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歌舞伎ヲタが滝沢歌舞伎ZERO FINALを観てきたよ(後編)-さよなら滝沢歌舞伎-

※この記事はネタバレを含みます。
※私はただの歴の浅いスノ担(箱推し)で、歌舞伎が大好きな一般人です。
※書いてある内容は個人の感想です。

本日4/19からいよいよライブビューイングが始まりますね。そんなタイミングで後編です。前編では歌舞伎パートといくつかの印象的な場面について感想を述べましたので、後編はじゃあ全体としてどうだったのよみたいな話をしたいと思います。

本当は1本にまとめる予定だったんですけど、長くなりすぎたのと激重感情すぎて気持ち悪くなってしまったので分割しました。後編はより一層個人の感情に任せて書いていますので、ご了承ください。

「弔い」としてのパフォーマンス

前編を読まれた方は、「ああオクラはFINALについてどちらかというと良い感情を持っていないのだな」と思われたかもしれませんが(結構辛辣だったように思う)・・・YesでもありNoでもあるというのが正直なところです。

Twitter速報(?)でも書いたのですが、観劇して一番初めに頭の中に浮かんだのが「弔い」という言葉でした。もちろん対象は「滝沢歌舞伎」という舞台作品です。

一般的な戯曲や舞踊などの舞台芸術は、演じる人を固定することを前提としていません。だから何百年も残る伝統芸能があるし、ずっと埋もれていたお芝居が人を変えて復活するということが可能です。個人としてこのお芝居はもうやらない・引退ということがありますが、お芝居自体がなくなることはない。音楽もそうですね。作曲家が死んでも、楽譜は残り、誰か知らないところで知らない人が演奏する。

翻って滝沢歌舞伎は、おそらくこの先、永久に上演されることがないと思います。これは「滝沢歌舞伎」というものが何だったのかという定義が曖昧であることも一因なのですが、「滝沢歌舞伎」という名前で何かが為されるということはこの先無いだろうと。その名前を冠する必要がありませんからね。

「変面」がどこかで復活するということはあるかもしれませんね。ジャニーズ主体の歌舞伎が演じられることはあるかもしれません。エッセンスは生き続けると思います、もちろん。でも「滝沢歌舞伎」のくくりで何かが演じられることは無いでしょう。

スノさんたちは18年続いた滝沢歌舞伎を、永久に葬る手続きを担わされたわけです。つらいですね。

制作発表の時やゲネプロ後の記者会見で、何となく私は違和感を感じていました。みんなチャラチャラしてんな〜って笑。滝沢歌舞伎の終わり、という事の大きさを考えれば(私の思い入れが強すぎるのですが)、もう少し神妙にしているべきなのではないかなと思ったのです。何が「かぶかせていただきます」だ、何が「タッキー、見てる?」だ、と少し苛立ちました。少しね。

観終わってから、あーあれね、葬式で妙にテンション上がってしまうやつね、と納得しました。いや、全然違うかもしれませんよ。彼らの心持ちなんて知る由もありませんから、一方的な想像でしかないんですけど、自分に引き付けて考えれば、元気なフリをして情緒不安定になって悲しいのか何なのかよく分からない状態になってしまうやつ、経験があるなあと。

ということに思いを馳せれば、今回の「滝沢歌舞伎ZERO FINAL」はこれ以上はないものだと感じます。まさに到達点と言って差し支えないでしょう。

対象が大きければ大きいほど丁寧で熱量のこもった「しまい」をかける必要があります。安んじていただかないといけないから。前編で「超高速回転走馬灯」って書きましたけど、まさにそういうことなんだと思います。「滝沢歌舞伎」が最期に見る夢。一緒に見ている私たち。

滝沢さんが事務所を去り、「滝沢歌舞伎」という看板を掲げて興行できることさえ危ぶまれた中で、18年間の集大成とも言えるべき演目を連ね、満員御礼の観客の前で追善ができたと考えれば、本当に良かった、と思います。

演出・Snow Manの意味

一方で、今回の滝沢歌舞伎では、前回までと全く異なる点がありました。演出・Snow Manというところです。私個人としては、ここに大変興味を持っていました。ど、どうなちゃうんだろう。

どうもなってない、というのが正直な感想ですかね。

私は一昨年の関ジャム出のスノ担なのですが、だだはまりした(と自覚した)のは「滝沢歌舞伎ZERO 2020 The Movie」を観たことがきっかけでした(詳細はこちら)。滝沢歌舞伎すごい良い!これぞ歌舞伎だし、伝統芸能や時代劇に繋がる希望があるし、Snow Manかっこいい、と思いました。

で、そこから2019年版のZEROを観た時に、なるほど滝沢歌舞伎なるものは大体の骨組みが決まっていて、マイナーチェンジを繰り返していくものなのだなと理解したのです。へー、これを毎年やるのか。

さらに遡って滝沢さん主演の滝沢歌舞伎、2016年版と2018年版を拝見して思ったのは「ZERO」ってなんぞ、ということでした。主演がSnow Manの9人に変わったこと以外は、そこまで大きく骨組みを変えていないと感じられました。なるほど滝沢演出はどこまでも滝沢演出。

いや、もちろん変わっているところもあるんですよ。それに百年以上筋書きを変えていない古典歌舞伎を好む歌舞伎ヲタが何を言う、と思われるかもしれません。もうほんと、それはそれとして棚に上げますすみません。

まあある意味「マンネリ」とも言えるコンテンツではあるものの総合的に感じたのは、やっぱり滝沢さんの熱量の大きさ、技術の高さです。もちろんダンスの技量や表現力ではスノさんの勝るところも多いのですが、日本舞踊の所作のひとつひとつは一朝一夕でできるようなものではなく、また、特に歌舞伎パートについては自らの表現としてこれを為さなくてはいけないという強い思いが滲み出ていました。

今回スノさんたちが演出を担当しましたが、「スノさんたちが本当にやりたいもの」であるのかどうかはちょっと分からない、と思いました。いえ、「やりたいもの」ではあると思うのです。偉大な先輩の残した数々の演目だから。いつかあんな風にやりたいとずっと願っていたものではあるはず。でもそれを超えて表現したいものがあったかどうか。

従って何かがすっごく大きく変わったかといえば、そうではないという印象です。悪評・好評に関わらず「まじで?こんなことすんの?」という演目があってもいいような気もしたのですが、昨年までを踏襲、というか逆に巻き戻ってるというか、大きく枠を外れたものはないと思いました。

これってね、滝沢歌舞伎って何なのかということ、そしてZEROって何なのかということ、さらに演出家が変わるということはどういうことなのかを、整理しきれてないからなんじゃないかなと思うんですよね。本当に勝手な想像ですが。

そんな時間、なかったと思う。正直。

加えて、上で述べたようにこれまでの集大成としての滝沢歌舞伎に舵を振り切ったのではないかと考えられるので、ここで何か大きく冒険するような選択は無かったのだと思います。

っていうのが、ちょっと残念です。俺たちの滝沢歌舞伎、見せてやんよ!って期待してた。滝沢歌舞伎のリソース(例えば新橋演舞場という場、これまで培ったノウハウなど)を使えば、もっと違うこともできたような気がしてなりません。

ひとつ変わったことがあるとすれば一幕ものになったことなんですけど、前編でも書きましたがこれの意味がまだ分かってないんですよね・・・ライビュ前提だったから?やっぱり仕事が忙しかったからだろうか。

というわけで長々と書いてしまいましたが、滝沢歌舞伎の幕引きとしては良かったが、初のSnow Man演出としては物足りなかったというのが結論になります。

どういう形でスノさんたちが演出をしていったのか、誰が何を担当したのかなど、今後明らかになるといいな。で、私が考えていたことが全くの見当違いであれば、それはそれで嬉しいなと思ってます。

これからについて

以前のSANEMORI評の後編でも書きましたとおり、宮舘さんは歌舞伎的なものと完全に離れてしまうことはないのではないかと考えています(歌舞伎側が離さないように思う)。兼任の歌舞伎ヲタとしてはそこを拠り所に、また新しい驚きや感動を見せてもらえるといいなと願っています。

他のメンバーがどうなるかは分からないけれど、また新しい枠組みで舞台上で活躍する方がいらっしゃることを期待していますし、その時発揮されるスキルや経験値は滝沢歌舞伎で培ったものもベースとなるでしょうから、楽しみです(別に歌舞伎じゃなくてもいいのです)。ただラウールが制作発表で言ったように、この先9人が一緒に舞台に立つということは難しいように思います。舞台、狭いもんね・・・。

そうだ、これを言っておかなくては!IMPACTorsの皆さんが今回一座されなかったのは返すがえすも残念でした。色んな事情がおありでしょうが、一緒に幕引きしていただきたかったですし、もし参加されていたら演出も違うものになったかもと思わずにはいられません。言っても詮無いことですが。彼らは彼らで新たな挑戦があるはずなのでそれを見守りたいと思います。そして、舞台上でめちゃくちゃ頑張ってたあの時の姿を忘れないよ、と伝えたいです。

うだうだと書いてまいりましたがこの辺りで終わりにしますね。もはや舞台の感想でも何でもなくて失礼しました。私にとっても滝沢歌舞伎について書くのが最後なのかもしれん、と思うとうだうだしてしまいました。

「桜の花は散るのではなく舞う」のですが、その花が親とする樹はとうにないということが如実に感じられる2023年の舞台でした。

さよなら、滝沢歌舞伎。


とかカッコつけてみたけど、ライブビューイングも当選しましたので行きまーす!そこで何かまた新たな発見があれば書きますね!!

お読みいただき、ありがとうございました。

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