同人誌はパッションで出せ【追記あり】

同人誌で赤字を出した方のブログが話題になり、部数やら通販やらいつも通りのよくある感じに騒ぎになっている。
自分も言及したけど、二次創作の批評・考察本をフルカラー200Pの本をネットアンケート機能の投票を信じて部数刷ったら13万の赤字になったった…というやつ。そりゃ考察本で200Pフルカラーでネットアンケートの投票数鵜呑みにしたら赤字になるよ〜という話ではあるし、突っ込もうと思えばツッコミどころはたくさんあるんだけど、私が語りたいのはそこじゃあ無いんだ。

みなさん、同人誌ってのはパッションなんですよ。


  1. 激しい感情。情熱 ▷ passion

  2. キリストの受難。また、受難曲 ▷ Passion

1の方ね!

そう、同人誌ってパッションで生むもんなんです。
「うおおおおこんな本つくりてえ!!!!!!」って思ったら作っていいんです。

売れなきゃいけない、綺麗な絵じゃなきゃいけない、面白くなきゃいけないなんていう縛りは、一切ございません!!!!!!

愛とパッションさえあればLOVE is OKなんです。
それがどんな内容だろうと、パッションよ。
考察、批評、妄想、大いに結構じゃないですか!
作りたいと思ったものを作っていいのが同人誌なんですよ、それがオフ本(印刷所に依頼した本)でも、コピー本でも、結果売れなかったとして、それは結果でしか無いんです。

大体本作るために原稿するってだけですげーんだから!!!!!!!


自分は二次創作の方で同人誌を出すタイプのオタクなのですが、私が中学生の頃はコピー本なんて当たり前の時代でした。
漫画はアナログ、しかもコピックマルチライナーで描いてたし、コンビニでコピーしてホッチキスで止めてたけどみんなそんな本を楽しく出して楽しく買っていた時代。
対して現代では印刷技術も向上しサービスの幅も広がり、誰もが簡単に印刷所にグッズや本を依頼できるようになった。そのおかげで本を出すハードルは下がったと思いきや、逆に「本は印刷所に出すものじゃないといけない」「印刷所に出すなら完璧なものでなければならない」という足枷が勝手に生まれてしまったように感じる。
そんなことは一切ないのに!

先人たちは言いました、「紙一枚折れば本である」と。

本の定義なんてのは、同人誌というジャンルにおいてこれほどまでにないくらい自由なのです。
だってそこにあるのは義務じゃなくてパッションだから。
うわーーーーーこういう本だしてぇーーーーーーはい!!!出します!!!!
それでいいんです。
売れなきゃ本じゃないなんてのは幻覚です。

件の作者さんは毎回30部以上は刷っていた、とおっしゃっているのですが、それに対して「30部とか経験にもならんやろ」という引用RTがあって私は本当にクソブチ切れるかと思いました。

同人の経験=印刷部数じゃねぇから

勘違いすんな。同人誌の経験っていうのは、「アレ作りたい!!これ作ってみよ!!原稿、制作楽しんど辛ボエエエやった脱稿したいえええええい!!!!!!」っていうコレだ。
小説でも漫画でも批評でも考察でも写真集でもグッズでも手作り作品でもイラストでもなんでもそう!!!!!

何かを作る!それをイベントという場に出す!!それが経験です!!!

部数がどうとか、売れなきゃこうとか、通販サイトに出してそうとか、そんなもん作り手側のマウントか買い手側の勝手な思い込みでしかないんですわ。

正しい部数なんてマジでない。大手だから何千部刷らなきゃいけないとか、希望者が居る限り再販しなきゃいけないとか、通販せにゃならんとか、刷った部数が一回で捌けなきゃいけないとか、そんなんぜ〜〜ーーーんぶ思い込み!!!!

誰かが勝手に自分や他人に足枷つけて、勝手に他人に強要してルールにしようとしてるだけ!!!

同人誌ってのは、イベントの規約や公式ガイドラインに準じていていれば基本自由なんです。
もちろん他人の作品パクったらいかんとかそういうのは別問題ですが、絵が上手くなきゃいかんとか、部数は最低何十部刷らなきゃいけないとかそんな縛りはございません。

じゃあ件の方は何を間違ったのか。
間違ってなかったと私は思います。ただただ判断が色々ずれてしまったことや、アンケート結果だけで売れることを見越しちゃったとか、そういう積み重ねだと思うし、結果赤字が出たとしても自分の財産・自分の判断でやってるものはどう足掻いても自己責任。
趣味の範囲で各々の自己判断でやってることを他人が「ここが間違ってましたね」とか言うもんじゃないの。
だから、出す側が考えなきゃいけないのは「自分のできる範囲でやること」それだけなのです。

ちなみに13万円の赤字という件に関しては、ぶっちゃけ地方勢は割とそのくらい毎回出るのが当たり前という感覚です。
イベントにかかるお金は

・イベント参加費
・印刷代 (本、グッズ、ノベルティなど作る分だけかかる)
・材料費 (原稿制作ソフトや画材、布やビーズ、その他部品など)
・雑費 (敷き布、什器、飾り用の小物など)
・交通費 (遠方だと片道万単位でかかる)
・宿泊費 (宿泊が大体土日なので割高にはなる)
・食費 (人間食べねば死ぬ)
・差し入れ代 (差し入れ文化は楽しい)

などが基本的に一回のイベントごとにかかります。
什器や敷き布は一度買ったら使いまわしたりもしますが、意外と買い替えたり買い足したりと何やかんや毎回私はかかってます。
また、人によってはアシスタント代だとか、ロケや批評のための取材費などもかかっていたりします。缶詰食べ比べとかの本だったら缶詰代とか、コスプレ写真集ならスタジオ代やカメラスタッフさんへの支払いなどもかかるでしょう。
イベントにサークル参加するのには、基本ある程度金がかかるものなのです。

これらを合わせると、特に地方勢は毎回大体少なくても10万〜くらいはかかることは珍しくありません。
しかし、全員がそれを頒布物の売り上げでペイできる人ばかりではありません。売れ残った頒布物を持ち帰る人もたくさんいるし、そこまで金かけて無料配布してる人も居たりします。
こういう話になると毎回買い手側から「印刷代がいくらで頒布代がいくらだからこれだけ売り上げが出てるはず」と言うクソみたいな憶測が送られてきたりするんですが、本の印刷代と本の売り上げだけ考えたら黒字になっているように見えるだけで、実際は上記のように印刷代以外の出費が多いのです。


また、二次創作については暗黙のルールとして昔から「売り上げは出さない」というのがあり、最近では公式の二次創作ガイドラインにも「趣味の範囲内でならOKだけど、商売として成り立つレベルになったらダメやで!」的な規約が盛り込まれていたりもしますので、なるべく売上は出ないほうがいいよね〜くらいの感覚でいた方が無難です。
(一次創作は売り上げたってもはなから自分の作品なのでオールオッケー)

要するに、イベント参加は金がかかるし頒布物の売り上げをペイする、プラスにするなんてのはよっぽどの大手か旬ジャンルじゃないと難しいもんなんです。
そしてそこがゴールでも基準でもないんです。

そこまでして金かけて、あの場に居る人間たちは一体何がしたいのか。
それは、ただただ「楽しい!!!」を享受しに行っているのです。
好き、楽しい、面白い、最高、ありがとう!!!!これ。

イベント参加するぞー!!と意気込んで申し込みをし、出すものの内容を考え、印刷所を決め、原稿や作成に取り掛かる。印刷所の締切をチェックして自分なりの締め日を決めて、ダラダラと過ごし、差し迫る締切に慌てながら原稿を進め、あかーーーんもうむり!!!!とか言いながらやっとの思いで脱稿して入稿して、Twitterに「脱稿しました!!!」と書き込む。そしてイベント当日にハラハラしながらスペースに行き、無事にダンボール箱が届いているのを確認して出来上がった本を手にとる。あるいは、必死こいてコピーして製本したり、縫って切って貼って編んで形になった本やグッズを、自分のスペースに並べる。周りの人に挨拶をして、仲のいいフォロワーさんとキャッキャして、開場前の挨拶が流れて、会場全体から拍手が巻き起こる、それが楽しい。
それが、楽しいからイベント行ってるんですわ。少なくとも自分はですが。

もちろん手に取ってもらえたらすごく嬉しい。だけど、売れたらなんてのは考えない方が絶対に楽しい。何部売れたかよりも、目の前に並んだ頒布物を自分が作り上げたことが何よりすげーんだから、そこに何がどんなふうに並んでいようが、幾つ並んでいようが他人がどうだこうだ言うもんじゃないんです。

作った時点で、作った人が世界で一番偉いんで。

頒布物を作ることは簡単じゃない部分もあるし、大変な工程もあります。
「売れて欲しい」「売れなかったな」と言う寂しさや後悔、もっといいものを作れたら…という悩みは人間だから誰だって抱えてしまったりもします。件の方は、そういうところを吐露したに過ぎないと思っています。
誰かが手に取ってくれることが嬉しいことも、思っていたより手に取ってもらえなかったことが悲しいことも、何も間違ってないんです。そういう一喜一憂も含めてのイベント参加ですから。

だけど、本を作るかどうかということに「売れるか売れないか」を基準にしなくていい。
面白いことばかりじゃないし悩むこともたくさんあるけど、一番大切なことは「これ作りたい!!」というパッションなので、これからイベント参加デビューしてみたいという方は、余計なことを考えずとにかくパッションでガンガンいろんなものを作って欲しいなと思う。
もちろん、自分の責任が取れる範囲で、自分の手におえる範囲でね!

通販は義務ではありません。
希望者全てに行き渡る数を作ることは義務ではありません。
面白いものを作ることは義務ではありません。
クオリティ高いものであることは義務ではありません。
匿名ツールで送られてきたリクエストも義務ではありません。
イベント参加というものにおいての義務というものは、イベント規約を守ることと、他人に迷惑をかけないこと。犯罪を犯さないこと。それだけです。

同人誌はパッションで出せ。頒布物はパッションで出せ。
それが一番楽しいから!





【4/11 追記】


この記事を書いてから、件の方の本がフルカラーだった理由が「公式イラストを使用していたから」というのが発覚してオワーーーーーwwwとなった次第。

同人誌はパッションで出せ!と書いて入るけど、それはあくまで「同人誌を出す上で(二次創作の場合は)公式の規約や"みてみぬふり"してくれている範囲内で楽しくやろうね」というのは揺るぎない前提なのです。

件の方曰く、「引用だから問題ない」とのことですが、引用の基準に"売上が発生する趣味の同人誌"が当てはまるかは法律の問題になり、専門家や公式側の判断になるため、それ以外の人間には正しいか間違っているかの判断を下せるものではありません。そのため、「引用に当てはまるか」「評論・考察同人誌に公式絵を使っていいか」という点では何も言及はしないのですが、あえて何か言うなら

そりゃ売れないね…

ですね…。

同人誌を出すオタクたち(特に女性向け界隈)にとって、古くから

・公式が"見てみぬふり"をしてくれているから、公式に迷惑がかからないようにすること
・公式の画像やデザインをそのまま使用することは無断転載、無断使用になりかねないので絶対にやらない
・これらを破ったら最悪二次創作界隈全体が潰されるから、絶対に公式が動くようなことをしない

と言うのが暗黙のルールとして存在しています。
守らない人も中には居るんですが、基本的にはこれは誰もが活動をしていく上で身につけるものでした。
多くの出版社や販売者、原作者様などの公式が当たり前のように二次創作のガイドラインを作ってくださるようになったのも、本当にここ7,8年くらいなんですよね。

これを前提にすると、「公式の画像をふんだんに使用した、引用の基準を満たしているか判断ができない本」となると、恐ろしくて手が出せません。
女性向け二次創作イベントには珍しい評論・考察本というのも売れなかった要素として絡んではいるでしょう。自分もこの記事を書いた当初はそれを前提に書いていたので…。
しかし、正直この件はそこはあまり関係ないような気がします。

同人誌はパッションで出せ。これは変わりません。
この場合の同人誌とは、一次創作や二次創作だけでなく、広く同人誌と呼ばれる全ての本を指します。
どんな内容であれ、「本を作りたい!」と思ったなら作るが吉なのです。

しかし、何かを制作する際には必ずルールや法律が存在します。
他者の権利を侵害しない、他人の誹謗中傷や悪意ある虚偽情報の流布をしてはならないなど、常識で考えて最低限守るべきボーダーというものは何にしても存在しています。
そして、それらのルールや法律というのは得てして"曖昧"なものだったりします。
要するに、「こういうルールや法律があるから、なるべく抵触しないように作り手は考えねばならぬ」ということです。

昨今、生成AIなどで騒がれている「他者の著作物を許諾なく使用する行為」は、正直古来から同人界隈とは切っては切り離せぬ問題です。
例えば某海賊漫画の海賊旗マークや某イカトゥーンに出てくるデザインをそのままトレースしてグッズを作ったサークルが炎上したり、他人の同人誌の内容や構図、コマ割りをそのまま丸っとパクった人が炎上したり…

場所がSNSになっただけで、インターネットのない時代からそれらの行為は毎回問題になり、「やったらあかんこと」として同人をする民の中で定着していったわけです。

なので、そうしたルールや法律に触れてそうな頒布物は手を出さないのは同人界隈の人間の本能と言っていいでしょう。
危なそうなものには手を出さない。大事なことです。

同人誌を出すにはパッション。
しかし同人誌や頒布物を出すということは上でやるべきこと・やってはいけないことを調べることも含めての制作です。
決して難しいことではないです。同人誌を出したい!と思えるほど愛があるのであればそのジャンルや文化を愛する気持ちで調べることはできるはず。
件の方は好意的な解釈をすれば、"引用に当てはまるかを自分で確認した上で大丈夫だと判断して制作した"のでしょう。だからこそフルカラー200Pの超大作は生まれたのでしょう。知らんけど。
それが他人にとってどう判断されるかまで気が回らなかったというのが誤算だったのだろうなと思います。

同人誌はパッションで出せ。
しかし、全ての創作物は守らなければならない最低限のルールやマナーがあることは忘れてはならない。
これは本当に大事なことです。

好意的に解釈しつつ根本的な部分を語る記事書いたら後出し(?)がすごかったので流石に補足しておこうと思って追記しました。
全ての人が楽しく、気軽に本を出せることに揺るぎはありません。パッションがあれば、技術や内容が拙くても、ページ数が多かろうと少なかろうと構やしないのです。
売れなくても、「本を作った」という行動を最後までやり遂げたこと自体が素晴らしいのです。
自分の中のパッションは自分にしか表現できません。どんな表現方法であれ、それは素晴らしいことです。
守るべきことを守り、楽しい創作活動をしていけたらOKです!


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