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真因は何か

歯科クリニックと連携した口腔ケアに取り組み、差別化を図っている訪問看護ステーションの社長の話。口腔ケアの改善により患者(利用者)QOLが画期的に改善した事例はたくさん報告され、注目されている。この視点からいえば社長の目の付け所は素晴らしい。が、複数の事業所の内、歯科クリニックが近くになく連携できない事業所は大幅に営業黒字。連携している事業所は大幅営業損失。これが影響して法人全体は3期連続の赤字。
どうなっているのか、社長の悩みは大きい。私は社長の思いと、各事業所の業務内容を詳しく聞き取りをした。大幅黒字のステーションは近くに競合がなく、しかも対応が丁寧なことが地域に評判を呼び、ケアプランをつくるケアマネからの評価も高く、かなりの遠方の依頼が舞い込んでいるとのこと。
赤字の事業所では色々手を打って来たが上手くいかないのだと言う。私は、その事業所の問題を色々と社長から聞いた。確かに地域のケアマネと繋がりを持ってアピールしたり、介護事業者の勉強会にでたり様々な努力をしていた。
私はふと思うところがあり、率直に聞いた「事業所長と上手くいっていますか」、すると社長は顔をこわばらせたが、直ぐ意を決したように「実は上手くいっていないんです」と話してくれた。
その後、社長は堰を切ったよう話し始め、事業所長がいかにケアマネにも職員にも酷いのかを話し始めた。社長が対策を打っても、所長がそれを生かそうとしないのだと。
私は何故その方に所長を降りてもらわないのかを問うと、所長は仕事上の力量はあり、今は買い手市場で辞められたら困ると考えていた。
実際の言いようはもっと丁寧に話しましたが、要は、その方が辞めてもいい、という覚悟を持って社長の思いを率直に言うべきではと話しました。
その後、社長は所長に所長を降りて欲しいと話し、結果として所長は辞めることになりました。しかし、新しい所長の下、社長とのコミュニケーションは良好で、口腔ケアの強みを積極的に訴求し、地域に浸透すると共に、事業所の売上は伸び営業黒字までもう少しまで来ています。 また地域からの情報を得た自治体からは口腔ケアと連携する訪問看護ステーションのモデルケースにしたいので、自治体としてバックアップしたいとの申し出もありました。事業所会議では様々な前向きな提案も出るようになりました。法人全体も今年度当初から黒字基調になり、今期は黒字の予測です。
この会社の一番の問題は社長、所長のコミュニケーションにありました。ここを避けず正面から解決に取り組んだことで、よい流れになったと言えます。ベテランや幹部職員とのコミュニケーションの問題は中小企業にはよくある問題ですが、ここを避けていると、命取りに発展する場合があります。問題の真因を明らかにすることは難しいのですが、澄んだ目で見ることが大事だと思います。

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