鈴木重家の後日談(5)ー謡曲「語鈴木」と鈴木屋敷

「語鈴木(かたりすずき)」は鈴木重家が主人公の謡曲です。作者や成立年代はわからないそうで、長らく上演されていませんでしたが、平成30年(2018)3月29日に復活上演されました。『わかやま新報』の同年3月30日の記事を抜粋して紹介します。
「鈴木三郎重家を描く能300年ぶり上演 和歌山県海南市にルーツを持つ鈴木姓にちなんだ能『鈴木三郎重家』の公演が29日に東京都渋谷区の国立能楽堂であった。廃曲となり約300年上演されていなかった曲『語鈴木(かたりすずき)』を基に、東京のシテ方観世流能楽師の鈴木啓吾さん(54)が復曲。約400人を前に、藤白鈴木家出身の三郎重家に光を当て、主君に忠義を尽くし活躍した歴史の一幕を熱演した。復曲した『鈴木三郎重家』の物語は、源頼朝に追われ、奥州を目指す源義経主従の一行に加わった鈴木三郎重家が、病床の母親を見舞うため、海南市の藤白に一時帰郷。その後、一行に合流するため奥州を目指すも捕らわれの身となり、対面した頼朝に義経の正当性を滔々(とうとう)と語る。頼朝はその姿を気に入り、自らの家臣になるよう求めるが,,,.という内容。」
鈴木啓吾さんはこの復活演能の翌年には藤白神社でこの謡曲を奉納しています。『わかやま新報』が2019年3月13日にネットにアップした記事の一部です。
タイトルは「鈴木屋敷復元の成功願いゆかりの謡曲奉納」です。
全国に約200万人いるとされる鈴木姓のルーツ•和歌山県海南市の藤白神社境内にある「鈴木屋敷」復元へ機運を高めようと、東京の能楽師•鈴木啓吾さんが10日、鈴木姓にちなんだ謡曲を同神社拝殿で奉納した。鈴木屋敷は老朽化が進み、現在復元整備が進められている。鈴木啓吾さんは2016年に同地を訪ねて以来、屋敷の姿に心を痛め、復元の一助になればと、約300年上演されていなかった廃曲『語鈴木』を『鈴木三郎重家』として復曲。昨年3月、東京の国立能楽堂で上演した。復元に向けては個人からの寄付を募っている他、市では1月から企業版ふるさと納税制度を活用した寄付を呼び掛け、全国各地から「鈴木さん」をはじめとした寄付の申し出があるなど、関心が高まっている。この日、鈴木さんは拝殿で謡曲「神歌」と「鈴木三郎重家」を朗々と謡い奉納。奉納に続き、境内に設けられた舞台で、鈴木さんが義経に関係した仕舞「屋島」を披露。鈴木屋敷復元の会の役員8人も加わり「鈴木三郎重家」の謡曲の一部を連吟で披露した。
この記事にある「神歌(かみうた)」は「式三番(翁)」で謡う詞章のことで、「とうとうたらり たらりら たらりあがり ららりとう」の詞で知らています。
源義経が登場する「屋島(観世流の表記。他流派では八島)」は、平家物語を題材にし、義経の霊が登場して当時の戦の様子を語ります。
連吟(れんぎん)とは、演目のクライマックスの部分のみを数人で謡うことを言います。
鈴木屋敷は、昭和17年(1942)に最後の当主122代目鈴木重吉さんが病気で急死して藤白神主家の鈴木氏が断絶して以来、空き家となっていました。平成27年(2015)に藤白神社の一部が国史跡に指定されたことを契機に、海南市が復元計画に着手。2021年度から工事を始め、約1億9000万円をかけて、令和5年(2023)3月30日に完成を祝う神事が行われ、4月1日から公開されています。祝日以外の月•火は休み。10時から16時。拝観料300円。場所は当ブログの「藤白神社の主祭神はニギハヤヒ(1)」で触れていますが、神社の境内の外にあり、境内に入らずに左方向に行きますと生け垣があり、その下に屋敷が見えます。



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