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Pavement来日するらしいからセトリ妄想して語る

ペイヴメントが13年ぶりに来日する。
来日公演決定は2022年4月のニュースだったが、もう公演1週間前だ。そしてチケットは特に売り切れていない。12月には前座テコ入れとしてDYGL、ミツメがサポートアクトに決定したが、まだ微妙に売り切れていない

昨年のPrimavera Soundでの演奏は素晴らしかった。しっかりユルい、しかし割とパワフル、齢55ですこし枯れ、いや全然いまだ”したり顔" 。締まりのない、まさにペイヴメントだった。

チケットが完売しないのもそれはそれで面白いけど、せっかくの機会、彼らの年齢的にもここまで充実したライブを演ってくれるタイミングは真面目な話もうないかもしれない。やはり盛り上がってほしい気持ちはある。みんな買おう!

なんといっても2022年11月で一度ツアーを切り上げた彼ら、年を跨いではこの2023年2月東京が再スタートである。絶対仕上がっていない。最高の予感しかない。


ということでこの記事は、そんなPAVEMENTの魅力や功績を紹介する……記事ではない。そういう記事はもう沢山ある。自分ですら10年前に書いている。要は80年代カレッジ・ロックの波を引き継ぎつつ、The Fallらの無骨なポストパンクと批評感覚・距離感でもって、①グランジという大爆発を脇道から「なにやってんだ?」と醒めた視線で見つめたスタンス、②大文字のROCK全般を皮肉りつつユーモラスに鳴らし替えたポップセンス、③"カッコいいロックバンド"を演るために大切なネジが明らかにいくつか抜けたバンドサウンドの妙(ローファイ、オルタナ)、④御託はともかく普通に良い曲、とかそんな所である。この4つが今日に至る「インディ」の確かな道標となったりならなかったりした。

でもこの記事はそんな話がしたいわけではない。

これは「いうてPavementのライブなんてそこまで期待するものでもないっしょ苦笑」という体でいたがその日が近づくにつれ正直「Pavementのライブついに見れるんだ!嬉しい~~」となってきてる自分が、復習もこめて「こんな曲やってくれないかな~~~」という気持ちをセトリ妄想に込めて垂れ流すものである。今では失われてしまったが往年のYahoo!ブログの個人ファンブログのノリである。芯食った言説や着眼点はない。

この記事を読んで分かることは「その辺にいる1リスナーのPavementさんの好きな所とセトリフェチ」です。来日前のちょっとした酒のツマミになれば幸いです。Go!!

・「スティーヴン・マルクマス」を適宜「SM」と略します。
・Pavementとペイヴメントの2つを気分と文の流れで並記します。


本編

聴きかえしながら選んでみて気づいたが、素直に何を演られてもうれしい。これは好きな曲ランキングではない。今回たまたま頭に浮かんだ25曲について書きだそうと思う。

 01. Silence Kid

 02. Elevate Me Later

多くのファンにとって入門盤となったであろう名盤2nd『Crooked Rain, Crooked Rain』と同じ出だし。「ローファイ」だとか「史上最悪のライブ」だとかの看板からPavementに入った自分(おそらく多くのファン)にとって、この2曲のファーストインパクトが割とこのバンドの全てみたいな所があるんじゃないかと思ったりする。要は「Silence Kid」の出だしである。あまりにフヌけた音。往年のロックンロールを燻製して珍味化したようなダラけたグルーヴ。半笑いで恍惚を演じるようなマルクマスの「♪ ハァァ~~~⤴⤴」。そこから妙に人懐っこいメロディが来る謎のコンビネーション。

続く「Elevate Me Later」が普通に良い曲で、しかもこっちは何だかちょっぴり「切ない」感じもある。今風に言うと「エモい」の成分が20%くらい確かに含まれている。

どこまでマジなのか分からない。けど、人を食ったような魅力。やっぱりPavementに入るならまずは2nd『Crooked Rain, Crooked Rain』を推したい気持ちがある。


 03. Shady Lane

これはSM印のグッドメロディ代表曲。大御所・大ベテランバンドのライブは、開幕から名曲ラッシュで「アカン、めっちゃ良いやん……」となりたい気持ちある。知らんがな(1)。2ndと同様に4th『Brighten The Corners』も入門に向いたアルバムだ。2ndよりメロウで、パロディやオマージュよりもPavement印のポップセンスが炸裂している好盤。「Shady Lane…everybody wants one」のところでBmM7のテンションノーツにふれてアンニュイな切なさを響かせているのが匠の技。

 04. Transport Is Arranged

ムーグみたいなシンセに始まり、如何にも浮ついた甘いバラードと思わせたところで間奏、楽曲のネジをゆるめて部品が空から墜落していくような展開のダイナミクスがやばい曲。

「A voice coach taught me to sing. He couldn't teach me to love. (ボイストレーナーは僕に歌うことを教えてくれた……愛することは教えてくれなかった)」とかいうやけに演劇チックかつ1mmも心に思ってなさそうな歌詞もすき。


 05. Grounded

 06. Rattled by the Rush

 07. Grave Architecture

そのままPavementバンドサウンドの神髄ラッシュ。Pavementは初期音源の印象とそのナメてそうな姿勢から「ヘタウマ」「ローファイ」の面をやたら強調されがちだが、実際のところPavementのグルーヴを出すことに関しては右に出るものがいない実力派である。(とはいえもう少し練習したら詰められるだろう技術的な点も多いので、ファンは親しみを込めてヘタウマなどというのである。)"ガチで下手なだけ"ではないことを改めて書いておこう。

3rd『Wowee Zowee』は今では最も評価が高い1枚に名乗り出てるみたいだ。その文脈は詳しく知らないけど、バンドサウンドの妙が一番でてる一作だと思う。タルい ≒ 重い演奏は「ダルさ」の具現でもあって、「もういいだろ」みたいなくたびれた曲が多いのも好きな理由のひとつ。スルメ盤であり無二の傑作。

「Grounded」のイントロは錬金術みたいに魔法の輝きをもっている。この輝きと、逆にジリジリ照りつけるファズギターが並走するアウトロがたまらない。これはアスファルトのロードムービーである。


「Rattled by the Rush」は本当にタフ。つんのめっては急停止しながら微妙にブレる、酔拳みたいなグルーヴ。素っ頓狂なオンボロギターソロはこのバンドのベスト4にはいる出来。全体的にコンブみてぇな味の曲。マジな話Pavementしか鳴らせない名曲で間違いない。ただライブでもこの感じを再現できるとは言っていない。

「Grave Architecture」に限らないけど、マルクマスとスコットのギターの掛け合いの呼吸は最高。リードとリズムの境界をあいまいに交差していて、独立した2本の線を描いたり、2つで1つみたいな独特の味が出ている。


 08. The Hexx / Type Slowly / Fin /  Stop Breathin / Starlings Of The Slipstream

第1エンディング枠。どの曲がきてもその演奏スケールが楽しみ。

このライブ盤「And Then (The Hexx)」は超カッコイイ。このへんで多分演奏後に一回「フォォ~~~⤴︎」みたいな声がするはず。俺から。


 09. Trigger Cut

ここで1stから。割とストレートなアップテンポのインディ・ギターロックで、初めて聴いたときからずっと好きな曲。この曲も「エモ味」が10%くらい含まれており、これはパンクとギターポップが「エモ」に合流する前の、つまりは「カレッジ・ロック」の味だと思う。

 10. In the Mouth a Desert

「Summer Babe」「Cut Yout Hair」あたりの存在感には一歩譲るが、90年代前半の空気を代表する名曲。クランチというか干からびたトーンから、雑音ギリギリのエレキギターが垂れ流し、搔きむしられる。乾いた空気感のなか「Ooh-ooh-ooh……」のハミングが心を打つ。『Slanted and Enchanted』が名盤扱いな理由はいろいろあるけど、この曲が何故だかものすごく「時代のリアル」を感じさせたのは大きいんじゃないかと思う。どうしようもなくダラしないおセンチ発露っぽいのに、同時に徹底的に乾いている。

義務として、親の顔より見たSMのサムネもおいておこう。


 11. Stereo

このバンドが好きな理由の一つに「パンチのきいたシングルを書く気がある」ことが挙げられる。「Stereo」は完全にカマしたるぜで作られていて、自分たちのパブリックイメージを把握して寄せた感がニクい。とうに過ぎ去ったグランジまで持ち出しなおしているが、散りばめられたアウトトーン含めて全部がキャッチーに還元されてる。The Pillowsが時々言う「オルタナ」のポップセンスはこういう曲を指すんじゃなかろうか。

思えば自分はPavementとSonic Youthに、和音にない音の濁流、聴覚を犯される快感を刷り込まれたんだ。ファズとかいうギタープレイ全肯定マジックが悪い。

にしても「ハイホー、シルバー、Ride。」だなんて、ここまでナメたBメロの歌詞は他に知らない。

 12. AT & T

SMの最高傑作。歌いだしの「Maybe somone's gonna save me.(たぶん誰かが俺を救うだろう)」以外なんの脈略も見いだせない言葉の羅列。虚無とナンセンスで正鵠を射るマルクマスの神髄。最後のシャウト絶対手抜きしないで叫んでほしい。10年前も書いたけどこの再結成後のライブ映像を愛してる。


 13. Unfair ~ Serpentine Pad ~ Conduit for Sale!

マルクマスがたまに作る「ヤケクソ」という名のハイテンション・(ポスト)パンクソングたちのメドレー妄想。「Serpentine Pad」は日替わり想定。

Pavementで忘れてはならない存在にBob Nastanovichがいる。多くのPavementフォロワーに足りないのは多分マルクマスでもスコットでもなく、ボブ(あるいはGary Young)だと思う。ガヤのひと。ボブがボブをやれる限りこのバンドはPavementとしてライブをし続けられるはず。

「Unfair」。要は「シャアアアアア⤴︎⤴︎⤴︎」を聴きたいのだ。バンドで演奏すると最高に楽しい曲。

「Conduit for Sale!」は音源だと「なんか風変りな楽曲だなぁ」って印象だけど、ライブでみれば分かるようにこれはハードコアパンクをキめるための楽曲。The Fallがいなければ存在しなかったのは疑いようがない(というかPavement自体が生まれなかった)。昔こんなツイートをしたがマジでわかる。



 14. Date w/ IKEA

Pavementで忘れてはならない存在にScott Kannbergがいる(2)。ギターはもちろん作曲貢献度も高く、「Date w/ IKEA」はスコットの代表曲のひとつだと思っている。おどろくほど爽やかなメロディは、バンドがバンドならギターポップとして調理されたであろう快曲。さりげなくも絶対聴きたいという気持ち。「Kennel District」でもヨシ。

Pavement解散後に発表されたPreston School of Industry名義『All This Sounds Gas』('01)あたりをも関連作としてオススメ。Pavementという歪んだ回路を通さなければこんな素直な出力になるんだという発見と、スコットの手癖と魅力が発見できる。

 15. Shoot The Singer

セットリストの佳境にちょっとレアな曲が来ると個人的にグッとくる。知らんがな(2)。本曲はGary Young在籍最終音源の名EP『Watery, Domestic』収録曲。おどろくほど真っすぐなギターロックで、例えばこんな曲が10曲はいっていればファーストは往年のカレッジ・ロックの文脈で名盤扱いされたんじゃないかと思う。シンプルにカッコイイ。

レアといえば、SMがバンドメンバーのSilver Jewsからのカバーもアリ。3rdが名盤とされているがファーストもオススメ。「Advice to the Graduate」とか良いんよ~。


 16. Gold Soundz

Paste誌によればPavementのベストソングであり、2010年発表のPitchfork誌によれば1990年代楽曲TOP200のNo.1。本編の後半はヒットラッシュを食らいたいし、そんな気持ちのトリガーを引くにふさわしいのはやっぱりこの代表曲。懐古の引き金をひきつつ、銃口をこちらに向けるのがSMスタイルだ。

Go back to those gold sounds
And keep my advent to your self
あのゴールド・サウンドに立ち返って一人で笑ってればいいさ

ジェネレーションXが感じていた、自身の将来への閉塞感と、自分の見知らぬ過去の栄光に対する違和感。「Gold Soundz」はそんな感覚を捉えていた。マルクマス自身がそんな空気を表現しようとしたかは分からないけども、頑なにメッセージ性――ロックにかこつけた大それた放言――を回避しようとするその意思には、似たような精神性を見出すことはできる(歌詞があいまいだった初期R.E.M.を「初めて自分と同じ言葉を語るバンドが現れたと感じた」と敬愛し、「Everybody Hurts」などと歌いだしたあとは曲中で「REM」を登場させてデッドボールを投げつけた)。

まぁそんな話は正直どうでもいい。
いつになくキラキラしたイントロ、哀愁を背に風を切っていくようなサビ。疑いようなきインディ(カレッジ)・ギターロックの名曲


 17. Cut Your Hair

バンド最大のヒット曲にして代表曲。永遠のインディ・アンセム。このイントロを聴いて2ndを手に取ったリスナーは数知れない。自分もそう。あまりに学生時代聴きすぎてたけど改めて自分の好きな要素が詰まりすぎててビックリした。この曲に"癖"を育てられている。間奏のトレモロピッキング熱すぎる。ぜったいウフフフーコーラスそして「No Big Hair!!」叫ぼうな。


 18. Summer Babe

ファーストの名声を決定づけた代表曲かつ永遠のインディ・アンセム2。いつきいても何でこのクソ単純な曲がここまで謎に感動的に広がるのか本当に分からない。ダイナミックな和音進行と桜井和寿の熱唱によるドラマに慣れたミスチル育ちには本当に不思議なんだ。

「ローファイ」というPavementの初期イメージを決定づけたのはこのギタートーンだと思うけど、この楽曲を決定づけているのはリズム隊のほうなんじゃないかなと最近思う。

ともかく当日は「you took them aaaaaaaaaaaaaaaaallllll」そして「summer babe!」合唱しましょう。永遠に。


 19. Fillmore Jive

パブリックイメージとなったペイヴメント的精神を最大限誇張してみせた代表曲。「グッナイ、ロックンロールの時代」。のちの足取りをみると、本当に挑発以上野心的なスケールの楽曲だと思う。お前らも放言するじゃねぇかとツッコめそうだが、大いそれて曲を広げれば広げるほど大文字の"ロック"をバカに出来るという無敵の構図。

3:25からのマヌケな叫びにつづくギターソロの入り、3回目のソロに群がる馬鹿らしい掛け合いを聴くと、人間が今まで積み上げてきた価値の全てが無意味に崩れ去っていくような清々しい気持ちになる。実際マジで虚無の感動を帯びた名曲。

この辺のSMスピリットは、ある人がみたら「冷笑」なんて言葉で括るかもしれない。実際それもあるだろう。でも一番は「一体何をやってんだ?」コレだと思う。



-----Ecore 1-----

 20. Spit on a Stranger

ここまで『Terror Twilight』曲をほとんど選出していないのは、もちろん名曲は数多いけれど、やっぱり本作だけ少し"違う"アルバムだと感じるからだ。でもこれだけは聴きたい。だからアンコール1発目にサラッとおいてみた。知らんがな(3)。

この名曲について今更なにかをペチペチと書き連ねる気はない。ただ自分は「you high...high...high」の裏声を聴くと涙がでるように出来ている。

 21. Pueblo / Black Out

『Wowee Zowee』からどちらか。「Pueblo」は野心的すぎた「Fillmore Jive」を自身の掌サイズに納めなおした佳曲。この辺はこう、日替わりでさりげなく網羅してほしい。

 22. Zurich Is Stained

個人的に絶対外せない1曲。たぶんディスコグラフィの中でも最もセンチメンタルな曲のひとつ。「チューリッヒは汚された」、ファンはチューリッヒ=スイス=中立とみて解釈を試みたりしているが、自分はこのアンニュイなイントロと「俺はそんな強く歌えない そんな強さは俺にない」と続く歌がすべて。Shala la la la, la, la la la la………。


 23. Range Life / Here

演らないとイカンでしょという2曲。でもあえてこの辺は1日で網羅しない感じにしてほしい。そして「何で自分の日にこれ演らなかったんだよ」と言いたい。知らんがな(4)。ところで上のライブは名演である。

 24. Half a Canyon

代表曲とは違うが、SMの趣味が全開になってる曲。いつになくブルージーなセッションが、The Doors + Neu!つまりStereolabに飲み込まれたまま脱線し暴走する。アンコールの締めに相応しい圧倒的な狂演が聴けるはず…………たぶん。



-----Encore 2-----

なんだかんだで勿体ぶりながら2回くらい出てきてほしい。最後かもしれないだろ?全部やれ。

 25. Frontwords / Box Elder

ダブルアンコールの最後に、ファンお馴染みの初期代表曲をサラッと披露するセトリにグッッとくる。知らんがな(終)。でもこの前のPrimavera Sound 2022、逆に初手が「Frontwords」だったとき、それはそれでグッッッときた。大団円。



 終演BGM:Carrot Rope - SM Demo

終演BGMなんて流れるのかよという話だが流れるならこれがいい。「…And Carrot Rope」はPavementが終わるならこれしかないという名曲だし(Sonic某Youthと違って本当に完璧なバンドのカーテンフォールだ)、すごく聴きたいけども、あえて演奏は封印してほしい。知らんがな(アンコール)。

ということでこのデモ音源を流してほしいのだ。これ、伝わるか分からないけど本当に泣ける。自分が感じる、SMの奥底に1%くらい通底している僅かなセンチメンタリズムの全てがここに宿ってる。この音をバックに少し涙堪えながら規制退場したい。

ところで自分は『Terror Twilight: Farewell Horizontal』のリリースにさいしナイジェル・ゴドリッチ案の曲順を公式が音源に採用したことをふつうに許していない(バンドが最終決定したように本作はSpit on a Strangerで始まって…And Carrot Ropeで終わるべき作品だろうと。それをサブスクのカタログ一番上に公式音源化しちゃって、この曲順で入るリスナーがいると思うと、プレイリスト公開くらいに留めてくれよとか……。)。そんな気持ちのファンはそこそこ居るのでは。でもまぁ、超力作たる下の記事を読むと溜飲を下げられます。


ということで謎の記事でした。
チケットが売り切れますように。来日が楽しみ。

最後に関連みたいな何かを置いておきます。

Pavementがカバーしている曲のカバー(ややこしいが原曲ではない)。

元祖・宅録&ローファイの奇才。どこまでマジか分からない感覚ふくめて世代は違えど近い。最高の1枚です。

さらに何か読みたいひとがもしいたら。

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