから男女平等をさらに進行させることと、サービスの推進は矛盾するということがでてくることも考えられる。 
 さすがに現代日本が昔より女性差別をされているという方はいないと思われるが、差別に対する是正措置というのは差別がある状況にて例外的に行うもので、差別の解消をしていけば是正措置は取り払われていくのが一般的な考えである。

 しかし、このサービスは過去に比べ平等な環境が整ってきてからサービス展開が広がっているものである。そしてこれからも進めていくというのであれば、平等の観点からは明らかに時代の流れとは逆の方向に進んでいるといえる。

 その他にも、男性の専用・優遇サービスの数が女性に比べて少なく感じるという点も、やはりこの視点からは厳しい事実になる。

 そう考えると、はっきり言ってこの視点は主たる根拠として使うのはかなり分が悪いといえるのである。

 まだ、この論点では触れるべき部分がまだありますが、次の論点と合わせて話すことにしたい。

2 営利サービス的な観点からについて


 どちらかといえば、この視点を強く主張する方が、企業側の主観などを考えると実態には沿うのではないだろうかと思う。あくまで、企業が営利目的のためにサービスを展開してお客を獲得しようとしているためであるのだと。
 なるほど、確かに企業としては顧客獲得のために、割引をして引き込もうという戦略は昔からある手法とは考えられるのではある。 しかし、割引だからなどといったものというのは、本当にそれだけで許されるのだろうか?

(1) 営利性はどこまで許されるのか
 営利性を追求するのは企業としては当然だとしても、現実的な問題として必ずしもそればかりが許されるわけではない。 それがわかる最たる例というのは雇用関係の話であろう。
 女性に対する雇用については、海外ではアファーマティブアクション(以下AAとする)などによって、企業側の自由というのは制限されている。日本においても男女雇用機会均等法といった法整備に始まり、女性を積極的に雇用することにより、企業から補助金を受けるなど、まあ何らかの形で介入が入っていたりするわけなのである。
 営業の自由を貫徹するのであれば、雇用関係についても企業の自由とし、人材確保は各企業に任せるべきである。しかし、そうではないことは男女雇用機会均等やAAといった制度など、皆さん知ってのとおりの状況である。
 雇用場面で営業の自由は制限されるわけなのに、サービス展開はまるでないかのごとく通用するとなるのだろうか?これが非常に疑問なのである
 雇用が生きていくうえで必要だからというものだとしても、いきなりサービスでは峻別されるべきという理由はどこから来るのか?また、内容がどんなふうであるのかも勘案せずにいきなり認められるとするのはおかしいのではないか? と考える内容は尽きない。
 

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