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「世界の都市・パブリックスペース」を考えるソトノバ・スタジオ第5回(最終回)

 ソトノバ・スタジオの最終回は、これまでグループごとに調べてきたオーストラリア3都市のパブリックスペースに関する情報のプレゼン・セッションです。4つのグループが、それぞれ選んだテーマに沿ってシドニー、メルボルン、アデレードの3都市をリサーチし、それをマップにまとめたものを発表する場となりました。最終回のみ外部の方へも公開なので、環境デザインを勉強中の現役学生、不動産リノベーションの仕事をされている方などが来てくださいました。

 チームごとに3都市のマップをパネル展示し、各チームが20分の持ち時間を与えられて、得られた成果を説明していきます。どのチームも、メンバーと連絡をとりあいながら直前まで準備に追われていたようで、今日もこれまでより早く集合している方が多かったです。

                                                                              (Photo by Takahisa Yamashita)

トップバッターはチーム「K」

 発表の1番手は、「ストリートxカフェ」がテーマのチーム「K」です。「人の集まる場所と時間」という視点を設定し、「ストリート(歩行者優先)とカフェは関連性が深いのではないか」と仮説を立ててのマッピングです。さらに、営業時間帯からみるとカフェは「朝」の活動なので、これに「夜」の活動の場であるバーも加えました。

 カフェやバーがどういう場所に立地しているのかをマッピングしていった結果、軒数ではカフェよりバーが、立地では表通りより裏通り、公園よりストリートに多いことが、3都市に共通する傾向としてみられたとのこと。「歩行者優先の通りが多いと、カフェ文化が根付くのでは」との考察は、個人的にも共感できるものでした。

 ただ、その散らばりは、詳細にみていくと、シドニーとアデレードは直線状、メルボルンはもっと分散しているなど、都市ごとに異なる特徴があり、どうしてそうなってきたのかについての分析は、とても興味を惹かれました。(次の写真はメルボルンの例)

                                                                              (Photo by Takahisa Yamashita)

 また、Google Mapの口コミ数を3都市で比較した結果も、「カフェとバーで、口コミ数の多さに差がある(バーのほうが多い)」「3都市の間でも口コミ数にはかなり開きがある(アデレードは他に比べて少ない)」など、気になる発見があったそうです。

2番手はチーム「食いしん坊」

 続いての発表は、わがチーム「食いしん坊」。なかなか「これだ!」という視点が決まらず苦労しましたが、最終的に「市場(マーケット)」を軸としてマッピングしてみることになりました。

 3都市とも歴史も長く規模も大きなマーケットをかかえていますが、調べてみると、「生鮮品などを取引し、供給する機能」だけではなく、食事を楽しんだりそこで開かれるイベントに参加したりと、地元市民も観光客も引きつける「場」でもあることが、旧築地に代表される日本の「市場」(築地にも一般向けの小売店やレストランが集積した場外市場はありましたが)との違いではなかろうか、というのがチームの発見です。

 メルボルンのクイーン・ビクトリア・マーケットは1878年開設。夏と冬の数か月間は週1回、夕方5時から夜10時まで「ナイト・マーケット」を開催したり、大道芸や本のマーケットを開くなど、「市場」のイメージにおさまりきらない市場です。

                                                                              (Photo by Takahisa Yamashita)

 アデレードのセントラル・マーケットも1869年設立。子供が楽しめる無料のクラフトなどのワークショップや菜食主義の人向けの料理紹介、チーズについてより深く学べるイベントなど、こちらも楽しそうな企画が頻繁に催されています。

 シドニーでは、観光拠点としても重要なフィッシュ・マーケットが州政府主導で移転・拡張する計画が始まっています。ここでも、「魚市場にとどまらない魚市場」を標榜し、「地域に根ざしたアクティビティが出会う場所(を目指す)」と明確にうたわれています。

 こうした市場の実態や今後の方向性から、「市場とは、可変性と拡張性が生み出す『多様な価値』と『新しいビジネス』のプラットフォームである」というのが、チーム「食いしん坊」の結論でした。

3番めはチーム「さんさん」

 3番めに登場したのは「公園」がテーマのチーム「さんさん」。3都市では、Central Business District (CBD)に公園がほとんどないメルボルン、CBDをぐるりと公園が囲んでいるアデレードなど、環境はそれぞれ異なりますが、共通するのは「日本と比べると、公園の使用許可をネット経由で簡単に取れる」ことだそうです。

 また、公園の使い方もかなり違うようで、日本ではフェスティバル会場などでの使用が多いと思われますが、3都市の使用は「そこでアクティビティを楽しむ」ことが主要目的となっているとのことです。スポーツ施設が併設されている公園の多いことは、羨ましい限りです。

                                                                              (Photo by Takahisa Yamashita)

 また、3都市とも、公園以外にも、海岸沿いの散策路、図書館など施設の前の芝生広場、オープンカフェが並ぶ目抜き通りなど、居心地のよいオープンスペースがあるそうで、これらも今後の活用の仕方でさらに都市の魅力を高めていくことが期待できるのでは、との指摘でした。

                                                                              (Photo by Takahisa Yamashita)

最終発表はチーム「モビサイト」

 「モビリティx観光x生活」をテーマとするチーム「モビサイト」が最後に登場。「観光客と生活者がどう移動しているのか」という視点でリサーチしました。

                                                                              (Photo by Takahisa Yamashita)

 3都市とも、CBDやその周辺を含む主要エリアには無料のレンタル自転車、トラムやバスがあり、有料の交通機関も含めてそれらを組み合わせることで効率的な移動手段が確保できているようです。無料は観光客にとってはもちろんのこと、市民にとっても嬉しい仕組みで、公共交通の利用促進効果もありそうです。

                                                                              (Photo by Takahisa Yamashita)

 また、こうした交通手段はいずれも「乗ってみたい」と思わせる魅力を備えていて、移動手段がそのまま観光資源になっているといえるのも3都市共通とのこと。なかでも、アデレードで始まった電動スクーターは行動範囲が広がるのではないかと感じさせるものでした。

 最後に、これも3都市共通の課題として、オフィスがCBDに集中していることに加えて人口増加が続いているため、都心へ流入する車が引き起こす渋滞があるとのこと。解決手段として新しいLRTの路線やバイクシェアの拡大などに着手しているそうで、こうした計画が今後各都市の状況をどう変えていくのか、見守りたいと思いました。

お疲れ様でした、修了証書の授与

 4チームのプレゼンが無事終了し、他チームのプレゼンに対する質問も活発に出ました。一区切りついたところで慰労パーティーです。今回外部から参加してくださった方々、初回で講演いただいた梅中さん、感想レポートで素敵な写真を使わせていただいた山下さん、毎回サポートしていただいたスタッフの皆さんも交えて、和やかな時間が流れました。

                                                                              (Photos by Takahisa Yamashita)

 そして締めくくりは、泉山さんから全5回に参加したメンバーへの修了証書の授与です。(写真は授与トップバッターの富本さん)

短期間ではあったものの、密度の濃い時間を通して一定の成果につなげられたことは、参加者の一人としても良い刺激になりました。ここで学んだ手法をまたどこかで活用できる機会があることを、また、ここで知り合えた皆様と再びご縁があることをそれぞれが願いながら、集合写真におさまりました。泉山さん、矢野さん、ありがとうございました。みなさま、お元気で!

Photo by Takahisa Yamashita, Toshio Shinmura
Text: 新村 敏雄


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