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猫とロック

自分の欲求をド直球に訴えられるのってロックな感じがする。

自分の胸のなかには、ドロドロなのかキラキラなのか、それは人によって欲求の色は違うだろうけど、そこにはカルピスの原液のように濃ゆ~いものが収められているくせに、それが喉や手を伝って、声や文字となり、だれかに伝えるときには水で溶かれて、数倍、いや数十倍にも薄められちゃっていることがある。

そうやって、欲求が変化球のようにぐにゃ~っと曲がって、ストライクゾーンに入るならまだしも、狙いとは全然違うようなところへ飛び、ボール判定されてしまうのだから、世の中トホホで、世知辛いのだ。

それくらい自分の中にある欲求を外に出すことは、そこそこの勇気と制球力が必要だということだろう。だからこそ、うまく欲求を豪快に投げ切る人には「こいつぁ、ロックだぜ、旦那ッ!」と肩をポンと叩きたくなってしまう。

そう、ロックな人は少ないのだ。でも、意外なところに、超ロックな存在を見つけてしまった。我が家の猫たちである。

5匹中の3匹はオスなのだが、絶賛発情期中のため、声がワントーン高くなり、スウィーティな感じになっている。また、一日に何度も落ち着かなくなり、家のなかをうろうろして、ミャアミャアその美声を高らかに鳴らす。

「ヤリてぇーーーーーー」

もうそう言っているうようにしか聞こえないくらい、こいつらの声には妙な力強さと、説得力がある。

残り2匹のメスたちは、避妊手術済みのため、フェロモンが出てないのか、その対象ではなくなっており、ただひたすらに欲求不満を続けている3匹。

普段は家の中におり、天気がいいときは外に出すのだけど、その美声のせいで、近くの野良猫たちが1~2匹敷地に入ってきてるじゃあないか。リサイタル成功だな、おい。

お客さんが来たとなったら、もはや外に出しておくのはやべえな、と思い、ずっと家の中に留守番させられる3匹。すると、欲求不満を美声に乗せて、窓越しに外をじっと見つめている(不思議となんか画になる)。

ごくまれに、家の中からの声をキャッチしたお客さんが家の周りをうろうろする。それを見つけたオスらは、その客に対して、またアンコール美声を送る。

もうその姿、そして声は、「今日は来てくれてありがとぅ!」ではなく、B級ソングの歌詞にありがちな「アイ ラビュー、ベイベー!アイ ウォンチュー!」と言わんばかりで、あわよくばファンを食おうという欲求だだ漏れな様子なのだ。

もう、それを見かけたオイラは「嘘偽りのなく、ハートで奏でている、ソウルフルな言葉....こいつぁ、ロックだぜぇ」と思わないわけがない。

ロックな”人”は少ないが、ロックな”猫”が世界中に溢れている。

こたつ布団の上に座って、漫画のごとく一画で描ける眠たそうな細い眼でぼくを見つめてくあいつらは、カルピス原液を薄めまくり自分の欲求に鈍感になってしまった現代の我らが仰ぐべきお師匠なのである。

※正直「ロック」が何なのかはあまりよくわかってないのでニュアンスで察してください。

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