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そこにいること

昨日急に入った現場は、ご遺族さま立ち会いなしの着せ替えでした。
「警察下げ」と言われる、何も身につけていない裸のままグレーのビニールシーツに包まれた状態で安置台に横たわる故人さま。
こちらで用意した下着(オムツ)をお付けして、そこから白の仏衣と紫の羽織をお着付けしていきます。
お着物(仏衣)のお着付けがおわり、足袋、脚絆、手甲といった旅支度を整えていると、式場スタッフの方が様子を見にきてくださり「今日はひとりでさみしいね」というような事をおっしゃっていかれました。
その場では「そうですねぇ」なんてちょっと苦笑まじりに返したのですが、心の中では「そんなにひとりでもないんだけどな」とこっそりおもっていました。

立ち会いのない施行の場合、わたしはよく故人さまに話し掛けています。
もちろん返事がかえってくることはないのですが、含み綿の時や着せ替えでお身体を起こす時は「ごめんね、いたいよね。ちょっとがんばってね」とか「ちょっと手伝ってくださいね」とか。
お顔剃りやお化粧の時は「きれいにしましょうね」とか「すっきりしましたね!」とか。

まちがいなく亡くなっている方ですし、元々面識があるケースはほぼないです。
介護の時のように関係が継続していくことも反応がかえってくることもないのですが、そこにいるのは「人」なのです。
生者としてあつかっているわけではないけれどひとりっきりという感じもそんなにしない。
つきつめて考えると不思議なのかもしれませんが、とても不思議なバランスで自然にそこに関わりがある。

聖人のように清らかな心でおだやかになんでも受け入れたりすることは出来ませんが、時にとまどいながらも目の前の方と向き合い自分にできることをやっていく。
そんな風に関わらせていただける今のお仕事を大切にしたいなぁとあらためておもいました。

また、お目にかかれますように。

おくり化粧師 Kao Tan

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