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相川伸夫の名証IRレポ・丸順取材

■名証IRエキスポ


 今年もこちらに参加させて頂きました。
 以前、丸順の記事を書かせて頂いたのは、この名証IRで同社を初めて知ったのがきっかけです。

 今回は株の学校の講義が土曜日にある関係で金曜日の1日しか回ることは叶いませんでしたが、かなり有意義な時間でした。
 当日挨拶を含めブースを回ったのが15社程度、取材レベルでお話を聞いたのは7社となりました。

 その7社の事をここで書きなぐるのも分析していない単なる取材のメモを書くだけになるので、私のピックアップ銘柄の丸順の事について簡単にではありますが報告をさせていただきます。


■丸順の技術の『ボス』への取材で確認できた事

※先に断っておきますが、会話における相互の認識のズレ等も多少あるかもしれませんのでご了承ください。

Q、アルミの展示品は試作型を新規に起こして作った?
⇒試作型を新規に起こして精度出しをして作った。製品はN-VAN?と同じで精度も出せることを証明できた。
Q、そのアルミのショット数は本番(現状の量産でのショット数)と同じで打った?
⇒同じショット数の速度で打ったもので作ったもの。もちろんアルミは高いし、これは試作だから連続生産ではしていないけど、実際の量産をしても寸法精度や外観品質の違いは大きくは起きないと思う。量産をしたらそこで新たな問題は出てくるという話は製造の仕事には付き物だからそこは話は別。
⇒もちろんセンターピラーをアルミで生産する日は来ない(アルミで作るのは強度が弱すぎるから)けど、現状の丸順の持つ実力を対外的に示すことができる事が今後の仕事の受注につながるからこういうことにチャレンジしている。
Q、アルミの製品っていつ頃採用されると思う?
⇒これはまだまだ先の話だと思う。現状では強度とコストで折り合わないから。
⇒しかし、こんな難しい材質でも精度が出せるんだぞって、カーメーカーから「アルミでやりたい」って言われたときにいつでも対応できるように準備を整えている。
Q、工場に行った時に入口においてあった超ハイテン(1470Mpa)のセンターピラーは試作型で作ったの?これは寸法精度も出せてるの?
⇒これも新規に試作型で作ったもの。もちろん寸法精度も外観品質も出している。
⇒これも先程と同じでメーカーが超ハイテン(1470Mpa)でやりたいといわれたらいつでも対応できるように準備をしている。
⇒ちなみに他社の製品のホットスタンプ品を買って寸法を取って、これも試作型で精度が出せるかトライした結果、冷間加工でホットスタンプ品が出来てしまった(笑)
⇒ただ、完璧に出来たというわけではなくホットスタンプ仕様のR部などはそのままだとヒケができてしまったりするからさすがに少し設変してもらう必要はあるかもしれないが、ある程度出来るのではないか?1470MPaの物でそれ以上の硬さや形状によっては当然無理なものも出てくるし、現状はもちろんまだ仕事はない。これも技術力アピールの一環。
Q、気になってるのは前に「金型整備スタートから良品取り出来るまでの整備回数は?」と聞いた話。5年前だと7回くらい整備出しにかかっていたとの事だけど、最近はどれくらいで出来るようになっている?これが長くかかると金型製作が赤字になってしまうから私は一番のリスクだと思ってる。
⇒これは昔に比べて今ではおおよそ半分の整備回数でできている。
⇒それはCAE解析の精度を大きく上げられてきていることが大きい。

CAE解析ってなに?って思う方は↓を参考。
※外部サイト【初心者必見】CAE解析とは?基礎をわかりやすくまとめました
 https://persol-tech-s.co.jp/hatalabo/mono_engineer/412.html

⇒精度出しはプレスした製品に対してカラーマップ(※カラーマップというのは3次元測定したデータを良品のデータとのズレの大きさで色を付けて可視化するソフトウェアによる解析の事)で取ってベストマッチング(データのズレが一番少なくなるように合わせてズレを見る方式)で作り込みに行っている。
⇒ゲージでの測定は基準面の影響が大きく、測定が暴れすぎるから次の流れで整備している。
 1)試し打ち
 2)カラーマップで製品の3D測定(誤差は0.3以下??少ないとのこと)
 3)3DCADデータの図面値とのズレをコンピュータで数値化
 4)CAE解析で目標値までの金型の形状データの数値化
 5)金型を肉盛り(機械)&切削(機械)&仕上げ(職人、サンダー、ベビー、ベルトン)
 6)金型をカラーマップで3D測定(狙い通り削れているか?どれだけズレているかの現認)
 7)試し打ち(これで1サイクル)
⇒CAE解析に使うコンピュータやソフトも良くしたから演算にかかる時間は2H程度?、金型の精度出しは平均3~4サイクルで出せるようになった(これはトンデモなくスゴイ事!金型に携わってない人には伝わらないとは思う)
Q、日々量産していく中で原材料の超ハイテン(1170MPa)の原材料の硬さバラツキの変化は最終製品にすさまじく影響して品質が暴れると思うけど、それはどうしてるの?
⇒おっしゃるとおり原材料の硬さのバラツキの影響はとても大きい!!原材料の伸びや硬さによって出力される製品は様変わりしてしまう。590Mpaのものよりも1470Mpaの方がこの影響度も上がるし、金型の精度出しの難易度も上がる。材料の硬さと金型製造難易度は二次関数で上がるイメージ(めっちゃ分かる!)。
⇒そこで材料調整(ロットのバラツキ範囲の制限)をしている。
⇒それによって品質を担保する工夫をして供給している。
Q、金型整備の1サイクルは大体どのくらいの期間で出来るの?
⇒手番の段取り抜きで考えるなら2日?で1サイクル。
⇒実際には機械の空き具合であったり、突発の仕事もあるからそういう風には仕事は回っていない。
Q、どういうところに難しさがある?
⇒ご存知と思うが、プレスを打つ時にはその金型もたわんでおり、その応力によってプレス機もたわむ、それを正しく認識していかないといけない。製品だけを見るのではなく金型の剛性なども含めて常に相対的に見ていかざるを得ないところに難しさがある(めっちゃ分かる!)。
⇒あとはいまだに深絞りすれば成形できるとおもっている人もいるが超ハイテンの領域ではそんな風に作ることはできない(硬いから伸びが低く割れたりヒケたりしてしまう)。
⇒だからあらかじめ前工程で特異形状に見込んだりもする工夫をしないといけない。
⇒まだまだ我々も技術を磨き研究していかなければならない。


 丸順のブースでは大変マニアックでその業務のコアな部分に携わっていないと分からないところを深く聞けて大満足し、また金型に関わっていた経験のある私にはその難易度が想像できるので感銘を受けました。
 これだけ素晴らしい技術力をお持ちになられていても中々それを対外的に伝えることは容易ではありません。
 私の記事がその少しばかりの助力にでもなれたら幸いです。

 私の中でさらに丸順のリスク(金型製造における失敗のリスクと今後の仕事の受注が上手くいかないリスク)はさらに低下し、魅力が高まったことは言うまでもないでしょう。

 また、このような内容は私が丸順に対して真剣に取材しているという事も一因としてあるかもしれませんが、基本的に『誰でも』聞くことができます。

 こうやって直接企業に取材して開示されていない事について根掘り葉掘り聞くことはインサイダーでもなんでもありません。
 昔に比べるとネットで手に入る企業の情報は飛躍的に増えましたが、それでもホントのコアな部分はネットでは手に入りません。

 企業への電話もメールもバンバンすれば良いと思います(くだらない内容や礼節を欠くのは論外)。

 しかし、それよりも難易度が低いのが企業IRイベントへの参加です!

 まだ参加されたことが無い方はぜひ参加してみてください☆


それではまた。


『全力全開全力前進!!!』


(相川伸夫)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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