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NASを使い続けるという損失

こんばんは、おくさんです。
今日も今日とて、うだるように暑い毎日。
朝から30度って何だよ。

前置き

こんなに暑いと、HDDの具合が気になりますよね?
(注:暑いとHDDは壊れやすくなります)

エアコンも効いてない部屋の片隅で、ひっそりと重要なデータを溜め込んだNAS(Network Attached Storage)が人知れず壊れてデータごと死んでいく。
で、だいたいそういうNASはRAIDもなく、死んで初めて社員が慌てるという、見慣れた光景です。

そんな事にならないように、最初からクラウドサービスに預けておいたほうが絶対にいい
素人が雑に管理するより、プロに任せた方がいいに決まっているじゃないですか。

しかし、そんな言葉も上司には通じない。

「現状でも動いているから、ヨシ!」

ヨシ、じゃねぇよ!

忙しい人のための結論

なくなった場合、事業に影響が出る情報を保存するのであれば、素直にクラウドサービスを検討しましょう。

具体的には、保存したデータが
「クラウドサービスの6年分の利用費 × 10」
よりも価値があるなら、クラウドサービスの方が良いです。

表向きの費用

共有ストレージとして「4TB」くらい欲しい場合を考えてみます。
画像とかがない会社なら、多分そんなにいらない。

バッファローの「LinkStation LS220D0402G」が、4TBで22,275円
バッファローの「LinkStation LS220D0802G」が、8TBで36,294円
もっと今風な機能を使いたいなら、QNAPの「TS-251B-2G」にWESTERN DIGITALのHDD「WD Red WD40EFRX-RT2」を2つつけて¥31,800+¥14,892 x 2 で、61,584円でもそこそこのができる。


対してクラウドサービス。
従業員が20人いたとする。

Googleで「G Suite Business」は容量無制限ながら1人1,360円/月で、
年間326,400円
1人あたり30GBの「G Suite Basic」でも1人680円/月で、
年間163,200円
Dropboxなら「Standard」で容量3TBで1人1,5000円/年、
合計で300,000円。

できることが圧倒的に違うので、単純比較するのは間違い。
しかし、この圧倒的な価格差に上司の目が眩んでしまうのは明らか

ランニングコスト

社内で動かしている以上、ランニングコストがかかってきます。

まずは電気代。
先人が参考になる情報をくれたのでそれを参考にすると、「LinkStation LS220D0802G」が48Wなので年3000〜6000円くらいで収まる計算。

この機種の最大消費電力は24Wだそうです。
電力量料金を1kWhで20~30円と仮定すると、24hフル稼働させた場合は年間でおよそ四千~六千円くらいということになります。
(もっとも、最大消費電力はHDDのスピンアップ時のわずかな時間でしょうから、これは非現実的な試算です)
この手のデバイスはアイドルでは10W未満がトレンドのようですので、その1/2~1/3くらいに収まるかと思います。

https://bbs.kakaku.com/bbs/K0000552483/SortID=17058661/

あとはスペースですが、そんなに大きくないNASならそこまで問題にならないかと思うので、パス。
(オフィスの整理などを考える時にはとことん邪魔になりますが。)

近代化のコスト

最近の流行りに乗ってリモートワークとかやりたくなった場合。
NASは致命的にコストが跳ね上がります

安全性を保ってアクセスするのであれば、VPNによる接続が候補に上がるかと思いますが、費用的にも技術的にもハードルが高いです。

グローバルIPアドレスを取得し、VPN接続可能なルータを購入・設定し、各端末にVPNクライアントの設定を行い…

外注したら、結構かかりますね…
下のサービスだと、端末購入と初期設定で15万円、月額5800円。

https://www.arteria-net.com/business/service/intranet/remote_access/multiremote/

また、NASの機能としてグローバルアクセスの方法が提供されている場合がありますが、セキュリティ面で問題がないか確認が必要です。
(昔見たのがセキュリティ的にリスクしかないものだったので…)

故障率

ストレージサーバのお世話をしたことがある人はご存知かと思いますが、HDDは結構壊れます

2013年と古いデータではありますが、Backblaze社によると、HDDの寿命の中央値は6年となります。
これは「6年でHDDの半分は壊れる」という意味で、必ずしも6年で壊れることは意味しません。

(なお、現在は品質が向上しているので、故障率はこれよりもかなり下がっています。参照先では1年目の故障率は5%ですが、最新のレポートでは1%付近の製品が多くあります。)

もっというと、静かなデータセンターでなく、
振動がありホコリ舞うオフィスで動かしている場合、
寿命は短くなる傾向があるかと思います。

(注:RAIDは考慮していません。
 ただ、この想定だとHDDはおそらく同一ロットなので…)

故障の被害

そして故障した場合の復旧ですが、HDDだけ交換かNASごと買い替えかは故障内容によります。
その場合は上の説明通り、HDDなら現行と同スペックのものを買って15000円ほど、NASごとなら新型を買って30,000円〜60,000円の範囲。

ただしここに以下のような作業が加わると、表面上は見えない労働力という名のコストが大量に発生します。

・設定変更
・データ移行
・社内への変更通知
などなど

中小企業の従業員あたりの売上高を平均値の年4500万円(参照:中小企業白書 2016年版)とすると、1人が3営業日を復旧に費やした場合、それだけで53万円の売上損失となります。
4500万 × 3日÷(365日ー113日)= 53.6万円

肝心のデータ復旧ですが、リカバリサービスは案外お手頃。
Google広告にでてきた会社では、40,000円かからないらしいです。

とはいえ即座に直るわけではない。
即日対応とは言っても、業務は滞る。

しかも、壊れたものが確実に治る保証はありません。

データ復旧依頼件数 5585
復旧成功 4621

上のサービスでの復旧成功率は82.7%

おうジョニー、専門家に頼んでも2割近く復旧できないんだってよ!

データ損失に対する被害

さあ、では復旧できなかった場合に何が起きるか?

もちろん、業務データがなくなります。

消えた範囲によっては復旧が可能かもしれませんが、致命的なデータがリカバリできなくなる可能性は十分にあります。

イメージしてみてください。

・納品前の制作物
・締結済みの契約書
・蓄積してきた顧客データ
・溜め込まれたノウハウ

これらが明日消えて無くなったとしたら?
おそらく、少なからず業務が滞る事になります。

業務影響の程度によっては、会社の信用問題や賠償問題にも繋がります。


え、クラウドサービスは安全なのかって?

そりゃ、
素人がコストをかけずに用意するものと、
データ管理の専門家集団がセキュリティを考慮して用意したものなら、
どちらを選ぶかというお話になるかと思います。

例として、Googleのポリシーを見てみましょう。
通信から物理セキュリティ、分散バックアップまで非常に厳重です。


全体的なコストを比較

見てきていただいた通り諸々ありますが、概ねNASがローコストなのは事実です。

初期設定の人件費を雑に3万円くらいと見積って、電気代を年6000円として6年動かして36,000円、NAS本体と合わせても15万円いきません。

なんといっても従業員数に依存して費用が増加しないので、純粋に初期費用しかかかっていないように見えます。
そして実際、廉価なNASでも同時接続数の上限は50くらいあるので、一応動きます。
(注:BUFFALOのカタログスペック。3割引くらいに見た方がいいと思いますが。Linuxで構築してSMBの設定を弄れるなら1000以上でもいける。)

ではNASでいいのでしょうか?

いいえ、上の計算は「変化への対応コスト」を含んでいません。

・拠点数が増えた場合
・ストレージ容量を増築したい場合
・機器が故障した場合

会社組織は生き物で、
明日何が起きるかは完全に予測できません。

2年に1度大きな変更があり、その度にエンジニア1人が1週間(5営業日)かかりきりになると想定すると、6年間で268万円の売上が失われます。
4500万 × 5日÷(365日ー113日)= 89.3万円
(参照:中小企業白書 2016年版)

増築や移行であればまだいいですが、故障などのトラブルがあればもっと被害は大きくなります。

NASに保存したデータと、そこに紐付く業務の価値。
あるいは、この先拡大した時の価値。

Googleで「G Suite Business」は容量無制限ながら1人1,360円/月で、従業員20人なら年間326,400円。
6年で1,958,400円

HDDの故障確率は6年目で50%、復旧できずデータを失う可能性は20%。
そのためこの場合、NASで保管するデータ6年分の価値が 2000万円以上あればクラウドサービスを検討した方が良い。
1,958,400 ÷ (50% × 20%) = 1,958,400 ×10 = 1958.4万円

従業員数20人、従業員当たりの売り上げが4500万円の企業で、事業データ価値が2000万円以下の可能性って、なかなかないと思います。
(どうやって儲けてるんだ一体)

注:
この計算では、RAIDなどによる冗長構成は考慮していません。

HDDの数を十分に増やし、RAID6とかRAID Zとかを組んで、劣化したNAS・HDDを定期的に交換するなどすれば、データの損失リスクは下がります。
まぁ、その分だけ運用コストが高くつくため、よほどの理由がないクラウドサービスの方が良いかと思いますが。

あと、NASの初期HDDはおそらく同一ロットなので、RAID組んでても同時に壊れる可能性が微レ存…

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