見出し画像

<OM SYSTEM アンバサダー>穐田 英則「乗って発見、ローカル線の旅・山形鉄道」

2022年3月から始めた「鉄印帳」。これがとても楽しく、全国各地のローカル線に撮影に出かけることが増えました。列車を撮影しようと思っても、本数が少なく「撮り鉄」と「乗り鉄」の両立が難しいローカル線、駅や車内での撮影が多くなります。でも、駅で撮影できるのは列車の顔や姿だけではありません。地元の珍しいものや、一期一会の出会いで、撮影の旅が楽しめるというところも魅力と言えます。

「鉄印帳」といすみ鉄道大多喜駅の「鉄印」

※鉄印帳(旅行読売 × 読売旅行 ホームページ)
2020年に旅行読売出版社が第三セクター鉄道等協議会に加盟する鉄道会社と関係会社が連携して、地方鉄道の沿線地域の振興を目的として始めたもので、鉄印帳を購入し、各鉄道会社の指定窓口で乗車券の提示と記帳料を支払うと各社のオリジナル「鉄印」がもらえるというものです。


乗って発見、ローカル線の旅 山形鉄道
これまで訪れたローカル線の中から、自分にとって特に思い入れが深い、山形鉄道フラワー長井線をご紹介します。山形鉄道フラワー長井線は、山形県南陽市の赤湯駅から西置賜郡白鷹町の荒砥駅に至る鉄道路線です。1913年に長井軽便線として開業、1923年に全線が開通し、国鉄、JR東日本の長井線を経て、1988年に第三セクターの山形鉄道フラワー長井線として再出発した鉄道です。2023年、全線開通してから100年となる節目の年を迎えました。


■フラワー長井線との出会い

山形鉄道フラワー長井線は、写真家 故 広田泉 氏とも深いつながりがある鉄道で、2011年の秋、広田さんが羽前成田駅で「元気が出る写真展」を開催されたことに始まり、以降、広田さんと地元の「羽前成田駅前おらだの会」のみなさんが一緒になって、鉄道を活性化させようと活動が続いていました。

私がフラワー長井線を訪れたのは2019年、広田さん主催の撮影会に参加したのが最初です。それ以来「羽前成田駅前おらだの会」のみなさんと交流させていただいています。撮影会のひとこまです。止まっている列車に照明を当てての撮影です。広田さんのアイデアによる、撮影用に特別運行された列車で、このようなことが実現できるのもローカル線ならではだと思います。

OM-D E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
2019年10月撮影会 あやめ公園―羽前成田間

※写真家 広田泉 氏(1969-2022)
2002年よりフリーランスの写真家として活動。独特の感性と色彩感覚で注目を集める。各種イベントなどで写真の楽しさを伝えてきた。

■100年の歴史を誇る羽前成田駅舎

撮影会の集合場所で訪れた羽前成田駅、初めて見たときは、なんと風情のある駅なのだろう、と素直に感じました。約100年前の1922年に建てられた木造駅舎で、地元の「羽前成田駅前おらだの会」のみなさんが中心となって保存活動が行われています。できる限り当時の建材を残しつつ、傷んだ部分を補修されており、いつ来てもきれいな状態が保たれています。駅前では定期的にイベントやお祭りを開催されるなど、地元の方々のおかげで地域の活性化につながっています。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
羽前成田駅

■乗って発見、フラワー長井線

車窓からの景色が美しく、カメラは出したまま。車内では乗客の方々にレンズを向けないように気を配ることが大切です。この作品はいわゆる「かぶりつき撮影」。フラワー長井線は非電化で、架線や架線柱がなく、すっきりとしており、列車の進行とともにゆったりと流れる長閑な風景を味わえます。梨郷駅を出発し、しばらく進むと、飯豊朝日連峰の山並みが見えてきます。今となっては味わえない、当時の車両ならではの揺れを堪能する一方で、カメラの手ぶれが気になるところですが、OM-1の手ぶれ補正のおかげで、フレーミングに集中ができます。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
2023年4月 梨郷-西大塚 間

線路沿いには至る所に花木があり、シャッターチャンスには事欠きません。
瞬時にAFターゲットを花桃の木に合わせ、AFが追従する「C-AF」モードで連写をすれば、ピントはカメラ任せで撮影できます。Yの字線路と花桃の木をバランスよく配置して撮ってみました。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
2023年4月 長井-あやめ公園 間

最上川橋梁に差し掛かったところで撮影。1887年に東海道線に設置された橋梁を1923年に移設したもので、歴史的にも構造的にも貴重な近代土木遺産であり、2008年年10月14日に土木学会の選奨土木遺産に、2009年2月23日には経産省の近代化遺産に認定されています。

橋梁を疾走する感覚をダイナミックに描写したく、ズームレンズは広角側にし、OMならではの「ライブND」機能を使って周辺がより流れるように撮影します。NDフィルターを使わずにスローシャッター効果を実現する「ライブND」機能は、装着する手間もなくシャッターチャンスも逃すことがありません。私の場合、カスタム設定でモードダイヤルのC4に「ライブND」機能を登録し、咄嗟に切り替えられるようにしています。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
2023年4月 最上川橋梁

■駅で発見、美しい景色とノスタルジックな光景

ローカル線のホームでは、見渡しの良い自然の景色や、乗客の乗降もあり、ドラマチックなシーンが見られます。フラワー長井線の羽前成田駅ではすばらしい風景が広がり、午前中は吾妻連峰がくっきり見える確率が高いです。羽前成田駅でのひとこま、画像編集ソフトウエア「OM Workspace」の「カスミ除去」を使って雪山がすっきり見えるように仕上げました。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
2023年4月 羽前成田駅

囲炉裏がある羽前成田駅。静寂に包まれて物思いにふけるのもいいでしょう。木目の反射を抑えるため、露出をマイナス補正でアンダーに設定、鉄瓶の影も意識を払って配置します。M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROによる高い描写力で、木目の質感がしっかり写りました。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
2023年4月 羽前成田駅

羽前成田駅の駅舎には、国鉄時代の料金表がそのまま残っています。風に吹かれて破れないようにレプリカを作成して貼っているとのことですが、もちろん本物も残されています。寝台料金表はブルートレイン好きの私にはたまりません。単焦点大口径レンズでのやわらかいボケ味に、カメラ機能のアートフィルター「ビンテージⅠ」で、懐かしい雰囲気に撮影してみました。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
2023年4月 羽前成田駅

羽前成田駅の周辺には、様々な品種の桜が植えられています。4月上旬にはソメイヨシノ、下旬には八重桜が咲き誇りますが、この時は珍しく鬱金桜(ウコンザクラ)という白い桜が咲いていました。広角レンズで列車のサイズを小さめにし、画面いっぱいに桜を入れて撮影します。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
羽前成田-あやめ公園 間

終点の荒砥駅には菜の花が満開でした。明るい黄色の菜の花の面積が大きい場合、そのまま撮影すると菜の花が暗く写るので、露出を少しプラスに補正をして、明るくするのがポイントです。 

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
2022年4月 荒砥駅

■地元の楽しみ、グルメと鉄印

ローカル線では、地元のグルメはかかせません。山形県は1世帯あたりのラーメン消費額が日本一のラーメン王国だそうですが、ここは、沿線でいただける「白鷹をあがっとごえ弁当」をご紹介。駅弁ではないので駅では買うことができませんが、山形鉄道株式会社を窓口にして、10人以上の団体向けに販売しているそうです。羽前成田駅前で開催されたお花見会で頂いたところ、地元の食材を使った弁当で、見た目も味も絶品。和紙を使った箸袋が拘りを感じさせてくれます。そして、もちろん「鉄印」を取得。2021年の大型観光企画を機に製作された鉄印だそうです。

「白鷹をあがっとごえ弁当」と長井駅の「鉄印」

ローカル線の旅で得られるのは、美しい写真だけではありません。その地域の風情を肌で感じ、すてきな一期一会があり、人の温もりに触れ、地酒やソウルフードを頂き、帰る頃には温かい気持ちに満たされます。みなさんもぜひ、山形鉄道フラワー長井線を始め、ローカル線の旅を楽しんで下さい。


最後に、このような、すてきなフラワー長井線とのご縁をつないでくださった広田泉先生にお礼を申し上げます。読んでいただいた方に魅力が伝われば幸いです。広田泉先生、ありがとうございました。


■筆者紹介

OM SYSTEM アンバサダー
穐田英則(あきた ひでのり)

30年近くカメラの開発に携わり、現在もエンジニアを続けながら、地元を中心に写真文化の発展に向けた活動をしている。被写体は鉄道がメイン、他に野鳥、花、人物と多岐にわたる。2021年11月に個展「恩田川沿いで見つけた花鳥風鉄」を開催。グループ展多数企画。フォトマスター検定EX取得。
公益社団法人日本写真協会(PSJ)会員      
町田市写真協会理事


■OMフォトライフ ユーザーインタビュー

フォトグラファー 穐田 英則
ジャンルの垣根を超えて表現の幅を広げてくれる小型軽量のOM SYSTEM


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?