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カメムシとのマッチング

 私はカメムシが嫌いだ。

家庭菜園をしていると、キュウリのツルに噛みついてくるからだ。
せっかく、ホームセンターのクリアランスセールで見つけてきたキュウリを台無しにしてしまう憎い相手だ。
今日も「順調に成長しているかな?」とキュウリを見たら、ストレスで学校に行きたくない学生の朝の様に頭を下げている。
「おいおい、昨日まで元気だったのにどうした?」と親心からツルに触れてみた。接ぎ木されたすぐ上が細くなっている。

「カメムシに吸われてしまった!!!」

私は野菜用のスプレーをキュウリに吹きかける。
このスプレーをかけたからと言って、復活するかはわからない。
だがやらないよりはいい。できることは何でもやってみる。
すると、「ははは、ごちそうさまでした」と言わんばかりにカメムシが落ちてきた。私は躊躇なく踏みつぶすという死刑宣告を与えた。
しかし、このカメムシはキュウリに噛みついた犯人ではなく、たまたまキュウリを見かけて寄っただけであり冤罪だったかもしれない。
だが、これから私のキュウリ達に噛みつくことがあるかもしれない。
そう考えれば事前に防いだということで許されるだろう。

 私とカメムシは、小学生の時に野外活動で訪れた山にあった研修施設の部屋がファーストインプレッションである。
夕食を終えてそろそろ寝るという瞬間に、部屋にいた女子達が騒ぎ始めたのだ。その当時は男女一緒の部屋だった。
現在だと、保護者や本人達が何か起きたらどうするのかと学校に抗議するだろうがそんな事を予想する人もいなかった。
もし何かあったとしてもそれはそれで済んだのだろう。

「誰か退治しなさいよ!!」
「俺には無理だよ」

そんな言い合いが続いたが、普段静かなクラスメイトのB君がさっとティッシュで掴んでゴミ箱に捨ててくれた。あの時の彼は部屋における英雄だった。私は熟睡し、次の日女子からビンタをくらい目を覚ますのだった。
私は何か過ちを犯してしまったのか?そんな記憶は全くない。
野外活動は順調に進み無事終了した。
私自身もクラスの中でのカーストは真ん中を維持し続けた。

 あれから何十年と時間が経ったが、我が家にもカメムシがやってきた。
昔はこの辺でカメムシを見かけることなどなかったのに・・・
カメムシは餌を求めて山を下りてきたのだろうか?
それとも別の原因があるのかもしれない。
人の価値観、世の中の流れは常に変化し続ける。
今から数十年後に私はまた違った虫と出会っているかもしれない。

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