打ち切り漫画家、『ハナカク』が打ち切られた日を振り返る

「素晴らしいネームをありがとうございます」

『ハナカク』19話、ニナ編ラストのネームを読んだ担当さんの言葉でした。

そしてそれから数日後、19話の原稿を描き終えデータを送ったその日に打ち切りを告げられました。

「4巻で終了です」

そうなることはわかっていたし(単行本が一度も増刷されなかったので)、特に驚くこともなく、まあ仕方ないなと淡々と事実だけを受け入れていました。

たぶんここまで『ハナカク』を読んでいただいた方は、とても打ち切りになるような漫画には見えなかったんじゃないかと思ってます。
当時の担当さんもそれは十分にわかっていたので、冒頭のあの言葉でした。

でも漫画って、どれだけ面白かろうが内容が素晴らしかろうが、結局「本」が売れなければ終わります。
そういう仕組みのビジネスなので。

当時のぼくも打ち切りの現実は受け入れつつも、その結果には到底納得することができずにいました。

「こんなにちゃんと面白いのになぜ終わらなきゃいけないんだろう」

変えようがない現状への問いはそれから一年以上、ずっと頭の中をグルグルし続けました。
本当に気がふれそうなくらいに。


ぼくは『ハナカク』の前に2作、打ち切り漫画があります。

どちらも「面白くなかった」ので打ち切りになりました。

面白くなかったって言っちゃうと、この作品を応援してくださった読者さんに失礼ですよね。すいません。

でも言い換えたとしてもやっぱり未熟で、とても商品としてのレベルに達してはいませんでした。
ぼくは漫画を作るプロなので、自分の漫画もそう評します。

二度打ち切られた後も、ぼくは何度も何度もネームを描いてはボツって描いてはボツってを繰り返し、そして一向に面白い漫画を描くことができずにいました。

「漫画はキャラ」
「動機をしっかりと」
「主人公はシルエットでもわかるように」
「つかみがどうたらこうたら」

そんな体系的なメソッドにとらわれ、長い時間振り回され続けていました。

「面白い」の本質にたどり着くことができなかったのです。


そんな中、東日本大震災の翌年2012年。
ボランティア先で出会った東北の仲間たちとの交流をきっかけに、ぼくの漫画観はひとつの殻を破りました。

当時のことは、こちらに書いてあります。

人のために描こう。

ほんの少しでも、漫画を読んでいる時間だけは
日々のつらいことや悲しいことを忘れられるような
そして明日からまたがんばろうって気持ちになるような
そんな漫画を描いていこう。

こうして、殻を破れずにいながらも長年止めることはなかった研鑽もそれを後押しするように、初めてぼくは「自分が面白いと思える漫画」が描けたのです。


しかし、結果は4巻で終了でした。

面白くなかったのなら仕方ないんです。
商品として楽しんでもらえるレベルに達していなかったのなら。

でもそうじゃない。

読んだ人の心は確かに熱くしてる。

「面白い」だけで終わらず、
「感動した」って言ってくれる人がいる。
「泣いた」って言ってくれる人がいる。

でも売れなかった。
「本がたくさん売れる」っていう結果がつかめなかった。

そして世間では「本がたくさん売れなかった漫画」は「つまらない漫画」ってことになってる。

それが本当に悔しくて悔しくて…。


さらに人は「売れなかった漫画」を読もうとはしないので、読まれないぼくはずっと「面白くない漫画を描いたヤツ」でいるしかありませんでした。

「読んでもらいさえすれば…」
「もう一度ちゃんとたくさんの人に読んでもらえる環境でやり直したい」
そんな後悔と切望と
「でも売れる漫画はどこで描いても売れるし、やっぱりそこまでじゃなかったのかな…」という冷静な自問自答を
気が狂いそうなほど延々と繰り返していました。

移籍での連載再開も模索し、大手に絞って交渉を繰り返したりもしていました。
そして移籍連載が決まっていた時期もありました。(結局流れましたが)

でも今となってはその移籍連載も叶わなくてよかったと思っています。
同じ土壌である以上、同じ結果にしかならなかったでしょうから。


ぼくがこの経験から学んだのは
「他人に委ねてはいけない」でした。

作家にとっては大切なたったひとつの作品でも、
他人にしてみたら膨大な数ある中のただの1つです。

始まることも、終わることも、届けることも
他人の意思に委ねることなく創作できるようにならなければいけない。

そしてそれを実現するためには、そうできる「環境」を手に入れなければいけない。

そうして今に至ってます。

そして少しずつ、それを実現する自分も見えてきました。
あとはそれに向かってひたすら積み重ね、近づいていくだけです。


時代は大きく変わりつつあり、
もう「本が売れるか売れないか」の価値基準だけで戦う必要もなくなりました。

これからは自分の作品を自由に描いて、自由に届けていける。

時間はかかるけど、誰よりも作品を思う作者自身が
その作品を応援してくれる読者と一緒に創作を継続していく。
そんな未来が近づいています。

『ハナカク』はそうやって応援してくれる読者さん一人一人に届けていきます。
続きはもう少しだけ待っていてください。
必ず届けます。



『ハナカク』19話が載った号が発売された日。

滅多に連絡をしてこないお父さんがメールをくれました。

「今月号読んだ。勝法すごいな。感動した。」


もっと自分の作品を信じよう。

「本がたくさん売れなかった」は「面白くない」じゃない。

この作品はまだまだ出会えてない人たちがたくさんいる。
むしろこれからまだ『ハナカク』を知らないたくさんの人たちに出会えると思うと楽しみでしかない。
もっともっと会いに行かなきゃ!

漫画が終わる時は、漫画家が描くのをやめた時だけ。

さあ、明日もまだ見ぬたくさんの読者さんに出会いに行こう。

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打ち切り漫画家2.0 松井勝法

◆伝説の打ち切り漫画家👑描いては打ち切り➡︎作家自身がメディアとなって創作を継続する未来を目指す◆インスタフォロワー3.3万人https://www.instagram.com/matsukaku/ ブログ月間12万PV https://okuboku.com/

打ち切り漫画家2.0

伝説の打ち切り漫画家が考える新時代漫画家生存戦略。 目指す未来は“個”をコンテンツ化し“個”をメディアにする。 現在進行形の施策とその実証をここに書き記します。
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