見出し画像

iPodソムリエに出会って

今朝はMONDO GROSSO「ラビリンス」から。寝床で目覚めたあとの重いだるい瞼のまま何を聴くかで一日の立ち上がり方が変わってくる。あんまり音楽とは縁のない人生を歩んできた気がするが、ここ2~3年で聴くものが広がって、気分に合わせて音を変えるという選択肢が増えたのは、ちょっとうれしい変化だ。

たしか、幅を広げ聴くようになったきっかけは、ある人に紹介してもらってからだ。もともと音楽にさほど興味もなく、聴くのはテレビで流れているメジャーなもの、あるいは、親兄弟が聴いてて聴くようになったものばかりだった。また周りにいた人がそうだったせいか、音楽好きはマニアックで”閉じた世界観”を持ってて気持ちわりぃ(ここらへんは本や映画の感覚に近い)と思っていて避けていたのはある。

たまたま京都で仲良くなった友人がいて、流れでぼくが居候として1ヵ月ほど一緒に暮らすときがあった。彼はいわゆる音楽好きだった。アイルランドの民俗音楽が好きだという理由で、アイルランド留学をしてたくらいで。彼の家で流れる音楽は知らないものばっかりだったけど、心地よくて、ついつい「これだれのなんて曲?」と聞いていた。

彼は、みんな聴くような、王道ではない、マイナーなもの、ニッチなものが好きなひねくれものかと最初は思っていたけど、ドライブに行ったときに車中に流れた曲のなかに、きゃりーぱみゅぱみゅがあったりして、「こういうのも聴くんすね?」と話すと、「この曲は、~~~みたいなかんじで作られている曲で」といちいち丁寧に教えてくれる。

どんな曲も隔てなく、そのときの気分に合わせて、自分が聴きたい曲を選べる彼をみて、どのバンドが好きとかこのジャンルが好きとかでなく、”音楽”が好きなんだなぁ、と素直に思えたし、音楽の選択肢を持てるってのは豊かさの一つなのかもしれない、とハッともした。

ぼくが彼の家を出るタイミングで、餞別代りに音楽を選んでくれた。「よく聴いてるやつは?」みたいなちょっとした診断があって、時折ぼくがこれいいすねと言っていた音楽をもとに、ぼくのiPodTouchにいくつか音をぶちこんでくれた。

もともと好きなアーティストだったけど知らない曲、いいすねと口にしたアーティストの曲、試したことないけどこれは好きなんじゃないか的な曲、趣向を凝らして選んでくれていたし、そのほとんどがハマる曲だった。

その一連を振り返ってみて、ぼくは彼はiPodソムリエだなぁ、としみじみと感じている。わけ隔てなく音楽を聴いているからこそ、幅広い選択肢のなかから、相手の好みに合わせて音楽を選び抜ける人。

よくよく考えてみたら、バーテンダーがやっていることに少し似ている。相手の気分や好み、だれと飲んでいるのか、などを考慮しながら、膨大なカクテルのなかから一杯を選び出し、つくって提供するあのかんじに。(ストーリーも含めて)自分が知っているカクテルが増えれば増えるほど、サービスに彩りが出てくるあのかんじに。

音楽やカクテルでなくても、○○ソムリエ的な人はたくさんいて、彼らが○○の間口を広げていく存在になりえるし、そういう人が増えていくと、小さいことかもしれないけど自分の暮らしをちょっぴりでも良くするものが増えていく。

自分の好き嫌いうんぬんでなはく、相手を見て、話を聴いて、しれっと選び抜ける、そういう人に私もなりたい。そういや、iPod壊れちゃったからもう使ってないんだったっけ(汗)。今や音楽はスマホとアレクサでAmazonMusicに頼るという始末。時代......かぁ?

もしも投げ銭もらったら、もっとnoteをつくったり、他の人のnoteを購入するために使わせてもらいます。