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ヤンキーの彼 vol.2

今日、はるばる堺から枚方まで、江弘毅氏×石原卓氏のトークショーに行ってきた。

『K氏の大阪弁ブンガク論』という新著出版記念イベントだ。

江氏は岸和田出身で、わたしの中学校の大先輩である。

だんじりの話こそ出なかったものの(それは石原氏がナイスファシリで食い止めたらしい)、江氏のトークからは岸和田くささがプンプンした。

私は江氏とは世代も性別もちがうので、まったく同じ岸和田弁を発するわけではないが、となりに座っていたみかさん(豊中出身)からすれば、大差ないのかもしれない。

それはさておき、大阪弁のブンガクを岸和田弁で熱く語る江氏のトークショーは、他人事とはおもえない内容もあってかなりおもしろかった。

帰りの京阪電車にて、おなじく一緒にトークショーに行ったマサコさん(静岡出身)から、ふとこう言われた。

「岸和田出身だったらさ、ヤンキーの彼とかいなかったの」

ここが枚方だからか、最初に思い浮かんだのは高槻出身の元カレ。

ちがう、あれはヤンキーじゃない。

「さすがにヤンキーは・・・」と言いながら、もっと奥の脳みそをほじくりかえしていると、あ、いた!

ヤンキーの彼、いた!

「彼」という言葉からすぐに連想できないくらい幼いころだが、そういや、前話『岸和田出身』の破壊力にも出てきているではないか。

「それ書いたらおもしろいんじゃない?」

なるほど。

マサコさんからやんごとなき企画をご提案いただいたので、ちょっくら書いてみようと思う(なぜvol.2になっているのかは、わかる人にはわかる話)。


彼の名は、イチタ。

小学校6年生のころの話なので、私たちの間に何があったというわけでもないが、イチタはまぎれもなく私の初カレだ。

当時クラス委員をつとめる優等生だった私と、クラス1ヤンキー(の卵)だったイチタ。

なぜ二人がつきあったのかはわからないが、たしかイチタは足が速かった。

足が速い子がモテるという小学生あるあるである。

顔もなかなかかわいらしかった。

放課後、イチタの家に遊びに行ったことも何度かあった。

イチタの父はアウトローだったのだろうか、壺の中からトカレフのようなものを出して見せられた気がするのだが、20年も前の話なので夢かうつつかはわからない。

ある日、イチタの家でクラスの友達数人と遊んでいたとき、家電が鳴った。

他校のヤンキーからの決闘の申し込みだ。

これを受けたイチタを含む男子3人は近くの公園へ繰り出していった。

「女子は家でおりや」

そう言われたのに、怖さ半分、興味本位半分で、女子3人はこっそり公園に行き、本当に草場の陰から男子たちを見守っていた。

その決闘にイチタたちが勝ったのかどうかは忘れた。

ただ、イチタは空手を習っていて、手に「拳ダコ(ケンダコ)」ができていたのは覚えている。

拳ダコは、正拳突きをしまくった結果、拳を握ったときに出っ張る骨がぷっくりふくれたものだ。

拳ダコができると、ものを殴っても痛くなくなるらしい。

まさに無敵の拳だ。

『あしたのジョー』の矢吹丈や、『巨人の星』の星飛雄馬の拳を見れば、拳ダコがどんなものかがよくわかると思う。

もっとも、どれだけ野球をしても拳ダコはできないと思うので、なぜ星飛雄馬に拳ダコがあるのかは謎である。

そんなわけで、イチタはわりと喧嘩は強かったのだと思う。

そんなイチタとの仲は、小学校卒業前に理由は忘れたが自然消滅した。

中学生になると、イチタは本格的なヤンキーになっていった。

小学校のとき普通にしゃべっていた男子と女子が、中学に上がると疎遠になるのはよくある話。

ただでさえそうなのに、立派なヤンキーに育ったイチタとあいかわらず優等生(?)の私は、言葉を交わすこともなくなった。

そして3年後、あのかわいかったイチタは、卒業アルバムに合成写真でうつっていた。

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