「セイバーメトリクスの落とし穴」発売まで1週間!「はじめに」を特別公開します!先行予約特典もあります! #お股本

光文社新書から来週水曜の3月13日に「セイバーメトリクスの落とし穴 マネーボールを超える野球論」という大げさなタイトルとシュールな著書名で出版することになりました。

発売まであと1週間となりましたので、ダルビッシュ投手もこのように言うお股との過激な?出会いで始まるはじめにを特別に先行公開します。予約特典もありますので、是非お手にとっていただければと思います。

特別公開版 はじめに

忘れもしない2015年9月23日、私はMLBのテキサス・レンジャーズに所属(当時)していたダルビッシュ有選手に関して、ツイッターで何気なくこうつぶやいた。

「やたら意識が高いとか理論的とか言われるが、196㎝とかいうMLBでもデカいフィジカルを持ってるんだし、むしろ多少技術がなくても補えるのだが。肘の故障を避けるために去年後半休んだくせに結局翌年のキャンプで断裂しているし、そこまで過剰に持ち上げるのもどうなのかとはいつも思っている」(2015年9月23日 原文ママ)

 今思えば大変無礼なツイートだが、この頃はまさか自分の発言がプロの選手に直接伝わるとは微塵も思っておらず、ダルビッシュ選手のこともフォローしていなかった。完全に内輪へ向けた発言だったので、選手に見られることなど全く意識していなかった。
 
 ところがどういうわけか、これがダルビッシュ選手の目に入ったようで、リプライが飛んできた。

「ツイートが流れてきたので一言いいですか。昨夏は肘の故障を避けるためではなくすでに靭帯はやっていたので治すために時間をかけたまでです。あと身長はもともと高いですが筋量はなく今の身体にするには相当な労力と時間をかけてきました。あと身長とフィジカルは関係ありません。」(2015年9月23日 原文ママ)

 ダルビッシュ選手はツイッター上で素人とも論争をしていると聞いていただけに、最初は恐怖と申しわけなさしかなかった。
 そこで、「過酷なトレーニングをされているアスリートの方に素人が事情も知らず憶測でわかったような口を聞いたり、決めつけてすみませんでした。復帰を楽しみに待っているので頑張ってください。」と答えた。

 すると返信が来た。
「フォローしてもらえますか?DMのほうがいいかと。」

 これがきっかけで、あのダルビッシュ選手とダイレクトメッセージでやりとりをすることになった。最初はとても緊張したが、そもそも彼は全く怒っておらず、この後3時間近く野球談義をした。体作りの大変さだけは理解してほしいとのことだった。MLBの好きな選手やピッチングについて語ったり、私が野球を幅広く見ていることを褒めてもらったりもした。これからもいつでもメールください、と快く挨拶してくれた。
 
私の運命はここから変わったと言っても過言ではない。ダルビッシュ選手の登板を応援しながら、色々と野球の話を教えてもらったり、ミゲル・カブレラ選手のバットやユニフォームをいただいたりした。WBSCプレミア12の開催中に、私のことをわざわざ「ツイッターで興味深いことを言っているファンのお股ニキさん」と紹介してくれた。

 ダルビッシュ選手は勉強熱心で、私にもアドバイスを求めてくることがあった。
 2017年7月末、ロサンゼルス・ドジャースにトレードでやってきたダルビッシュ選手は、プレーオフに向けて大胆なフォーム改造や配球変更を行っていた。器用なダルビッシュ投手とはいえ、シーズン半ばでの突貫工事ですぐに結果には繋がっていなかったが、手応えは感じられていた。

 そんな中、彼から「自分のツーシームの回転の角度や変化は他の一流投手と比べてどう違うか」と質問されたので、無料公開されている投球データサイトで調べ、「今は少し縦回転が強くなっているから、横の変化が小さくて縦に落ちている。回転の角度を横回転にすればもっと曲がる」と答えた。

 すると次回の登板、ダルビッシュ選手は初回から絶好調だった。この日はストレートのスピードも変化球のキレも申し分なく、7回88球1失点と、シーズン最高に近い内容だった。

 そしてこの試合の5回、私がアドバイスした「横回転のツーシーム」が実際に投じられた。156・8キロのスピードでホームベースの左端から右端まで大きくシュートしていくようなすさまじい変化。放送席の実況と解説、打席で空振りした左バッターみんなが驚き、笑いすら出てくるようなボールだった。

 この光景は試合後のインタビューでも話題になり、スポーツニュースの記事では「ネットの友人のアドバイスでツーシームを改良した」と取り上げられ、ヤフーニュースにも掲載された。さらに、ダルビッシュ選手本人がツイッターで「記事に出て来る『ネット友達』はお股ニキさんです。」と紹介までしてくれた。これをニュースで見た知人が「ダルビッシュがネットの友人のアドバイスで変化球を改良したんだって」と言ってきたりもした。彼はまさか、私がそのお股ニキ本人だとは思っていないだろう。

 余談だが、このツーシームを「お股ツーシーム」と呼んで自慢していたら「さすがにそれはなんだ」「お前がすごいのではないぞ」といった声が飛んできた。それを見たダルビッシュ選手は「お股ツーシームはダルビッシュ公認です。使っていいですよ」と言ってくれた。この男、本当に情に厚いのである。

 また、ダルビッシュ選手は2016年の終盤、思うようにスライダーが曲がらずに打たれていた。この時も、リリースポイントの位置と高さを見て、投球フォームがインステップとなり腕の角度が上がっているためにボールの曲がりが悪くなっていると、理由を推定して伝えた。すると早速、次の試合ではスライダーのキレが回復し、多くの三振を奪った。

 一人の野球ファンとして、これ以上の幸せはないのではないか。私は、自分では実際にできもしないのに、ああでもないこうでもない、俺ならこうすると語っている一介のファンにすぎない。そんな素人の夢が叶ったのである。夢と希望をくれたダルビッシュ選手には本当に感謝の気持ちしかない。
 しかし、ちょっと角度を変えれば良くなると言ったらそれをすぐに実現できてしまう技術レベルの高さには、改めて驚かされる。さすがは日本史上最高の投手である。プロの選手はこうした微調整が可能だからこそ、色々なボールを狙って投げ分けられるのだなと思う。

 私は当然プロ野球選手でもなければ、学者や専門家でもない。高いレベルでの野球経験を持たない、しがない一般人である。
 しかし、だからこそ野球を「自然に」「普通に」見て考えることができるのかもしれない。野球界に蔓延する過度な思い込みや、固定観念に囚われた価値観とは無縁である。そうした立場だからこそ伝えられる野球の見方があると思う。
 経験がなければ一切技術を語ってはいけないという声も、ファンはデータだけで語らねばいけないという考えも明らかにおかしい。大半のファンは少年野球や草野球、部活程度の経験しか持たない一般人ではないだろうか。

 韓国のサムスン・ライオンズでは一般の野球フリークが数字などを見て、韓国球界にフィットしそうで契約可能な選手をスクリーニング(ふるいにかけて選び出すこと)しており、その候補の中からスカウトが実際に視察したり会って人柄を確かめたりして獲得に繋げているという。このような、良い意味での素人の活用や連携は効果的ではないだろうか。
 アメリカではファングラフスなどの野球データサイトでデータ分析を公開していたデータマニアが、球団に採用されるケースもある。なぜ日本ではそこまで未経験者や素人を(むしろ素人ほど)認めないのか、私自身が素人だからというわけではないが疑問だ。
 
 ただし、実際にプレーしないとわからない感覚まで「データ上ありえない」と否定するのもまた良くないことである。どこまでいっても人間がやる競技である以上、様々な要素の上位概念として「直感」があることを忘れてはならない。

 私の考えは独特だとよく言われる。お股ニキというふざけた名前だし、プレーヤーとしては素人だから、疑われるのも当然だ。だが、私としてはありのままの印象を率直に語っているだけだ。素人だって自分の目線で考えることはできる。色々な試合をフラットに見れば、理解できることもある。野球界の「内側」にいないからこそ、余計なバイアスがかかっていない。そこで、これまでネット上で膨大につぶやいてきた話をまとめてみることにした。

 日本の野球はあまりにも固定観念や先入観、形やイメージに支配されすぎている。大げさかもしれないが、野球は日本社会全体の縮図であるとも言えるし、衰退国家の現状をよく表しているとも言える。それを様々な観点から明らかにするとともに、野球がいかに奥深く面白い競技であるかを知ってもらいたい。
 現代野球は日々進化しており、この一冊だけで全てを理解することは到底できないが、より多様な視点から野球を本質的に見られるきっかけになれたら一人の野球ファンとして本当に嬉しい。

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お股ニキ

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