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「海は青い」と言えるか

「あなたが見ている海は何色ですか?」という問いに「海は青いです」と僕は答えることができなかった。

海というのはただの比喩で「あなたはどう思いますか?」という日々遭遇する問題に対して、自分が考えている答えを提示することができなかった。それは、間違えたら恥ずかしいという自尊心を守りたかったのかも知れない。完璧な自分を演じたかったからかも知れない。学校では常に答えがあったから。

前の僕は「あなたが見ている海は何色ですか?」という問いに対してこう答えていた。

「その海は青い可能性があります」

「皆さんは何色に見えますか?」

こう答えると何が起きるかというと、僕に様々な意思決定が回ってこないようになる。自分からしてもふわっとした回答しかしない人に、大事な意思決定を任せたくないと思う。このままではずっと僕に意思決定できる役割は回ってこない。そういう危機感があった。ずっとふわっとした存在でいることもできた。でも、ちょっとだけ勇気を振り絞ってこう答えるようにした。

「海は青いと僕は思います」

ちょっとしたことかも知れないけれど、こういうようになってから意思決定を任せてもらえる機会が増えたように思う。社会に出たら、答えなんてないよと大人たちは言っていたけれど、確かにそうだった。自分の考えをちゃんと伝えるけれど、実際は間違えていることの方が多い。だけど、「海は青い」と言うようになってから仕事が楽しくなった。


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