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有機ELの新規化合物

スマートフォンのディスプレイに、有機ELが続々と採用されています。画質が良い、軽くて薄い、バッテリーの持ちが良いなど、有機ELにはスマートフォン向きの特性がいろいろあるからです。

有機ELは、有機エレクトロルミネッセンスの略で、電子によりエネルギーを得た有機分子が光を発する原理を利用しています。文字通り、有機化合物が技術の中心に存在しており、高分子系と低分子系に分かれています。

より発光効率が高く耐久性の高い有機EL化合物を求めて盛んに開発が行われており、多くの特許が出願されています。今回はその中のひとつ、特開2020-183372「縮合多環化合物及びその製造方法と用途」をご紹介します。

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出願人の寧波盧米藍新材料有限公司はNingbo Lumilan の名前で2017年に創業した新興企業です。リクルートのページを見ると有機合成屋をたくさん募集しています。

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創立時の写真を見ると、韓国LGとのつながりをうかがわせます。

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私は有機ELの専門家ではないので、この特許が有機ELの中でどのような位置づけなのかは不明ですが、中身を見てみると、こんな分子が例示されています。

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合成ルートでは、パラジウム触媒によるカップリング反応が活躍しています。

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注目されるのは目的化合物にある重水素(D)です。機能性物質で重水素を意図的に導入している例は珍しいと思いますが、有機ELの世界では寿命の向上にために、重水素置換が活用されているようです。

有機合成の力が、皆さんのスマートフォンの美しい画面に活かされているのです。

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