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いつものコンビニ

今日の現場はまだお若い女性だった。
抗がん剤の影響で頭髪がなく、ウィッグをつけていらした。

だんなさま、息子さま、故人さまのご両親、ご親戚の方々に、ご友人たち。
だれもが涙を流していたように思う。

いつのことだったか、医師の兄を持つ友人が「がんほど優しい病気はない。だって死期が予見できるのだから」といわれたとおしえてくれたけれど、やっぱり若くして亡くなる方の現場はつらいものだ。

すべておわって喪主さまにご挨拶をして下がろうとした時、「あの、いつもあそこのセブンイレブンにいませんか?」と声を掛けられた。「よく見かけていて、多分そういう仕事をされているんだろうなーと思っていたけど今日お会いできました。」と。

まさに、、大体の現場の中間地点となる場所なので頻繁に訪れているコンビニだった。

そこでふとおもいだした。
今喪主としてこの葬儀に立ち会っているこの男性に、そのコンビニで話しかけられた時のことを。

きっとその時はすでに奥さまのご病気のこともわかっていて、いつかは。と覚悟されていたのかもしれない。
それが今日になってしまったかとおもうと、かえす言葉も出てこなかった。

あのとき、そしていま、どんな気持ちでいらっしゃるのだろうと。

そして自分に出来ることのすくなさを感じて、なんともいえない、くやしいのかくるしいのか、そんな気持ちになった。

でも、なにをいってても一朝一夕にに身に付くものではなし、できることをやっていくしかないんだろうなぁともおもった。

また、お目にかかれますように。

おくり化粧師 Kao Tan


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