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スマスイのラッコ変遷

神戸市立須磨海浜水族園は、通称スマスイと呼ばれ、多くの市民から愛されてきました。
1987年に今のスマスイがオープンし、開園の目玉としてラッコが導入されました。
そこから30年以上もの間、スマスイでは絶えることなくラッコの飼育が続けられてきました。
2021年にスマスイのラッコ館やイルカライブ館などの施設が営業終了しました。
最後までいたラッコ、明日花とラッキーは、鴨川シーワールド(鴨シー)に移動し、そこで亡くなりました。
この記事では、「神戸市立須磨海浜水族園60周年記念誌」ほかをもとにして、スマスイのラッコ変遷について書きたいと思います。

登場するラッコ

スマスイで飼育されていたラッコを個体別にまとめました。
誕生・死亡年ではなく、スマスイで飼育されていた年を書いています。

  • (愛称不明)♀ 1987

  • サリー♀ 1987~1995

  • メアリー♀ 1987~1997

  • チャッピー♀ 1987~2003

  • チャーリー♂ 1987~1989,1989~2001

  • スマコ♀ 1987~1991,1992~1993

  • チャサリー♀ 1988~1991,1992~1994

  • フジ♀ 1994~2003

  • トニー♂ 1994~1996

  • ココ♀ 1996~1998

  • トコ♂ 1996~1997,1998~2014

  • ララ♀ 1996~1997

  • パール♀ 1998~2013

  • 明日花♀ 1999~2021(鴨シーで2022に死亡)

  • パコ♀ 2002~2007

  • カンナ♀ 2003~2005

  • ミィー♀ 2007~2009,2012

  • クータン♂ 2009~2012

  • ラッキー♂ 2012~2021(鴨シーで2021年に死亡)

登場人物(ラッコ)は出揃いました。本題に入ります。
スマスイのラッコ変遷を時系列順にまとめました。

1980年代 国内水族館でラッコの飼育が始まる

1987年(スマスイ開園)

5月10日 スマスイの前身である須磨水族館が閉園
同日 4頭のメスのラッコをアラスカから導入 (スマスイのラッコ数0→4)
5月13日 1頭が到着3日後に亡くなる (ラッコ数4→3)
残りの3頭はサリー♀メアリー♀チャッピー♀と名付けられる
7月16日 須磨海浜水族園 開園
11月1日 チャーリー♂(1歳) バンクーバー水族館より来園(神戸・シアトル姉妹都市提携30周年記念として) (ラッコ数3→4)
11月10日 スマコ♀誕生(母:メアリー)(メアリーは導入時に野生下で妊娠していた) (ラッコ数4→5)

1988年

6月9日 チャサリー♀誕生(父:チャーリー、母:サリー) (ラッコ数5→6)

1989年

4月 チャーリー♂(3歳) 繁殖のため鳥羽水族館へ貸出(ラッコ数6→5)
10月 チャーリー♂ 帰園 (ラッコ数5→6)

1990年代 ラッコブーム全盛期

1991年

5月 スマコ♀(3歳)、チャサリー♀(2歳) 繁殖のため新潟市水族館へ貸出(ラッコ数6→4)

1992年

3月 スマコ♀(4歳)、チャサリー♀(3歳) 帰園 (ラッコ数4→6)

1993年

4月2日 スマコ♀(5歳) 早産による心不全で亡くなる(チャーリーとの間に子を産んだが死産) (ラッコ数6→5)

1994年

3月9日 チャサリー♀(5歳) 繁殖のため太地町立くじらの博物館へ貸出
同日 フジ♀(6歳) 繁殖のため同館より借入 (ラッコ数5→5)
10月2日 トニー♂ 誕生(父:チャーリー、父:メアリー) (ラッコ数5→6)

1995年

1月17日 阪神・淡路大震災
ラッコ館は大きな被害を免れたが、取水設備の損壊により新鮮な海水を補給できない状況に陥った。
他園館への移動も視野に入れ対応を検討する中、19日に復電、20日には何とかラッコ館へ海水を供給できるようになった。
当時6頭いたラッコ(チャーリー♂、トニー♂、サリー♀、メアリー♀、チャッピー♀、フジ♀)は無事
10月9日 サリー♀ 亡くなる (ラッコ数6→5)

1996年

3月14日 ココ♀(推定6歳) 新潟市水族館より繁殖のため借用(スマスイと新潟市水族館は同年に姉妹園館提携を結び、ココは震災復興の親善大使として来園した) (ラッコ数5→6)

12月 トニー♂(2歳) 繁殖のため新潟市水族館へ移動
12月3日 トコ♂(2歳)、ララ♀(推定6歳) 繁殖のため新潟市水族館より借用 (ラッコ数6→7)

1997年

3月18日 トコ♂(3歳)、ララ♀(推定7歳) 繁殖のためかごしま水族館へ移動 (ラッコ数7→5)
12月11日 メアリー♀ 亡くなる (ラッコ数5→4)
同年、シアトル市民よりラッコの彫像“プリンス・ウィリアム像”が贈られる(ラッコ館の入り口に設置されていた)

この時点のラッコ:チャーリー♂、チャッピー♀、フジ♀、ココ♀

1998年

5月13日 [かごしま水族館にて]ラッキー♂誕生(父:トコ、母:ララ)
10月3日 パール♀(推定3~4歳) アラスカより導入 (ラッコ数4→5)
11月18日 ココ♀(推定8歳) 新潟市水族館へ移動 (ラッコ数5→4)
12月2日 トコ♂(4歳) かごしま水族館より帰園 (ラッコ数4→5)

1999年

2月3日 明日花♀ 誕生(母:パール)(パールは導入時に野生下で妊娠していた) (ラッコ数5→6)

この時点のラッコ:チャーリー♂、トコ♂、チャッピー♀、フジ♀、パール♀、明日花♀

2000年代 国内のラッコ飼育頭数減少

2001年

9月12日 チャーリー♂(15歳) 亡くなる (ラッコ数6→5)

2002年

10月29日 パコ♀ 誕生(父:トコ、母:パール) (ラッコ数5→6)

2003年

2月17日 チャッピー♀(推定17歳) 亡くなる (ラッコ数6→5)
4月10日 フジ♀(15歳) 亡くなる (ラッコ数5→4)
10月25日 カンナ♀ 誕生(父:トコ、母:明日花) (ラッコ数4→5)

2005年

2月24日 カンナ♀(1歳) 繁殖のためアクアワールド大洗へ移動 (ラッコ数5→4)
この時点のラッコ:トコ♂、パール♀、明日花♀、パコ♀

2007年

2月28日 パコ♀(4歳) 繁殖のためのとじま水族館へ移動
同日 ミィー♀(3歳) 繁殖のためのとじま水族館より来園 (ラッコ数4→4)
3月28日 ミィー♀(4歳) 公開

2009年

3月26日 クータン♂(7歳) 繁殖のため新潟市水族館より借入
同日 ミィー♀(6歳) 繁殖のため新潟市水族館へ貸出 (ラッコ数4→4)
この時点のラッコ:トコ♂、クータン♂、パール♀、明日花♀

2010年代 「どこの水族館にもラッコがいる」時代が終わる

2012年

3月20日 ミィー♀(9歳) 繁殖のため新潟市水族館より帰園
3月21日 クータン♂(10歳) 繁殖のため海遊館へ移動 (ラッコ数4→4)
4月11日 ミィー♀(9歳) 亡くなる (ラッコ数4→3)
10月1日 ラッキー♂(14歳) 新潟市水族館より来園(新潟市水族館リニューアルのため) (ラッコ数3→4)

2013年

1月2日 パール♀(推定17~18歳) 亡くなる (ラッコ数4→3)

2014年

6月22日 トコ♂(19歳) 亡くなる (ラッコ数3→2)
この時点のラッコ:ラッキー♂、明日花♀

2020年代 スマスイ閉園&第2次ラッコブーム

2021年

2月28日 スマスイのリニューアル工事のため、ラッコ館等の施設営業終了。スマスイでの約34年にわたるラッコ展示に幕が下ろされる
4月21日 明日花♀(21歳)、ラッキー♂(21歳) 鴨川シーワールドへ移動、バックヤードで飼育
5月9日 ラッキー♂(21歳) 鴨シーで亡くなる

2022年

5月10日 明日花♀(23歳) 鴨シーで亡くなる


2024年3月現在、国内で飼育されているラッコはわずか3頭にまで減少しました。
鳥羽水族館のメイちゃん、キラちゃん、そしてマリンワールド海の中道のリロくん。
第2次ラッコブームとでもいうのでしょうか、SNSの普及などにより、ラッコが大人気になっています。
とはいえ、スマスイは今ではもう閉園し、あの頃のスマスイにはもう会えません。ラッコたちにも。明日花やラッキーにも。
さみしいな。

参考文献

  • 須磨海浜水族園(2017),『神戸市立須磨海浜水族園60周年記念誌』
    スマスイ60年の歩みが記されているほか、ラッコ特集のページもあります。たぶん今では入手困難。

  • 「らっこ!らっこ!ラッコ!」のホームページ
    http://www.toshima.ne.jp/~seaotter/
    ラッコ界隈では知らない人はいない、munyさんのHPです。かつては国内水族館のラッコについて詳しく記されていました(この記事の元になる資料をノートにまとめたのは2017年で、その時点ではHPにたくさん情報がありました)。現在ではHPのリニューアルで国内のラッコリストはシンプルなものになりました。

  • 日本の全ラッコ( https://twitter.com/Japan_SeaOtter )さんのラッコデータ
    こちらの方は国内のラッコの家系図などを調べてまとめられています。すごい。ありがとうございます。

  • うみと水ぞく 通算61号、通算65号
    スマスイの機関誌。こちらはスマスイのHPからバックナンバーが見られたのですが、今ではドメインが買収されて見られません。国立国会図書館にはあるかも。

最後までお読みいただきありがとうございました。








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