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-勝手にサラメシ#3-「仲間」はだませない

この『勝手にサラメシ』シリーズは、
NHKの人気番組『サラメシ』にあやかって、
note担当松野が“勝手に”サラメシ風の記事を発信している企画です。


さて、そんな『勝手にサラメシ』シリーズ第三弾の今回は、月に一度の特別メニューに迫ります。


当院の職員食堂が最も賑わう日、
それが月に一度の職員特別食の日です。
毎月この特別食の日は、職員食堂でスペシャルメニューが出されるのです。


そんな特別食、8月のメニューはこちら


渡り蟹のトマトクリームパスタ(字面だけでおいしそう・・・)

この、月に一度のスペシャルランチを楽しみに、多くの職員が食堂へ集います。

そんな中でも、「特別食ファンの看護師さんがいる」との情報をキャッチし、食堂で待ち伏せすることにしました。

今回お話を聞かせてもらったのは入職5年目の看護師、Aさん

笑顔の職員食堂


松野:すごくうれしそうな表情で、列に並んでいましたね。
Aさん:ずっと楽しみにしていましたから。私、久しぶりの特別食なんです!

松野:先月の特別食は食べなかったのですか?
Aさん:はい、先月の特別食は公休日で食べられませんでした。
夜勤もしているので、特別食の日が日勤と重なるというのは、けっこう貴重なんです。だから、今日は本当にうれしくて。

松野:それで、あのうれしそうな表情だったのですね。普段からお昼は職員食堂ですか?
Aさん:いえ、それが・・・いつもはお弁当を持ってきています。


松野:そうなんですか。てっきり常連さんかと。
Aさん:本音では、いつも来たいんですけど。
こちらの職員食って本当に美味しいので、つい食べすぎてしまうんです。
そうすると午後の仕事のフットワークが重くなってしまうこともあって、普段はお弁当を持ってくるようにしています。


松野:確かに食べすぎは要注意というか、好きなだけ盛れるメニューも多いので、私も気がついたら体型が変わっていたことがあります。
Aさん:慶友病院の職員食の美味しさについては、いつも友人や家族に自慢しています。
特に今日みたいな特別食の日は、我慢の限界!

メニューが発表になったときから「特別食まであと何日」って、カウントダウンしながら楽しみにしています。


松野:なるほど!
普段はお弁当派でも、特別食の日は食堂に足を運ぶというタイプの特別食ファンだったのですね。
Aさん:本音では、いつも来たいんですよ(笑)

松野:Aさんは入職5年目とのことですが、慶友病院はどんな職場ですか?
Aさん:「患者様のため」っていう表現は、おそらくどんな病院でも聞くと思うのですが、言葉だけじゃなくて、あらゆる場面でそれが徹底していますよね。
それから、スタッフのみなさんが、人生経験豊富でとても優しい方が多いなあと、しみじみ感じます。
病棟のスタッフだけじゃなくてこういう職員食堂のスタッフ、厨房のみなさんも笑顔が素敵な方ばかりで、いつも癒されています。

松野:今日の担当調理師Nさんも、いつもニコニコ笑顔で迎えてくれますよね。
Aさん:ですよね。料理が美味しいことはもちろんですが、職員同士が笑顔で食事ができる環境というところがすごくいいです。

松野:ではあえて、「職員食堂への要望」があれば聞かせてください。
Aさん:これ以上望むのは申し訳ないです。
本当に感謝しかありません。

あ・・・でもひとつだけ。
要望ではないのですが、私がどうしても食べたいのに、一度も出勤日と重なったことがないメニューがありまして。

松野:どのメニューですか?
Aさん:まぐろを丸ごと1本さばいていただく、まぐろ丼の・・・

松野:はい!特製まぐろ丼ですね。確かにあれはすごいです。ふつう職員食堂の厨房で、まぐろさばいたりしないですよね。

理事長が一本釣りしてきているのではとの噂も(真偽は不明)

Aさん:私はまだ食べたことがないんです。
こればかりは運というか、勤務とのタイミングなので、どうしようもないのですが・・・
今年の特製まぐろ丼の日は何とか勤務日になるように期待しています!
松野:ぜひ、そうなるように私も願っています!

Aさん:今日の『渡り蟹のトマトクリームパスタ』も、蟹のエキスがたっぷり入っていて香りも良く、本当においしくて満足でした。
たぶんものすごく手間をかけて作られたんだろうなと、想像しましたけれど。
松野:同感です!では、どんな風にこの特別食が準備されているのか、調べてみますね。

こちらが、本日の職員食。すごく本格的。


特別食の裏側で


さて、「普段はお弁当派」というAさんも虜になってしまった特別食。
後半はその舞台裏をご紹介します。

話を聞かせていただいたのは、8月の特別食調理担当のNさん。

最強笑顔のNさん

松野:普段はお弁当派でも「特別食の日は職員食堂に足を運ぶ」という方も多いそうです。
Nさん:普段の職員食はだいたい170食くらい準備するのですが、特別食の場合は250食と、かなり多くの方が来ることを想定して準備します。
期待はヒシヒシと感じます。

調理師としては、楽しみ半分、プレッシャー半分ですね。
正直に告白すれば、今回、心配なことがたくさん頭に浮かんでなかなか寝られない日もありました(笑)

松野:どんなことが心配でしたか?
Nさん:やはり一番は、オペレーションがうまくいくかという点です。
街のレストランのように、混みあってきたので「少し待っていてください」というわけにはいきません。職員食堂ですから。

昼の休憩時間をロスしないよう、スムーズに誘導する必要があります。


松野:たしかにそうですね。
ある程度は時間帯をずらしているとは言え、200人以上の人がランチタイムにどっと押し寄せるというのは、準備が相当しっかりできていないと。
Nさん:今回の特別食は先輩のI主任とペアを組んだので、料理長含め3人で何度もシミュレートして「これなら大丈夫!」というところまで詰めました。
それでも当日が近づくにつれて、本当に大丈夫かな・・やり残したことなかったっけと、どんどん不安が大きくなっていきまして。

オープン直前の緊張感。先輩のIさんが頼もしい。


麺は茹で置きではなく、大釜を持ち込んでジャストタイムで茹で上げていきます

松野:私は特別食のポスターが貼られると、「やった!来週特別食なんだ」と無邪気に喜んでいますが、担当の調理師さんは大きな重圧を感じているんですね。

今回のポスター

Nさん:特別食を担当するのは年に1~2回ですが、2か月前くらいから準備を始めます。
メインを何にして、全体の構成はどうするのか、と。


松野:今回は『渡り蟹のトマトクリームパスタ』でした。なぜこのメニューに?
Nさん:私はもともとイタリアンの料理人でしたので、自分の得意ジャンルで勝負しようと。
同じメニューを数年前にも出したことがあって、非常に評判が良かったということで、自信のある復刻メニューに決めました。


松野:そうなんですね。たしかに、本当においしかったです。これ、ソースから作るんですよね。(失礼な質問ですみません・・)
Nさん:はい。ソースもイチから作っています。

蟹を使うソースは、大量調理ではかなり手間がかかるんですよ。
殻がソースに残らないように何度も濾しながら仕込むのですが、濾しすぎると美味しい身の部分まで除いてしまうことになるので。
ちょうど良いバランスで仕上げていくのが、このソースのポイントです。

松野:お恥ずかしい話ですが、私の舌ではその細部の違いは分からないかもしれません・・・
Nさん:-本物を出す-ということが私たち厨房の大切にしているポリシーですので。
それに同僚の調理師も全員食べますからね。
一番のプレッシャーは「仲間」の評価です。

松野さんはごまかせても、厨房の同僚の舌はだませません(笑)。


松野:私もいつか本物の味が分かるよう精進しますね。
それにしても、特別食の裏側を除いてみたら、想像を上回る大変さで「やった!特別食だ」と無邪気に喜ぶのも悪いような気がします。
Nさん:そこはもう、まったく遠慮しないでください。
確かにプレッシャーはありますけど、皆さんの期待に応えることも大きな楽しみです。

それに料理の感想を、直接聞かせてくれるスタッフもたくさんいて、そういうコミュニケーションが成立するのは、この病院で調理師をすることの醍醐味ですから。

わかりました!
これからも料理の感想をどんどん伝えていきますね。


本日もお相手は青梅慶友病院採用広報担当でした。