私は大阪の岸和田出身だ。

出身地を名乗って「そこ、どこ？」と言われたことはない。

どこに行っても出身地を知らない人がいないというのは嬉しいものである。

そのかわり、「岸和田です」と言うと、相手の顔が一瞬こわばる。

その次に「お、おぉ」という言葉を発するか、目を見開いて口をとがらせた表情で大きめにうなずくかは、その人次第だ。

そして、だんじりと清原のおかげでたいてい元ヤンの推定が働くのだ。

岸和田のイメージはそんな感じである。

ちなみに、ビフォーアフターなんてこともあるので、元ヤン推定を覆すのは容易ではない。

いかにも元ヤンという感じでもないかわりに、推定を覆すほどの清廉さも持ち合わせていない私は、基本ご想像にお任せすることにしている。

岸和田は本当に治安が悪いのか？

岸和田は野蛮とか治安が悪いとか言われるが、本当にそうだろうか。

たしかに、小学生の頃、一緒に遊んでいた男友達の家に他校の生徒から決闘を挑む電話がかかってきて、そのまま公園で喧嘩していたこともある（女子は危ないからと家で待機をくらったが、こっそり見に行ったものだ）。

たしかに、私の母校の中学は、ミッキーマウスをトイレに閉じ込めたとかいう理由でディズニーランド出禁だった（この出禁令は基本2～3年で解けるので、私はかろうじてディズニーに行けたが）。

たしかに、中学の卒アルには少年院に入っている生徒が数人、合成写真で写っている（中にはオツトメのため中学に一度も来れなかった子もいる）。

たしかに、「先生が刺された」という情報に対し、私の母親は驚くことなく「また？」と返していた。

でも、これらは別に岸和田に限ったことではないだろうし、「昔はやんちゃしてたなあ」的な思い出は誰にだってあるだろう。

泉州弁を少しこわく感じる人もいるかもしれないが、岡山弁や広島弁だって同じようなものである。

方言のイントネーションの問題は、治安の善し悪しとは別の問題だ。

岸和田で犯罪が多いとか、命の危険があるとかは特に感じたことはない。

結論。

岸和田は、ガラは悪いけど治安は悪くない。